第20話 義妹の手伝いをすると予期せぬアイテムを見つける事がある。
一度部屋に戻った後、瑠樺の部屋をノックする。
『何? 今着替えてんだけど』
入って来るなという圧を感じるが、気にせずに入る。
「エプロンなんだけどさ……」
「ちょっと! 入ってくんな!」
部屋に入ると、瑠樺はブラウス一枚の姿で本当に着替え途中だった。
短いスカートとネクタイは綺麗にハンガーに掛けられ、瑠樺の几帳面な性格が伺い知れる。
「おっとごめん。 ラッキースケベだったよ」
「はぁ? 着替え中に凸ってるだけじゃん!」
「部屋、結構片付いてるのな」
「話しそらしてんじゃねぇよ……」
瑠樺は着替えを再開させる。
背を向けながらブラウスのボタンを外していく。
「で? エプロンが何?」
「このエプロンに着替えて欲しいんだ」
俺は自分の部屋から持ってきたエプロンを、手渡す。
瑠樺はそれを広げて、じーっと見ている。
そのエプロンは、白と黒のツートンカラーで、裾がフリルのようになっている。
が、胸元から前掛け部分に至るまでの所が靴紐の編み上げみたいになっていて、露出の高いエプロンとなっている。
正に裸エプロンの為に造られた――、
「バカじゃねぇのお前? これってさ……もうアレじゃん! エッチする用なヤツなんだけど……」
「や、安かったんだよ……別に他意はない」
「無いわけないだろ……変態! つーか、いつまでいんだよ! 出てけ!」
瑠樺は手元の枕を俺に投げつけ、俺を部屋の外に追い出す。
◇
優斗に手渡されたのは、一見メイド風のエプロンとは名ばかりの、セクシーランジェリーだ。
ネグリジェとかベビードールの方がまだマシなくらいだ。
恥ずかしくて着たくはないけど、今日一日頑張った優斗へのご褒美として、着てあげようと思う……けど。
「下着どうしよっか……」
今着けてるチェック柄の下着だと合わない。となると、黒とか白でなるべくこのクソエロいエプロンに負けない下着を選ぶ。
「あ、これいい……」
◇
リビングで瑠樺を待つ事10分。
ようやく降りて来た瑠樺が例のエプロンで現れた。
「着てやったわよ。 これで満足?」
ムスッとした顔で僕の前に立つ。
が、少し恥ずかしいのか、頬を朱に染めている。
エプロンとしての実用性に乏しい短い前掛け部分から伸びる瑠樺の乳白色の生脚。下着とソックス以外何も身につけていない、白く綺麗な素肌が映える。
胸元はフリルの着いた乳袋からはみ出した、二つの大きな肉塊が、その圧倒的な存在感を主張している。
普段はクールな印象を与える瑠樺の女の子っぽさが、普段とはまた違ったベクトルで俺の煩悩を刺激する。
照れ、恥らうその顔が、より一層魅力を引き出しているようだ。
「う、後ろは……?」
「あ、あぁ、こんな感じだけど……」
後ろはやはり恥ずかしいのか、俯きながら振り返る。
うなじから背中までが大きく露出していて、完全に後ろから襲えと言わんばかりの格好だ。
ショーツは白いレース地のローライズで、微かに透けて見える瑠樺の形の良いヒップが、より一層興奮を掻き立てる。
恥ずかしそうに脚をもじもじさせ、時折こっちを見る。
そんな瑠樺の可愛さとエロさを兼ね備えた姿に俺は暫く、見惚れてしまっていた。
「なんか言えよ……こんな恥ずかしいカッコさせてんだから!」
「あ、その……撮っていい?」
「は? ダメだろ普通に」
「いや、あまりにもエロ過ぎたから、撮っておかないと損だろ」
「お前バカなの? ……撮ってどうするの? それ見てシコるの?」
「えっ……あ、いや……」
瑠樺のその一言で、俺の下半身がヤバくなってくる。
瑠樺はそれを見ると、ニヤリと笑う。
「ほら、こっちも恥ずかしいんだから早くしてよ。 あっ、顔は撮らないで」
「……お、おう」
僕はスマホのカメラアプリを起動し、瑠樺にレンズを向ける。
瑠樺は恥ずかしそうにしながらも、ポーズを取るように、手を後ろに組んで胸を張る。
その大きな二つの膨らみが、より強調される。
「じゃ……撮るよ」
僕はシャッターボタンをタップした。
パシャッと言う音とフラッシュが部屋に響き、スマホに瑠樺のセクシー写真が保存される。
