第9話 終演とトリック
眼前にいる少女は、アトラーに勝った。魂と思われるものを瓶に詰めつつ、少し俯いていた。なにか考え事をしているようだ。すると、隣にいたフォーレイが、彼女に話しかけに行った。
「優火、よくやったね。あそこで死んだんかと思ったよ。あとあの魔法、よく翼だけを再現できたよね。」
すると優火は、驚いたような表情をして、
「何故わかった?絶対バレないと思ったのに」
「そりゃこのレベルになればわかるでしょ。でも、わざわざあんなリスク取ろうとは思わないけどね。」
「結果オーライだよ。心配することはないさ。何より、あれはリスクより、リターンのほうが大きいからね。だって気づいていなきゃ、アトラーにレーザーでも放ってたでしょ。まあ、ミスディレクションがあれば、当たることなんてまずないけどね」
ミスディレクション。それは、自身の認識を誤認させ、攻撃の誘導や、威嚇などを行う魔法。
なるほど。つまり彼女は、フェニックス降臨自体がミスディレクションによる誤認で、自力で障壁にナイフを刺し、障壁に割く魔力が減った瞬間を狙って倒した。ということか。
「すごいな。そこまで考えていたとは。」
「あれ、サタン、怒ってないの?」
「あの程度で怒るほど、私が愚かだと思っていたのか?私は魔王といえど、そんなことはしないぞ。」
「そうだぞ優火。こいつはこんな怖そうな見た目してるし、魔王だったけど、根は優しいし、いいやつなんだぞ。ちょっと真面目すぎるけどね」
「そこまでは言ってないぞ。」
そんな会話をしている中、急に優火のポケットから黒電話のような音がなった。その音がなる物体を取り出し、
「もしもーし___え、王都騎士団副団長の率いる小隊を見てないかって?たしかに魔王城にはいるけど、見てはいないよ?___あーバレた?そうそう、正規ルートで入ってないから、いても気づいてないかもしれない。」
そのタイミングで、フォーレイが優火に、「代われ」とアイコンタクトを取る。
「もしもしロイター?___そう。多分半分以上が死んでるよ。その小隊。もう少しレベルを上げたらどうだい?王都騎士団の名が廃れるよ。___そうだね。だから討伐任務をアーサーの方に取られるんだよ。時間をかけすぎ。対策をしないのも考えものだけど、あんたの実力ならそれくらい行けるでしょうが!ったく、これだから最近の騎士は、腰抜けじゃ話にならないんだよ。わかった?___え、王都騎士団を辞める?おいちょっと待てロイター考えなおs_」
そのタイミングで通話を切られた。その通話はここにいる全員が聞いていたので、少し引いている。
「せ、先生、お久しぶりです。」
いつの間にか来ていた剣士の少女が話しかける。なんか緊張しているような気がするが、気にする必要もないだろう。
「カルラ、久しぶり。まあもうすることないから。帰るよ。あ、外の様子も見に行かないと。ロゼリアたちを待たせてるからね。」
そう言い、彼女はこの城の出口へと向かって歩き出した。
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