食べられないパン
「パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?」
その問いが聞こえたのは、近所のパン屋で今日の昼食を選んでいるときだった。
すぐ近くで、同じようにパンを選んでいる親子がいた。その男の子が、母親に向かってそう訊ねたのだった。
よくあるなぞなぞだが、パンが陳列されたこの光景から連想されたのだろう。
「こら、あんまり大きな声出さないの」
そう言って息子をたしなめる母親だったが。
「でもうーん、なんだろうね。食べられないパンでしょ。お母さん、分からないなあ」
息子のなぞなぞ自体には付き合ってあげているようだった。
男の子は母親が分からないと答えたことに、満足した様子だ。
「答えはね、フライパン!」
とても誇らしげに答えを披露するその子の様子に、脇で眺めていた私も思わず笑みがこぼれてしまう。
その後、その親子はパンをいくつか選んでいった。
私も昼食用のパンを買って、店を出た。
***
その日、その店のパンを買った客が相次いで体調不良を訴えた。
食中毒で次々と救急搬送された。私も、あの親子も。
私たちが買ったのは、食べられないパンだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます