1日目 鋼の傭兵団(1)


<ドンドンドン!>


「おい、カールいるか!!」


 俺はカールの家のドアを叩いて、やつを呼ぶ。

 すると、ドアをちょっとだけ開けて、カールが顔を出した。


 カールはドアを叩いていたのが俺とわかると、

 眉をひそめて口の端を下げる。


 強情な押し売りをみたような顔だ。

 何も言葉はないが、顔は「めんどくせえ」と言っている。


「うるせぇなぁ。

 何の用だよ、腕相撲は祭りの晩だろ?」


「いや、腕相撲じゃなくってだな……

 あーなんていうか、村に傭兵団が来てるだろ」


「あぁ……? ああ! 村長が呼んだ奴らだろ?」


「なんだ、知ってたのか。

 っていうか、村長が呼んだのか?

 何のために?」


「なんでも森にイモ掘りにいった隣村のやつらが、

 狼に襲われた死体が見つかったとかでよ……

 その群れがこっちに来てるらしいんだ」


「へぇ……それで傭兵を呼んだっていうのか?」


「ああ、らしいぜ。

 その傭兵がどうしたってんだ?」


「あー、なんていうのかな……」


「まさか、連中が何か問題を起こしたのか?

 俺とお前でとっちめようって話なら止めとけよ。

 相手は剣を持ってるんだ。拳で敵うもんか」


「そうじゃなくって、カール、傭兵団に入らないか?

 お前、村の外に行きたがってたろ?」


「そりゃそうだけど……何だよ突然、傭兵になるって」


 う、確かに。

 傭兵になるのは良い考えだと思ったけど……。

 いきなり言われたら、そういう反応になるよな。


 100日後に骨の大群が来るなんて

 そんなこと、いえないよなぁ……。


 でも、まてよ……。

 村の安全に関してはカールも気を配ってる。


 俺が知らないことを知ってるくらいだし。

 なら、そこから話をしていくか。


「なぁ、カール。今回は傭兵が来たから良かったけど……。

 何かあったとき、毎回そうなるとは限らないだろ。

 傭兵は金を出さないと戦ってくれないわけだし」


「まぁ……そうだよな。

 傭兵を雇えば、けっこうな額の金が飛ぶよな」


「でも、俺たちが傭兵になって何ヶ月か戦えば……。

 帰ってきた時に村を守れるようになってるだろ?」


「それなら兵隊になっても良いんじゃないか?」


「貴族の兵隊になったら、いつ帰れるかわからないじゃないか。

 船でもって、世界の果てまで連れて行かれたらどうする?」


「あー……たしかに」


「その点、村の用心棒をしてる程度の傭兵団なら安心だろ?

 この国の中で仕事を探すだろうし、いつ辞めたっていい……たぶん。」


「うーむ……」


 カールは腕を組んで目を伏せる。

 見た感じ、かなり迷っているようだ。


 もうひと押ししてみるか。


「なぁカール。

 傭兵隊長の話を聞くだけでも聞いてみないか?」


「まぁ、聞くだけ聞いてみるか……

 犯罪者まがいの危なそうな連中だったら、すぐ帰るぞ」


「しょうがないか……」


「カロン、お前も帰るんだぞ」


「俺も? お前だけじゃなくて?」


「あたりめぇだろ。お前にゃ妹のアリアがいるだろが

 お前をろくでなしの仲間にはできん」


「カール……おまえ意外といいヤツだったんだな」


意外と・・・は余計だ。

 ともかく行こうぜ。

 グズグズしてたら、傭兵たちが狩りに出ちまうかも」


「そうだな、行こう」



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