第3話
ロレンスには東へ行く夢がありました。なぜ東へ行こうとしたのかはわかりませんが、長年世界中を走り回ってきたことと関係があるのではないかと考えています。そう考えると、ロレンスの足跡は、この世界のほとんどの場所を踏破したことになります。ヨーロッパから小アジアまで、旧大陸には彼の足跡がありました。彼はかつてある世界大戦の様々な重要な戦闘に兵士の身分で参加しましたが、この世界でおそらく彼が行ったことがない2つの場所は2つしかありません:東方と新大陸。
ああ、それはうらやましいではありませんか。そしてちょうど、この町の東にお屋敷がありました。そしてこの屋敷は、今日ロレンスが訪れる屋敷でもあります。
この町の話もしましたし、この町には誰も知らない家があるという話もしました。そうですね……この話をしたでしょうか?はい、間違えました。でもかまいません。
この家は私が言った通り、町の「隠し場所」に建っています。この場所は大きな川に面していて、崖のてっぺんにあります。崖の位置がちょっと変ですが、理屈で言うと、この町の中です。ところが、どういうわけか、建物の角が、町の外にちょうどよく出ているのです。この家には長い間名前がなく、今も名前がありません。そこに人が住んでいるかどうかは誰も知りませんでした。その家の中から人が出たり入ったりするのを見たことがないので、灯もついていませんでしたが、その大屋敷はいつも、できたばかりのように、さっぱりとしていました。
ローレンスは何も言わずに町を横切っていきましたが、その間にバーに立ち寄って少し買い物をしました。この場所のバーはお土産の販売も兼ねています。ロレンスはここに戻ってくるたびに、何かを持ってあの屋敷に行きます。今回も例外ではありません。
今日の店はやけに賑わっていて、冬とはいえ、まだ暗くもないのにこんなに混んでいるのは何年ぶりかと思います。この光景を最後に見たのは十年近く前で、まだ世界は平和でした。
プレゼントを片付けると、ローレンスはビールを買いました。彼はカウンター席に腰を下ろしました。少し気を抜く必要がありました。
そんな客の噂話が彼の耳に入ってきたのですが、その中の一つがはっきりと聞こえたのです……
「ねえ、聞いてますか。神はフランセ人です」
この言葉がロレンスの目に留まりました。ゆっくりとお酒を飲んでいるうちに、話をしている二人の客に意識が向いてしまいました。
「神はフランセ人とは、どういうことですか?」
別の客が不思議そうにたずねました。すると相棒が答え始めました。
ロレンスはそばで静かに酒を飲んでいましたが、二人の雑談で旅以外の見聞を得ることになりました。たった今終わった戦争のどこかの戦場で、一人のフランクス人が神のように天から降ってきて、グレーメの軍隊を火で焼き尽くしたという話でした。
「あの炎は黄金色で、消えないそうです」
ロレンスは、聖書という本の中で、こんなことを書いていたのをおぼえています。でもそれは大昔のことですから、もう何千年も前のことです。
グラスのビールを飲み干し、ロレンスは席を立ちました。彼は黙っていて、誰にも知られていませんでした。いつものように、いつものように……
まるで、現れなかったかのようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます