第4話

 みふゆとやらに絡まれた翌々日の水曜日の夕餉時。

「どうだ?そろそろ学校のお友達と仲良くできてる?」

「別に」

 友を持つ気はさらさらないというのに父親は学年の子と仲良くできているかを毎週のように訊いてくる。ウザいから黙っていてほしい。

「そっかそっか。まぁ、気長に作ればいいよね。できなかったらそれまでだよ」

 わかってんだったら、なんでこの親父は毎週毎週同じことを言うんだろうな…?飯が不味くなることはないが、この場にいる気が失せる。はぁ…。僕か親父が消えちゃえばいいのに(?)

 白米を掻き込んでいつもより少し低い声で「ごちです」とだけ言って片付けてはさっさと自室に籠った。他人と関わりたくないのになんで、関われたか、なんて聞くんだろうなぁ…。ほんとウザい。

 襖をいつもより乱暴に開けては閉め、ぶら下がっている紐も引かず、暗闇の中布団の上で大の字になった。無音の空間は時間を感じられず、ゴロゴロと姿勢を変えながら過ごせば十時半をすぎていた。ザッと二三時間は経っている。早く風呂に入らねば…。だっっる…と思っているだけでは何も始まらない。「風呂くらい早く入りなさいね、自動が切れる前に」と母が言っていたような気がするが、風呂くらい、ではないんだよ。寝っ転がった姿勢から立ち上がり、襖を開け、長くはないが風呂場まで歩いて、服を脱ぐ。それだけで充分めんどくさい。風呂を上がって自室に戻るまでも同じく、もしくはそれ以上にめんどくさい。生きるってのは大変だな…。

 うだうだ考えつつも一通り終わらせて自室に戻った。此処こそ城、聖域、極楽浄土。なんと言えば良いのだろう。何者も侵入を許さない安心安全の地。身ひとつでいられる。警戒など無用。素晴らしいね。

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