「それで? 次はどんなポーズ?」
「え、えっと……じゃあそこで壁に両手くっつけて、こっちに脚開いて立って」
「変態……」
瑠樺は言われた通りにポーズを取る。
が、そのポーズはあまりにもエロ過ぎる。
股を大胆に開き、前屈みになる事で大きな胸がたゆんと揺れた。
僕はあらゆる角度から瑠樺をカメラに収めていく。
瑠樺は恥ずかしいのか、顔を俯かせて、下唇を噛むように堪えている。
俺はその顔をスマホに収めた。
が、流石の瑠樺も堪忍袋の緒が切れたのか、キッと睨んでくる。
「顔撮るなっつったろ!」
「あ……ごめん、可愛くてつい……」
「は、はぁ!? き、キモッ!」
瑠樺のその言葉とは裏腹に、その顔を赤く
し、照れているのが俺には丸わかりだ。
「も、もうお終いっ!」
瑠樺は顔を赤くしながらキッチンに行ってしまった。
そして僕はある事に気付いた。
裸エプロンの醍醐味はその後ろ姿にある事を。
しかし、残念な事に我が家のキッチンは対面式のため、瑠樺の料理姿を背後から見る事が出来なかったのだった。
僕の勝手な理想としては、裸エプロンの格好をさせた瑠樺を後ろから眺めて優越感に浸りながら、一杯やる。ジュースだけどな。だったのだが……。
見えやしないのだ。
僕はこの家のキッチンを対面式にした父親に怒りを覚えていた。
「あー喉かわいたー」
僕はさり気なくキッチンに入り、冷蔵庫から麦茶を取り出しながら、テキパキと夕飯の支度をする瑠樺を眺める。
「麦茶飲むならソコに座って飲みなさいよ。 なんでわざわざキッチンで飲んでんねか? いやらしい!」
瑠樺はこちらを見ずに、僕が冷蔵庫を開けるとすぐそこにあるダイニングテーブルを指差す。
が、僕は敢えて聞かないフリをする。
「何か手伝う事ないか?」
「ねーよ! いっつも何にもしねーくせして、人のケツ見たさに寄ってくんな! 刺すぞ!」
瑠樺はまな板の上でネギを刻んでいた包丁を僕に向ける。その目は座っていて本当に刺しそうで怖かった。ごめんなさい。
僕は意気消沈し、言われたとおりにテーブルにつき、麦茶をちびちびと飲む。
実は全然ノドかわいてないし。
「やる事ないなら、お風呂の準備くらいして!」
「……わかった」
僕はよっこらせ、と重い腰を浮かせて、風呂場に向かおうとすると、
「ついでにシャンプー詰め替えといて」
と注文をつけられた。
全く人遣いの荒い義妹だぜ!と思いながら、風呂場へと向かった。
ザッと適当にサラッと何となく風呂を洗い、湯はりをして、詰め替え用のシャンプーを探す。
脱衣場の棚をあさり、瑠樺が買って来たであろうドラッグストアのレジ袋の中からシャンプーを取り出す。
「ん? なんだコレ?」
すると見慣れない10センチ程の箱がシャンプーやら、生理用品やらと共に入っていた。
パッケージには、0.01と書かれた謎の箱。
僕は何か分からず、裏面を見るとコンドームと書かれていた。
「は……?んだよこれ……」
その衝撃的な事実を前に、僕は怒りを覚えた。
急いで脱衣場を出て、瑠樺の元へ行き問い詰める。
「おい! お前コレ買ったのか?!」
その箱を見せると、瑠樺も動揺し始める。
「あ……えと、そ、それは……うん。 買った」
「ふざけんな! 僕には一日200円しかくれないくせに! こんな……!」
「え……? 何怒ってんの?」
「だって坂東と使う為に買ったんだろうが?!」
僕は結構本気でブチ切れた。
我が家の生活費の中から瑠樺と坂東がイチャコラする為の金を捻出するのは、流石に許せない。
「いや、それ優斗用だし」
「え? 僕……? なんで?」
瑠樺の一言に、僕は一瞬怒りを忘れてしまう。
「あ……ほら、この前さ……その、勢いでしちゃったじゃない? だからその……避妊はした方が……いいかな――って、念の為……」
瑠樺は俯きながら、小さな声で申し訳なさそうにボソボソと呟いた。
「それって……いや、なんでもない。 怒ってごめん……」
「う、うん……」
気まずいままの夕飯は味がしなかった。
アジの開きだったけど。
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