第2話シャボン玉と少女

─ガチャ


 扉を開けた瞬間、太陽の日差しが眩しかった。いつもなら賑やかなマンション前も、今日はなぜだか静かだ。

マンションから出たあとは、近くの公園に行く。いつもなら人のいない公園に1人、少女がシャボン玉を吹いていた。迷子だろうか…しかし、その少女に話しかける勇気もなく、公園のベンチに腰を落とした。

 俺は、この地域では名門な明瞭めいりょう大学に入学し順風満帆な生活をすると思っていた。しかし、大学ではそこそこの奴らとつるみ、特に高校と変わった所はない。祖母と同じ大学に行った俺だが…特に祖母が話していたような面白い経験はしていない……。

 そんなことを悶々と考えていると、先程の少女が目の前に立っていた。


「お兄さん。大丈夫?体調悪い?」


 小学六年生程だろうか?身長は150cmほど…。そんなことを考えていると少女は俺の隣に座ってきた。


「お嬢ちゃん、君こそ大丈夫なのかい?お家の人はいないのかい?」


 俺がそんなふうに聞くと少女はなんてない声をしながら俺に言う。


「お父さんもお母さんも家にいないから安心して!」


 俺はその言葉を聞いて少女の顔を見てしまった。その顔は人間離れした顔だった。人形と言われた方が合点がいくほどに……。


「君…家は何処?」


 そう俺が聞くと少女はある場所を指差した。そこは、この地域で1番でかい屋敷だった。あの屋敷には、この近隣では有名な探偵が住んでいる。その探偵の姿を見た事がある人はあまりいないと言われている。

 いつの間にか、彼女の指差した方向にある男性が立っていた。その男性の身長は180cm程で高身長だ。その格好は長いコートに長髪を1つに結んだイケメンだった。そして、少女を見たからか彼は俺達の方を見て手を差し出した。そんな行動に俺は驚きながらも隣に座っていた少女が彼の方へ走っていく。 


「ファンタズマ!」


 少女はそう言い彼の腕の中に収まる。そして、抱きかかえられ俺の方を見る。その時、男性は俺の方を見て少し警戒しているように感じた。


「お兄さんありがとう!またお話しようね!」


 彼女はそう言いファンタズマと言われた男性と共に離れていった。俺は、何故か違和感を感じた。理由は男性の名前だった。

 そして、時計を見るとさほど時間は経っていないように思えていたが針が11時を回っていた。心のモヤモヤを感じながら俺は大学に向かった。

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