第10話 義妹とお風呂に入るとか。
突然明かりが消えて、キッチンはおろかリビングも暗くなる。
どうやら停電してしまったようだ。
窓から外を見ると、近隣の住宅も明かりが消えていた。
「マジか……暗い中で料理は……」
「見るんじゃない、感じるんだ」
「アンタ料理ナメてんの? 刺すよ?」
「すまん……ちょっと言ってみたかっただけだ。 そうだ、キャンプ用のランタンがあるから持って来るよ」
「あ、私も行く」
「いいよ。 外の物置だし、ここで待ってろよ」
「いいから連れてきなさいよ!」
「痛い痛い痛いッ! 爪っ! 爪、くい込んでるって!」
瑠樺が僕の二の腕を掴んで離さない。
一人になるのが余程怖いのか?
やれやれ……と思いながら二人でランタンを探しに行く。
玄関を出ると案の定、横殴り雨で傘が全く役に立たない。
二人してびしょ濡れになりながら、物置からランタンを持ち帰り、灯りを点けた。
「僕さ小学生の時、ボーイスカウトに入ってたんだ」
「あっそ」
「な、なんだよ? 冷てぇな、少しは頼りになる〜♡ とか言えよ!」
「ならないし、キャンプとかキョーミないし、虫嫌いだし」
「………」
その瞬間、また落雷による激しい閃光が起こり、視界が真っ白になると、落雷の轟音が鳴り響いた。
「きゃあああッ!」
瑠樺が悲鳴を上げ、僕にしがみつく。
僕はそんな瑠樺を抱きとめた。
「落ち着け、ただの雷だから」
「……うん」
ランタンの灯りに照らされて浮かび上がった瑠樺の顔が妙に綺麗だと思った。
「……くちゃんッ!」
瑠樺が可愛らしいくしゃみをした。どうやら雨が降って濡れたせいらしい。
ついてくるなって言ったのに来るから……。
「そういえば、風呂は沸かしであったな。 先に風呂入った方がよくないか?」
「そ、そうだね」
「よし、じゃあ先入ってくる」
「は? アンタ何先に入ろうとしてんの? 今の流れ的に私が先に決まってるじゃない」「何バカ言ってんだお前? 僕んちだぞ?」
「そうだけど、私んちでもあるわよね? 家族になったんだし」
「くっ……なら、ジャンケンだ」
「わかった。 私チョキだすから、優斗はパー出してね?」
なるほど、心理戦かつ僕にパーを出させる作戦。 が、だがそれもフェイクとみた。
僕がそんな手に引っかからないのも恐らく想定内。つまり、僕にパー以外を出させる作戦だ。
すると瑠樺はグーorパーになる。
恐らくグーを出すだろう。
僕がパー以外となるとグーかチョキだが、グーを出せば負けが無く、50%で勝てるからだ。って事は僕はパーを出せば勝てる……が、パーを出せと言われて本当に出すの格好悪い……。
あっ、なんか分かんなくなってきた。
「じゃーんけーん……ぽんッ!」
何故かチョキを出してしまった。
しかし、まさか本当にチョキを出して来るとは!
「あ〜あ、私チョキ出すって言ったのに。 じゃ、次はグー出すよ」
しまった! 宣言通りに出す可能性があると言うのかッ! そうなったらもう、信じるか信じないかしか無くなるッ!
「じゃんけんぽんッ!」
そんな汚い腹の探り合いのジャンケンはあいこばかりで決着が一向につかなくて、瑠樺が諦めたように、
「もう一緒に入れば良くない?」
とか言い出した。
どうせ暗くて見えないし。と、瑠樺は付け加えたが、確かにハッキリとは見えないが……脱衣場で二人衣服を脱ぐ。
スルスルと下着を脱ぐ微かな音。
服を着ていない瑠樺の身体のラインは美しく、色っぽかった。
「ジロジロ見んなよ……私だって恥ずかしいんだから!」
とか言いながら瑠樺は風呂場のドアを開けて浴室に入っていく。
さすがに顔や身体はよく見えなかったが、しなやかな背中のラインとプリッとしたお尻が目に焼き付いてしまった。
浴槽の湯を桶に容れて身体を洗い流した後、互いに背中を向けながら湯に浸かった。
「なんか変な感じだね。 狭いし」
「そうだな……この体勢だと足伸ばせないもんな」
背中と背中を重ね合わせて、お互い体育座りになっていた。
背中に瑠樺の背骨が当たる感触が妙に心地良かった。
湯の温もりと、背中から感じる瑠樺の体温。
けれども背中で感じる瑠樺の背中は細く、小さかった。
「あのさ……頭洗うからさ、流しっこしない?」
「えぇっ?!」
「だって……シャワー使えないし」
「あ、あぁ……そっか、わかったよ」
突然の提案だったが、確かにその方が楽だと理解した僕は受け入れた。
瑠樺は浴槽を出ると、前屈みに座った。
「え、じゃあかけるよ?」
「うん……」
桶に浴槽の湯を容れ、それを瑠樺の頭に掛けた。
シャンプーをつけた瑠樺がワシャワシャと泡立てて髪を洗っている姿を眺めていた。
暗いバスルームでも、目が慣れたせいか、そのシルエットが分かる。身体を洗っている瑠樺を後ろから見ていると、お尻の曲線が綺麗だな……とか思いながらぼんやりと眺めていた。
一通り洗い終えた瑠樺泡だらけの髪を洗い流すと、瑠樺が言った。
「頭、私が洗ってあげるから座りなよ」
「あ、いや……じゃあ頼むわ」
瑠樺が腰掛けた椅子に入れ替わって座ると僕の頭を瑠樺はそっと洗い出した。
細くて小さな手の感触と、優しい指のタッチが妙に心地良かった。
「気持ち……いい? 痒いとこない? ん?」
僕の背中越しに、瑠樺が顔を覗き込みながら訊いてきた。
「…………」
「なんか言えよ」
「いや、あのさ……胸が背中に当たってんだよね」
「あっ……」
背中に伝わる二つの柔らかい感触。泡でヌルヌルしていて妙に生々しい。
ヤバいな……この感触。
「エッチ……変態」
「いや、お前が当ててるんだろが!」
「当たっちゃうだからしょーがなくない? てか、興奮しちゃったとか?」
「ノーコメントでお願いします……」
「それもう、したって言ってんのと同じだし笑」
言い返せなかった。
そりゃ興奮しないわけが無い。僕の背中には、瑠樺の胸の膨らみとその先端の感触もあるのだから。
暗くて助かった。こんな状態のモノを見られたりしたら恥ずかしくて悶絶するわ。
「じゃ、出るか」
瑠樺に頭を流してもらった後、僕は立ち上がって振り返った瞬間―――。
バスルームが明るくなり、しゃがんでいる瑠樺の前で全身と、抜き身を晒してしまった。
「うわっ! えっぐ……」
瑠樺が僕のをマジマジと見て、若干引き気味に言った。
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