第53話 穂刈月の幽霊騒動 ⑵

 夕食後、西門からほど近いタウンハウスから馬車で、城壁沿いに南下する。南門と西門の丁度中間地点に、ゼクレス子爵邸はあった。広さもタウンハウスからの近さも、ぼくの希望に叶った土地だ。ゼクレス子爵邸の近くにある、マウロさんが売買を取り仕切っている別の土地へ馬車を停めた。

 ここからは歩きになるが、ぼくが歩くと周囲に気を遣わせることになるので普段通り、イェレミーアスに抱っこしてもらった。歩幅がね、小さいからね。歩くの遅いんだよね。仕方ない。だってぼくまだ六歳だもの。

 イェレミーアスの首へ手を回し、周囲へ視線を向ける。そういえばこの辺りに、リヒテンベルク子爵の家もあるんじゃなかったっけ。そして南東にはアンブロス子爵の家があるはずだ。領地を持たないから、アンブロス子爵の家はタウンハウスではなく本邸である。子爵と言ってもアンブロス子爵のように領地を持たない騎士爵と、領地を持つリヒテンベルク子爵とでは大違いである。

 そう、領地がある方が当然、稼ぎがいい。領地からの税収があるからだ。だから権力も強い。一方騎士爵は、常に戦わなければならない。戦えなくなったら収入が途絶える。領地収入という安定した財政が確保できない。まぁ、だからこそシーヴ・フリュクレフとエーリヒ・アンブロスの結婚は遠からずアンブロスがフリュクレフ公爵家へ入り婿という形になるしかない、と見込んでの皇命だったわけだが。

 そう考えると、それなりに税収もあり、野心もあるリヒテンベルク子爵が何故、アンブロス子爵の愛人という状況に自分の娘を置いているのか疑問が残る。確か、リヒテンベルク子爵にはもう一人娘がいるはずだ。それでも野心のある人間が、娘を力のない騎士爵の愛人にさせておくだろうか。

 「椿の咲くころ」を物語や演劇として広めて、本妻であるはずのシーヴ・フリュクレフを貶める策を見事に成功させた男がそんなことをする狙いは何だろう。他に企みがある、と考える方が自然だ。

 劣化したプラスチックみたいに色のぼやけた金髪を思い浮かべる。そこまで知恵の回る人間には見えなかったが、果たして。

「――」

「ヴァン?」

「あ、はい」

「もうすぐゼクレス子爵邸だよ」

 しばらく歩くと鉄の柵に囲まれた塀が見えて来た。夏の間に雑草が伸びてしまったのだろう。アイアンの塀越しに窺うが、伸び放題の草に隠れて中はよく見えない。フレートがマウロさんから預かった門扉の鍵を取り出し、ぼくへ頷いて見せた。門扉は少し軋んだ音を立てて開く。

「裏に柵を引っ張ると外れるところがあるんだよ。こないだもオレ、そこから入ったんだ」

「まずその部分を修理しないといけませんね……」

 二重の意味で頭が痛い。こめかみを揉みながら、後から詳しい場所を教えてもらえるようローデリヒに頼んだ。しかしローデリヒは公爵令息という自覚が薄すぎる。一人でこんなところを探索するなんて、危ないだろうに。その程度には剣の腕に自信があるかもしれないが、エステン公爵家の一人息子という立場を理解しているのだろうか。心配になってしまう。

 本来なら馬車が通るように整備されていただろう道は草で埋もれつつある。

「どうする? 屋敷の中を見るか?」

「いいえ、まず井戸を見に行きましょう」

「了解。こっちだ」

 迷わず進むローデリヒの後を追う。この行動力がローデリヒの長所だろう。その軽やかさは敬服に値すると思う。

 ぼくらが進む足元を、ルクレーシャスさんが魔法で照らしてくれる。雑草に埋もれた庭園跡のアーチや噴水は、闇の中で佇む亡霊のようだ。

「きっと、一年前には立派な邸宅だったのでしょうね……」

「……そうだな」

 答えたローデリヒは、頭だけ動かしてぼくに答えた。たった数カ月で人生が変化してしまうことを、イェレミーアスの件で身近に感じているからだろう。ローデリヒも変わったのだ。少しだけ。ほんの少し、大人びた背中を目路へ入れる。

 屋敷を大きく西へ迂回して、うっそうと生い茂る夜の森へ向かう。屋敷裏と森との境目に、井戸のシルエットが浮かび上がっていた。

「なるほど、これは少し分かりにくいところにありますね」

「だろ? わざわざ噂に入れるには不自然なんだよな」

 ローデリヒは井戸の側へ行くことを躊躇って見せた。言うまでもなく、騎士にはデ・ランダル神教の教えが染み付いているからだ。

「リヒ様、お待ちいただいてもよいのですよ?」

「いいや。こないだおチビを逃したのも、井戸に近づくのをためらったせいだからな……」

 意を決したように一歩踏み出した、ローデリヒは強い。染み付いた倫理観を越えて行けるのだ。この柔軟さがローデリヒの強みである。

 感心しているとイェレミーアスはぼくを抱えたまま、躊躇なく井戸の端へ歩み寄った。ぼくがきょろきょろと周りを見回すと、イェレミーアスはしゃがんで石を拾い、ぼくへ差し出した。受け取って礼を言う。

「ありがとうございます、イェレ兄さま」

 ぼくを抱えたまましゃがむとか、この子の筋力どうなってんの。しかも危なげない。

 考えることを止め、井戸の中へ石を投げ入れる。しばしの沈黙。それから遅れて、からん、と石が底に当たった音がした。

「……枯れ井戸ですね」

「そうですね。けれど滑車はそう古くありません。最近まで使っていたと言われても、不思議ではない」

 幼い子供が暮らしている家なら、転落などの事故を防止するために枯れ井戸へ蓋をするなどの対策をするはずだ。確実に怪しい。

「こういうものって、井戸の底へ下りる仕掛けを作るとしたら、どこにスイッチを作るものなんでしょうか」

「……こう、この辺とかの煉瓦を押したら階段が出て来る、とかか? スヴェン」

 押す、と言いながらローデリヒは井戸の縁へ上った。それからよろけたのか滑車に付いたロープではなく、滑車自体を引っ張った。

 カチリ。

 ずずずずず、と石と石が擦れる音がした。ルクレーシャスさんが魔法で井戸の中を照らす。みんなで井戸の中を覗き込む。井戸の壁へ、螺旋状に階段が出現していた。ローデリヒはこれだから侮れない。

「リヒ様って、……そういうとこ、ありますよね」

「そうだね。リヒはそういうとこ、あるね」

「本当だね。リヒくんはそういうとこのある子だよね」

「左様でございますね。ローデリヒ様はそういうところがございます」

「なんだよ、フレートまで。なんなんだよ、そういうとこって」

 なんだろうな、なんだろうこの徒労感というかなんというか。ローデリヒはきっと、幸運の値がカンストしているに違いない。

「……オレが先頭で降りるぞ?」

「では殿しんがりは私が務めます、スヴァンテ様」

「はい。お願いします」

 最後尾がフレートというのは妥当だろう。しかしローデリヒは先頭で突っ込みたがるなんて本当に戦闘民族っていうか、さすが騎士の家系。精霊の加護もあるから、大事には至らないだろう。井戸の底に着くと、ローデリヒが手と視線で横穴があることを指し示す。全員、音を立てないように気を付けながら中腰になって横穴を進む。しばらく行くと、突然広い空間に出た。見回すと天井はそれなりに高く、丸くアーチになっている。十畳くらいの広場の、その先は幾つかの通路が分かれている。

「右から進もう」

 ローデリヒが小声で呟く。フレートは一番反対側を指し示し、ぼくを見つめた。

「私はあちらを」

 フレート一人で対処可能と判断したのだろう。いくらローデリヒとイェレミーアスが天才と謳われる剣士だとはいえ、まだ子供だ。それならぼくらは一纏まりでルクレーシャスさんと一緒に居た方が邪魔にならない。ぼくはこくん、と頷いた。

 暗く湿った石畳を踏みしめる。濡れた石の匂いと、えた臭いが混じっている。本能的に直感できる。「生き物が生活している臭い」だ。それだけでここが牢だと分かった。

 空の石牢を一つずつ覗く。一番奥の石牢の中に、こちらへ背を向けて横たわる影が見えた。ルクレーシャスさんの魔法で照らされた、牢の中を観察する。鉄格子の近くに、皿が転がっているのが見えた。皿の中の食べ物は腐っておらず、何日も経っている様子はない。つまり、定期的に人が食事を運んでいるということだ。

「……三日か、四日おきに鬼火の目撃談があるのでしたね?」

「ああ」

 ローデリヒの返事を聞き、予想は確信へと変わる。

 ルクレーシャスさんが空中で手招きする。すると男は見えない手で引きずられ、鉄格子へ顔を押し付けられた。

「お前は何者だい?」

「……はは……貴様こそ、何者だ……」

 見えない手に髪を掴まれ、仰向いた男は酷く痩せている。藻掻く体力もないのか、為すがままだ。それでもその態度にはふてぶてしさが隠しきれない。

 ルクレーシャスさんが男の顔を覗き込む。暗い石牢の中、ということを差し引いてもその肌は青白い。

「ふむ。……フリュクレフの民だ。どうする?」

『……』

 ルチ様が、静かに首を横へ振った。

「……様子を見ましょう」

「分かった。他を見に行こう」

 ルクレーシャスさんへ頷いて見せる。それからぼくは、妖精たちへお願いをした。

「みんな、彼を死なないようにしておいて」

 鼻先でくるくる回った妖精は、ぼくの髪を一筋引っ張った。

「いいよ。あげる。だからお願いね?」

 一本髪を引き抜き、妖精へ渡すと髪は銀色へと戻った。抜け毛が銀色に戻ってないか確認しなくちゃ。ルクレーシャスさんへ抗議したかったけど、今は集中しよう。

 二本目の通路を進む。そこにある牢は全部、空だった。しかし埃を被っていない椅子や簡素な木のテーブルが置かれており、明らかに誰かが最近までここへ来ていたことを示している。三本目の通路の入口に立つと、奥から微かに砂利を踏む音がした。

「!」

 誰か居る。顔を見合わせた。ルクレーシャスさんが先頭に立つ。手前から、牢の中を一つ一つ確認する。通路の突き当りは壁で、机だの椅子だのは置かれていない。最後の牢へ差しかかる。牢の入口は、内側へ向けて開かれていた。

「いやあ――っ!」

 薪を両手で掴み、ぼくより少し年上くらいの子供が飛び出して来た。下から打ち上げるように振った薪は空振りだ。あっさりルクレーシャスさんに襟首を掴まれ、足を激しくばたつかせている。

「離せ! このやろう! くそっ! 父さんのカタキだっ!」

 プラムのように深い紫の髪、ターコイズブルーの瞳。痩せてはいるが、しっかりした体つきの少年は愛嬌のあるまん丸の目をしている。

 腕を伸ばしているのが面倒になったのか、ルクレーシャスさんはうんざりとした表情すると少年を魔法で宙づりにした。

「どうする?」

「連れて帰りましょう。君は、ギーナ・ゼクレスかな?」

 ぼくが問うと、少年はびくりと体を強張らせた。年齢的にゼクレス子爵の三男、ギーナ・ゼクレスの可能性が高いと思って呼びかけたのだが、当たりのようだ。三本目の通路から広場へ戻ると、フレートが隣の通路から出て来るところだった。

