アスファルトがあったらあれが歌えるのに。

あれ、どこだここ。そう思ったのは今日で2回目だな。

2回目以降になると、何処か知らない場所に突如として行ったとしても、案外驚かずにいられるもんだ。

真っ暗闇の中に一点、自分が体育座りしているところだけ、丸く切り取ったかのように明るい。例えるなら、舞台劇等で使われるスポットライトが妥当だと言えるだろう。

目立たせたい一点を、グッと

「初めまして。」


やや低いトーンの声だが、何処か落ち着くような透き通った声が、この空間内全体へと広がった。

「あなたがなぜこんな場所にいらっしゃるのか、ご理解頂けますでしょうか…?」

と、優しく語りかけてくる。

ここで、よく魔王とかが座っているイメージがある椅子を想像してほしい。背凭れが長すぎて相手の姿を直視出来ないあの椅子。

あれが今目の前にある。そして、その椅子のところから声が聞こえる。

実は体育座りをしているこの地点からは約8メートルほど離れているためか、少し声が聞き取りにくいが、まぁよしとしよう。(何様だよ。)

「えと、その…」


あれ、もしやこの方、人と話すのはちょっと苦手なタイプのですかね?

などと抜かすからか、胸の奥らへんにブーメランが帰ってきて痛い。

俺も人と話すのが苦手だから、言葉に詰まるのはよく分かる。

その人は、息を大きく吸って深呼吸をしてから、こちらに顔を向けた___。

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