最強のひと

ピチャ

最強のひと

 昨今、マッチングアプリで出会った人と懇意な仲になる話は増えてきた。

相手の保証はないが、気の合う人を探すには楽な方法のひとつである。

そして、その陰でこんなパターンが出現している。

「死にたい」人と「生きたい」人のマッチング。

ただし、一世代前に流行った、死にたい人を集めての心中とは異なる。


死にたい人が本当に求めているのは、「死」そのものではないことが多い。

楽になりたい、社会のしがらみから抜け出したい。

自由。

そして生きたい人が求めているのは、安心と金。

そこにビジネスが絡んでくることは、ある種自然ともいえることだった。

ここに、限界ビジネスが生まれる。

個人情報の譲渡。

なに、それ自体は昔からよくあることだ。

学校なり、会社なり、個人情報が流出することは残念ながらしばしばある。ただ使われ方が変わっただけだ。

Win-winの使われ方、これは詐欺じゃない。ビジネスだ。

譲渡する側に自由な生活を。

受け取る側に個人情報を確実にするための金を。テクニックを。

それに同意する者たちに支援を受け、代わりに彼らの生活を保障する。

余剰しているものを切り崩し、不足しているものを補う。

彼らが、やりたいのであれば。

そしてその体制を維持するために管理者がいる。

ビジネスを淡々と操作する者たちだ。最強のひとである。

三者三様の相手への投資、ギブ、助け合い。

うまくいかなかった場合、別個で管理。

そのシステムはずっと前からできていて日々更新、ただ、体制の維持のため人手を必要としている。

適した人をつくり、適所に配置する。

社会が回るとき、その陰も共に回っている。

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最強のひと ピチャ @yuhanagiya

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