第9話 寝ている義妹の口の中とか。
買い物から帰宅後、部屋で勉強をするフリしてゲームをしていると、外はどんよりとした空模様に変わり、ゴロゴロと雷が鳴り始めた。
「雨降りそうだな……」
PCの電源を切り、リビングに降りると、ソファーで瑠樺が寝ていた。
今日は買い物で疲れたのか、ぐっすりと眠っていて、静かな寝息を立てている。
「黙ってれば可愛いいんだけどな……」
僕はソファーの前に座ると、瑠樺の寝顔を眺めていた。
瑠樺の整った顔が間近にある。
長いまつ毛、綺麗な髪、透き通るような白い肌、それに柔らかそうな唇。
どの角度から見ても美少女。
その唇にそっと人差し指で触れる。
ぷっくりとして柔らかい。
微かに開いた唇を指の腹でなぞると、瑠樺の唇が、ちゅっと、指先にキスをした。
僕は一瞬、瑠樺が目を覚ましてしまったのかと、内心焦ったが、どうやら無意識に、僕の指を吸ったらしい。
まだ起きる気配はない。
「ん……ちゅ……んん……」
熱い息が指先にかかると、寝息も艶めかしく、僕の心臓はドキドキと高鳴る。
吸いつかれた指先が瑠樺の口内に埋没していく。
指先だけを、湯につけたような、柔らかく、それでいて熱い感触が包み込む。
瑠樺の舌が指先を舐めてくる。
その舌の感触は、まるで別の生き物のように僕の指に絡みつく。
指先から全身に血が巡る。
血液の流れが激しくなる。
「ちょっと、これやば……」
「ん……ちゅ……ん……れろ……んぷっ、はむぅ……」
ねっとりとした唾液と舌に包まれた指が
、徐々に瑠樺の口内へと呑みこまれていく。
無意識とはいえ、瑠樺の舌使いに
、僕は既に骨抜きにされてしまった。
これ以上はイケナイと判断した僕は指を瑠樺の口から抜いた。
ちゅぽんっと、淫靡な音を立てた瑠樺の唇は艶っぽく濡れた。
瑠樺の口端から垂れた唾液が、まるで口紅を塗ったように瑠樺の唇を彩る。
その姿は官能的で、艶やかだった。
心が揺さぶられる。
その唇に吸い込まれるように、瑠樺に覆いかぶさり、顔を近づけようとしてしまう自分に気付く。
自分の意思とは裏腹に、体が動く。
僕は瑠樺の唇に自分の唇を近づける。
すると、瑠樺の瞳がパチクリと見開き、急に起き上がったために、額と額がゴツっとぶつかった。
「うわっ!」
「いたッ!」
瑠樺は額を押さえながら顔を真っ赤にして涙目になっている。
「あ……悪い、大丈夫か?」
「……平気だけど、寝込み襲うとか……」
「襲ってない! 襲ってないぞ! ホントだ!」
「どーだか……」
僕がした事といえば、唇を指で触れただけで、吸い付いてきたのは瑠樺の方からである。本人は無意識だったのだろうけど、あまりに衝撃的な体験だった。
黙っておこう。
「あれ? 雨……降ってない?」
「えっ? あれ? ほんとだ……」
いつの間にやら風も強くなり、雨風が窓を濡らしていた。
その時だった。急に外がピカッと光り、その直後に地響きの様な音が聞こえた。
「ひぃぃぃッ!」
落雷の音に驚いた瑠樺が絶叫し、僕にしがみついてきた。
「お、おい、ひょっとして怖いの?」
「ち、ち、違うし! ちょっと驚いただけだし!」
涙目になっている瑠樺は必死で否定する。
外も暗くなってきたので、明かりをつけようと、立ち上がると何故か瑠樺も立ち上がり、僕の後を付いてくる。
「……なんでついてくんの?」
「べ、別に……なんとなく」
なんか……楽しいかもしれない。
いつも勝ち気な瑠樺が怖がっている姿は、新鮮で可愛かった。
少しからかってみたくなった僕はリビングを出て浴室に向かった。
「え? どこ、どこ行くの?」
「ん〜? 今のうちに風呂入れようかなと」
瑠樺を置いて風呂掃除を始めると、予想通り瑠樺がその様子を脱衣場から眺めている。
「何か用か?」
「あ……ちゃんと洗ってるか見張ってるだけだから」
なんて分かりやすい奴なんだ。僕が風呂掃除をする姿を、瑠樺は隙間から覗いている。
フンフフーンと鼻歌混じりに風呂を磨いていると、
「早く終わらせなさいよ!」
「いいだろ別に、急いでどうする?」
「ん〜……死ね!」
ドタドタとわざとらしく足音を立てて瑠樺がリビングに戻って行った。
ようやく風呂掃除が終わり、給湯器の自動ボタンを押してリビングに戻ると、瑠樺がソファーで縮こまって座っていた。
「何だよ、そんな隅っこで」
「うるさい……」
瑠樺が真っ赤な顔で、ぷいっと、そっぽを向く。
「夕飯はどうすんの? ハンバーグだっけ?」
「なんかもう作りたくない。 ピザ頼む」
「こんな雨の日に宅配とかピザ屋に対する嫌がらせじゃないか……」
ちょっと意地悪したら、ピザ屋に八つ当たりとか、どんだけ拗ねてんだよ。
相変わらず外はバケツをひっくり返したような雨が続いてる。
雷はさっきよりも遠くでゴロゴロいっている。
相変わらず、瑠樺はソファーの隅にちんまりと座っている。
「おい、機嫌直せよ」
「別に怒ってないし。 超ご機嫌だし」
「嘘つけ、さっきから口尖らせてるぞ?」
「尖らせてないし」
ちょっと膨れっ面になってる瑠樺が面白い。
とはいえ、このままだと夕飯作ってくれなさそうなので、機嫌を直してもらわねばならない。
「あー……手伝うからさ、一緒に作ろう……よ?」
「……ホントに?」
「ああ、ホントだよ」
瑠樺はようやく立ち上がると、まだ若干膨れっ面だったが、少し機嫌が戻ったみたいだ。
僕と一緒にキッチンに立つと、瑠樺は冷蔵庫から玉ねぎと買ってきた挽き肉を取り出して並べる。
「じゃあ優斗は、この玉ねぎをみじん切りにして」
「みじん斬り……?」
なんだその必殺剣はと考えていたら急に明かりが消えて暗くなった。
「きゃ! な、何?!」
「停電か……?」
驚いて瑠樺が僕にしがみついてくる。
停電した真っ暗な台所で、僕と瑠樺は互いにしがみつくように立っていた。
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