第7話 永遠を刻む針
世界は稀に、怪物を生み出す。身を持って知っていることだ。それが長く生きたものによるものなのか、天性のものなのか、それとも何か、もっと恐ろしい理由があるのか。我にはわからない。目の前の敵が、その怪物であるかどうかは分からないが。
「さあ、どう出る?」
その敵に対し、この少女、木口優火はどう挑むのか。そう思い積極的には動かないことにした。先に動いたのは、復活したアトラーだった。自身の左右に展開した魔法陣から鎖を出し、彼女を拘束しにかかる。だが鎖が彼女に到達する前に、ほんの僅かに、空間が揺らいだ。その次の瞬間、彼女がアトラーの背後に出現。ナイフを突き刺し、そこから神速の八連突き。だがそれは障壁で防がれる。ん、まさか、あの技は___
「察しが良いね、サタン。君の思ってる通りだよ。私が使ったのは、
「!?」
その次の瞬間、優火は私の隣に来て話しかけてきた。一瞬で現れたのと、私の考えをまるで読み取っているかのような発言をしたので、少し驚いてしまった。
「そうだな。少し既視感があったものでな。気になっていただけだ。」
「あっそ。それなら邪魔せずよく見ててよ。私の戦い方を」
そう言い、彼女は手に持っていたナイフをアトラーに投げる。アトラーは避ける様子もなく魔法陣を構築、発動。大量の斬撃が文字通り飛んでくる。だがそれが彼女に到達するより早く、ナイフがアトラーの障壁に当たった。
「幻術_ミスディレクション」
そして瞬間、彼女が消え、ナイフが辺りに飛び散った。そして消えた彼女は、アトラーの前に現れていた。そこからナイフを突き刺し、障壁を割るには至らなかったが、障壁にナイフが刺さった。
「これでも喰らいな、死に損ないが!」
そう言いアトラーが至近距離で放ってきた斬撃を避け、上空に舞い上がり、指を鳴らした。同時に周りから見てもわかるほど空間が歪んだ。
「デフレーションダイアル」
その瞬間、消えた時に散らばっていたナイフと、新たに優火が出現させたナイフが、まとめてアトラーに向けて飛んでいった。そのナイフの数、四十本。すべてアトラーに当たるが、
「おー、流石に硬いね」
すべて障壁で防がれてしまった。刺さっていたナイフももうすでに抜けている。そのうえ彼は、魔法陣を構築し、反撃に出た。彼女が着地したタイミングで、その魔法陣から、闇属性のレーザーが放たれる。威力が高かったため、辺りもまるごと焼けていた。避けたようには見えなかったが、
「バ火力とはこのことだね、ほんとに。あの
そう言い平然と放たれたレーザーの中から出てきた。そしてもう一人、レーザーで焼かれたドアから腐れ縁でもある新たな参入者が現れた。
「それは、誰のことを言っているのかな?」
因縁の相手であり、同時に我と並ぶ魔法使い、フォーレイである。え、あいつが?この150年で何があったんだ?
「お〜、サタンもいるじゃん。この150年は何をしていたのかな?」
「久しいな、フォーレイ。我を封印する原因を作ったのはお前だろうが。皮肉はやめてくれ」
そう言うと彼女はこちらに向かって歩いてきた。不満げな顔でこう言う。
「相変わらず冗談が通じないね。もっと乗ってくれてもいいのに。嫌われるよ?」
「もっとも魔王とはそういうものだ。そもそも一族を統べるものである以上、しっかりしておいて損はないと思うが?大体あなたは___」
「はいはいその話はもう聞き飽きた。___話題を変えよう。アイツについてどう思う?」
戦っている優火の方を指差し、そう質問した。私は素直にこう答えた。
「そうだな、強いて言うなら、懐かしいものを感じるよ。あなたの親友だった人にど似ている。能力も同じだしな。」
それを聞いた彼女は驚いたような表情でこちらを見ている。それほど不思議なことは言っていないはずだ。すると数秒経ってから彼女はこう訪ねてくる。
「____まさか、覚えてるの?」
一瞬戸惑うが、答えられない質問ではなかった。
「何当たり前のこと言ってるんだ?忘れるわけがないだろう。あれほど特殊な能力で、あなたと同等以上に強ければ。」
だがそれの真意を知る暇もなく、魔法がアトラーから飛んできた。それを障壁でいなしつつ、
「苦戦してるみたいだね。優火。」
とフォーレイが優火に対し話しかける。優火はそれに対して、
「邪魔しないでくれる?どうせそんな時間はかからない。」
そう言い、アトラーに向かって駆け出していった。
「まったく、なんで天才には人の話を聞かないものが多いのかね?」
「本当だよ。どこぞの天才魔法使いもそれは治っていないしな」
そう言いながら、優火の様子に目を向けることとした。そこでこんな質問をした。
「あれ、お前ならどう倒す?どうせあなたならすぐ倒せるだろう」
「まあそうなんだけどさ。今回の相手、障壁が魔力に対して発動している。それにこのタイプの魔法式なら、外からでも簡単に解ける。まあ、その知識があれば、だけど。だから、私みたいな魔法使いと相性がいいけど、逆に剣士とか、ああいうタイプの格闘技とかで挑むと、相性が悪い。障壁をわざわざ突き破る必要があるからね。」
「障壁を解くのは、そんな簡単にできるものじゃないと思うんだが。我が魔王軍でも、それができたのは我を含めて3人だけだ。」
「ん〜、でもコツさえつかんでしまえば、それほど難しくないんだけどな。筋が良いやつなら半年で覚えられるんじゃない?あとは、それを使えるかだよ」
「それに剣士でも使えるやつはいるだろう。どうして剣士は不利なんだ?」
「見ててわかるでしょ。飛んでくる鎖に斬裂弾、それに雷や炎ときたもんだ。遠距離攻撃のレパートリーが多い。だからまず近づく必要がある剣士は圧倒的に不利。もっとも、近づくための手段とか、それが効かないとか、そういうのだったら話は別だけどね。話を戻そう。私ならあいつを、障壁を操っている魔法陣を解いてから、大火力のレーザーで焼いて終了。みたいな感じで倒すよ。あとは、障壁を壊す方法もあるけど、現実的じゃないね。カルラの憑依魔法、《フェニックス降臨》くらいの強化がついていない限り、壊すことは難しいだろうから。」
「じゃあ、勝ち目は彼女にないんじゃないか?何故それを黙ってみている?」
すると彼女は、薄ら笑いを浮かべこう言った。
「理由はすぐわかる。面白いものが見られるよ」
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