第3話:はじめまして…僕

そして、講義が終わったあと。俺はすぐに家に帰らず大学の図書館に向かった。戦前からあったこの大学の図書館はお宝貴重な文献もたまに発見される。そして、俺はラテン語などの翻訳本を手にする。そこで俺は、心のモヤモヤを消し去る発見をした。

 あの男性の名前である“ファンタズマ”は人に付けるような名前ではないということが分かったのだ。ファンタズマとは、ギリシャ語で“化け物”という意味を持つ。少女があの男性の名前の意味を知らないとはいえ……普通の家庭ではないというのが分かる。

 そして、そんなふうに悶々と考えているとチャイムが流れる。そろそろ帰らないといけない時間になった。俺はバックに散らかしていたものを入れる。そして、図書館から出たが何故だろうか? 誰かから見られているように感じた。

 大学から住んでいるマンションまで駅を2個経由して行く。そして、駅に着いた時には辺りが真っ暗になっていた。勿論、人通りもない。こういう時に見たくない奴らを見てしまう。できるだけ周りを見ないようにしていた。しかし……。


───ガシャン


 と、普通なら聞くことのない音がする。それは、骨と骨を合わせて鳴らしたような音だった。その瞬間、俺の体が動かなくなった。俗に言う金縛りだ。だから俺は日が落ちる前に帰るのだ。しかし、今回は捕まってしまった。そして、青い灯火と共に骸骨達が行進してきた。そこまではいいのだが、さらに奥の方から腐敗死体も行進してくる。そしてもっと奥、禍々しい気配と共にいるのは有名な日本妖怪に数えられる餓者髑髏だ。正直、背筋が凍った。そして、その餓者髑髏は俺の方に手を伸ばした。


「あっ……俺の人生、ここで終わりか」


 そう呟き目を閉じようとした瞬間、俺は自分の目を疑った。目の前で餓者髑髏の手が切り落とされたのだ。


───ガチャン!


 手を落としたであろう人物は俺と同じくらいの年齢の女性で大鎌を持っていた。


「はじめまして……僕」


 そう彼女の言う言葉と共に金縛りが解けた。そして、彼女は骸骨の集団の中に飛び込んで行った。


「あっ……」


 俺の言葉など聞かず彼女は姿を消した。

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