「こちらには三人、囚人がおりました」

 フレートの言葉に、ルチ様を見やる。ルチ様は再び、首を横へ振って見せた。

「ご苦労様、囚人はそのままにして彼を連れ帰りましょう。数日前に食事を持って来たようですので、一日二日放っておいても死にません」

 ローデリヒが何か言いたげにぼくを横目で見た。片眉が上がっているから、どうせ「おっかねぇ」とかそういう感じだろう。

「……かしこまりました」

「わたくしたちは魔法で帰るから、馬車をよろしく」

 ルクレーシャスさんが早く帰りたいという気持ちを隠しもせず、フレートへ告げる。フレートは軽く頭を下げた。

「承知いたしました」

「それから、老人がここへ入ろうとするでしょう。見かけたらタウンハウスへ連れて来てください、ルチ様」

『……分かった』

 あからさまに不満顔でルチ様が唇を尖らせた。まだ拗ねてるなぁ。困った。

「お手柄ですよ、ルチ様。この子が居る時に折よく結界を張っていただいたおかげで、彼を保護できました。このまま結界は維持していただいていいですか?」

『うん。ヴァン』

「はい」

『褒めて』

 手を伸ばしたルチ様の腕へ移り、頭を撫でる。最近甘えん坊なんだよなぁ。よしよし。

「ルチ様、いいこ」

 ぎゅ、っとぼくを抱きしめて顔をくっつけているルチ様の頭を撫で続ける。これで機嫌が直ってくれればいいけど。数分の撫で撫でタイムを設けると、ルチ様はまだちょっと拗ねている素振りでルクレーシャスさんへ背を向けた。

『ヴァンは私が運ぶ』

「えっ? えっ? あっ」

 目を瞬かせる間に、ぼくはタウンハウスのコモンルームに居た。ルチ様はまるでぼくの顔へマーキングするように額を擦りつけている。

「んむ、ちょ、ルチ様……っ」

『早く』

 早く話し合え、と言うのだろう。なんだろうな、この精霊様はすっかり待てができない子になってしまっている。

「ちょっと! 置いて行かないでくれる?! スヴァンくん!」

「ぼくじゃありませんよ、ルチ様です」

 ぼくが答えると、ルクレーシャスさんの耳がぺたんと伏せた。

「……その精霊様、どんどん我儘になってやしないかい」

「……否定は、しませんよ……」

 ぎゅむぎゅむと頬を押し当てたままのルチ様のお手々を撫でて、ため息を吐く。

「ルチ様。ギーナ様をタウンハウス内から出られないようにできますか」

『できる。……できた』

「ありがとうございます」

 ベルを鳴らすとベッテが顔を出す。馬車で出かけたのに、馬車で戻って来なかったぼくらを眺めても不思議そうな顔はしない。

「ご用ですか、スヴァンテ様」

「うん。この子をお風呂に入れて、それが済んだらここで食事をさせてあげて。しばらくうちで預かるので、お部屋も準備してあげてください。それから、使用人の部屋も一つ、用意しておいてください」

「かしこまりました」

「オ、オレはお前らなんかに屈しないぞ!」

 ベッテが出て行ってしばらくすると、侍女が四人現れた。未だ魔法で宙づりのギーナが叫ぶ。

「オレに触るな!」

「面倒だろう? そのまま連れて行きなさい。湯船の上に来たら自動的に下すようにしたから」

 ルクレーシャスさんは、バタークリームを挟んだブッセを掴みながら侍女たちへ声をかけた。バタークリームはね、いくつか作り方があるんだけど今回のは卵と砂糖を湯せんしながら泡立てたものを、白っぽくなるまで泡立てたバターと混ぜ合わせるタイプのバタークリームだよ。ここにカスタードクリームを混ぜても美味しいんだ。ただいかんせん、色は黄色っぽくなる。スポンジを焼いてバタークリームでデコレーションしたら、前世みたいな見た目のケーキも作れるんじゃないかなって思ってる。

