第6話 魔法の理

 魔法について何も知らないライにその基礎知識を教えることにしたジョージィ。その様子を他の団員達も見ることに。

ミミが窓の外から顔を出して夜桜の袖を引っ張る。


「今から何するの?ウチにも見せてよ!」

「ライに魔法についての基本をボスが教えるだけよ」

「じゃあ見る!!」


 興味津々に見届ける団員達とは違い顔をしかめるカヨ。彼女は端の方からライのことを見つめる。


(本当に大丈夫なのだろうか…?)


___


「まずは基本からだな。この世界では主に七つの属性に分かれている。火・水・風・雷・地・光・闇になる。これらを上手く使って初めて使うことが出来る」


 おとぎの星の世界では七つの属性があり、その属性を使って魔法を使う仕組みになっている。


「お前も本で読んだことがあると思うが、まだまだそれだけじゃあないぞ。じゃあローラ、あれを見せてくれ」

「わかったわ、パパ!」


 ジョージィは娘のローラに指示を出し、魔法の更なる知識をライに教える。

彼女の指先から複数色の色が出現し、その色はやがて交わりひとつの絵となる。


「色が一気に変わってひとつになった!?」

「ふふ、見たでしょ、アタシの魔法?綺麗だと思う?」

「今見た通り、魔法というのはただ相手を攻撃する時に使うだけではなく様々な形に応用することが出来る。そのパターンは数千、数万以上とも言われている」

「…!!」


 本で読んだことのあることだけではなく知らない情報も知ることが出来たライはただただ無言で頷く。


「あと…補足だがもっと知りたい場合は専門的に学べる国があってな、東ではアラヴ=マギア、西ではグロリアス大聖堂というところがある。もし興味があれば通って行くといい」

「そこは…いつか行けますか……?」

「ん?ああ、そのうちな…」


 話を一通り聞いたライは地図を思い出し心の中でいつかその場所へと行ってみたいと少し考えるようになった。


「さ、簡単な話はここまでだ!ライ、お前の実力というものを軽く拝見するとしよう。

…とは言っているが俺は別に魔法を専門的に扱っている訳じゃないんだが多少なら分かる。まずは魔力を出してくれないか?」


 ジョージィは彼自身の魔力はどれほどのものかこの目で見てみることに。しかしライ生まれてから一度も魔法を使ったことがなくどうやって魔法を使うのかすら分からない。

戸惑ってると窓の外からカヨが両手を広げるジェスチャーをした。


「カヨ、何してるの?」

「いや…何かわからないような感じがしていたから……これで伝わるかなと思ったんだ」



「んーーー?カヨの言ってることって…… 両手をパッと広げて軽く出すってこと?よし、やってみるか…!!」


 カヨの出している合図をヒントに気を放出するイメージで魔力を出してみるライ。すると光のようなものが一瞬だけ現れた。


「!?」

「…今のは…何?」


「やはり破皇邪族としての力はないようだ… 一般の、ごく普通のって感じだな」


 ライの魔力を見たジョージィはタバコを吸うのをやめ即座に彼の力を見定めた。やはりその魔力は戦闘種族である破皇邪族としての力ではなく普通の人間としての力になっていることがわかった。


「…そうだな。破皇邪族本来の力であればこの倍以上はあったかもしれんな。お前は良くも悪くも普通だ…!」

(普通……なんだ……。何だか一番地味な感じってことか…?)


「…じゃあ元々だったらすごいってことなのかな?」

「それはあまり見たことないわね。ロロの言う通り、本来であれば私達よりもずっと強いはずよ」


 夜桜は数回しか見たことのない破皇邪族の魔力を予測しとんでもない力のことを想定する。その本来の力というものは一体どれほどのものか…?


「なるほどわかった。だが鍛錬を積めば強化することも可能だ、今のままで諦めるなよ。お前はまだ本当の自分というものに気づいてないんだからな」


 そう言うとジョージィは机の上に置いていた銃を取り出した。彼はライの力を更に向上させるために自分の力を出す。


「ライ!魔法というものはな、もうひとつだけ言っていないことがある。それは七つの属性を上手く使いこなし個性を生み出すことだ!今からそいつとやらを見せてやろう…!武器を持て!」

「えっ…まさか今からボスと対決ですか!?」

「安心しろ、ウォーミングアップだ」

「やる気満々じゃないですか!!」


 軽い手慣らしのような感じだとジョージィは言うが、どう見てもやる気である。

すると彼は銃を構えて壁に向かって一発放った。その弾丸はレーザーとなり真っ赤に光り輝く。赤いレーザーはやがて三本に分かれ辺りを高速で飛び回る。


「弾丸が、姿を変えた!?」

「ホラ、もたもたするとあっという間に餌食になっちまうぞ!!」

「うっ!?」


 身体能力の高さでなんとか避けることができたライだが少しでも反応が遅れていれば貫かれているところだった。


(危なかった…それにしても速すぎる!しかも分裂した…?)


 避けているばかりでは実力試しにはならない。ライは持っている武器を使い応戦する。

ジョージィが再び弾丸を放つ。今度は形を変えて更にスピードが速くなる。


「インフィニティショット!」


 弾丸は無数のレーザーに変化した。それは円を描くように宙を舞った。ライは攻撃を避けつつ湾刀で斬り返すがあまりの数の多さだけではなく攻撃力も先ほどよりも増しておりその力に耐え切れず湾刀が真っ二つに折れてしまう。


「しまった!?」

「これまでだったようだな!!」


 それでもライは折れてしまった湾刀を素早く拾いジョージィが持つ銃の銃口を刃で塞ぐ。それを見たローラは、


「アイツ、中々諦めが悪いわね。パパの攻撃はとても速いのよ。今更反撃しても…」


 彼女は腕を組みながら険しい表情する。父親であるジョージィは一級魔法官で戦闘経験のないライでは太刀打ちできないと悟る。

一方で諦めずに自分の攻撃に対応しようとするライを見たジョージィは……


(こいつ、俺との実力差はわかっているはずなのに…!?)


 ライとジョージィの実力試しを見たカヨはそれを見てふっと笑う。


「何も知らないからこそ立ち向かえる…彼の好奇心というものは甘く見てはいけないみたいだな…!」


 二人の実力試しは数分に渡り続いた。そして五分後___



「…はぁ、今日はこれで終わりだぞ…ライ」

「は、はーい…」


 流石に一級魔法官であるジョージィに勝つことができずぐったりしてしまったライ。


 最初は軽い実力試しであったが、いつの間にか数分に渡る戦いになっていたのだ。


「だ、大丈夫…?」

「はい、俺は平気です……」


 夜桜がライを持ち上げる。そのまま彼は実力試しを終えて今日の活動は終了した。


「お疲れ様パパ。どうだった?」

「魔力は一般くらいだったが粘り強さは人一倍、といったところか。さぁ、今日はここまでとするかな。お前達も早く戻れよ〜?」

「はいはい」


 ローラはジョージィに話しかけ、そんなジョージィ自身もライの予想外の粘り強さに驚かされつつも彼の実力を見ることが出来てどこか満足そうだった。今日の活動を終える前にライに声を掛ける。


「ライ、先程のやつを見ていたが武器が壊れていても短い方で応戦しようとしただろ?つまり……俺の提案だが…色々な武器を扱ってみないか?そうすればお前自身も可能性がある」

「本当ですか!!…俺、やります!」

「今じゃないぞ、後でだ。今日は終わりだ」


 今すぐにでもやりたいと頼むライだったが流石に今日はやらないと突っ込むジョージィ。

ライの新たな可能性を信じ、更なる飛躍へ。

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