「あと、暴れると自動的に宙づりになるから無駄なことはお止めなさい」

 目もくれずに言い置いたルクレーシャスさんは、もうギーナに興味はないとばかりにブッセを口へ詰め込む。ギーナは顔を真っ赤にして足をばたつかせた。

「……っ! ……っ!」

 うちの侍女たち、大抵のことに驚かなくなってるけどいいのかなぁ。あと、突然捕まえられてずっと宙づりのギーナにちょっと同情を禁じ得ない。

「ギーナ様。ぼくらはきっと、敵ではありません。ですが、ぼくらの敵は共通である可能性が高いのです。まずはゆっくり、お風呂で温まってください。戻られたら、ここで食事をしてくださいね」

 ぼくの言葉に、ギーナは暴れるのを止めた。静かに床へ体が降りると、ぼくを振り返りながら侍女たちに付いて行く。ぼくは何故かその姿が、本来ならここに居たはずの幼子と重なって見えた。

 不安げに瞳を揺らす、スヴァンテ・フリュクレフに。あの子もそうであるならば、助けたい。

「……やっぱ、あいつがゼクレス子爵の末っ子か?」

「おそらく。しかし彼が今まで一人で過ごしていたとは思えません。誰か、大人の協力者が居るはずです。きっと彼を心配して探しに来るでしょう。そちらはゼクレス子爵邸で待てばいい」

「スラムの子供たちに噂を流せと依頼した、老人の可能性が高いね」

 ルチ様の膝に乗っているぼくの向かいに座ったイェレミーアスは、組んだ足の上へ肘をついた。

「ええ。おそらくゼクレス子爵の使用人の誰かなのではないでしょうか……」

 真剣な眼差しをぼくへ向けつつ、ローデリヒはブッセを飲み込んだ。イェレミーアスが一瞬、ローデリヒを睨む。

「では、あの枯れ井戸の牢に居た囚人たちは……」

「想像の域を出ませんが何か重大な証言をできる、証人なのではないでしょうか。それもおそらく、犯罪者側の」

「だからわざわざ生かしておいた」

 イェレミーアスは長い指を顎へ当てた。甘い美貌と裏腹にその姿はどこか冴え冴えと冷えていて、少年神の彫像のように美しく怜悧で完璧だ。

「ええ。ギーナ様と協力者の老人はそのために、三日か四日おきに食事を与えに足を運んでいたのだと思います」

 ブッセをもう一つ飲み込み、ローデリヒはぽん、と手を打った。

「見られたくないから夜に忍び込む。夜だからランプを使う。それが鬼火の正体か!」

 ローデリヒへ視線を送りながら、ぼくは逡巡を見抜かれぬように気遣った。悪知恵の回るミレッカーが、それを見逃すとは思えない。だとすれば、ローデリヒの知り合いだという、肝試しを始めた騎士はミレッカー側の人間である可能性が高いのではないだろうか。

 疑念を飲み込み、ローデリヒへ頷く。

「……そんなところでしょうね。同時に二ヶ所で目撃されたのは、ギーナ様と老人が同時に別々の場所でランプを掲げたから。噂を利用して、囚人へ食事を運んでいたんです。そこまでして囚人たちを生かしておく必要があった。だからあらかじめ、幽霊の噂を流しておいたのでしょう」

 ルクレーシャスさんとブッセを取り合い、勝利したローデリヒが大きく頷いた。

「つまり、あのチビは自分の親を殺したヤツを知ってる!」

「その可能性が高いでしょう。もしくはゼクレス子爵を追い込んだ人間の、悪事の証拠を握っている。誰が企んだかも分かっていて、証人も手の内にある。しかし、それを告発するための味方がいない。そんなところじゃないでしょうか」

 イェレミーアスの虹彩が鋭く光を帯びた。ぼくは二人へ、頷いて見せる。

「告発するための味方が居ないのなら、ぼくらがなればいい。彼の信頼を得られれば、ですが」

 それが一番難しいのだ、とぼくは情けなく眉尻を下げた。

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