あかな ―星盗りの話―。

まキズシ

第1話 再開

 わたしカレ姿すがた一抹いちまつ不安ふあんをおぼえたのは、まだ幼少ゆえの勘違いだったのだろうか。

 13年前の5月初旬、新緑むなしくすべて振り落とされるほどの豪雨の日、

月の光がよく当たる郊外のマンションの一角で、

向こうがわの『モノ』を求めるかのように両腕りょううでをいっぱいに広げて、

転落防止のさくから身を乗り出すようにして夜空を見上げていた黒服クロフクの男。

 黒雲くろくもに覆われながらも強く輝く金星の光下を母親に連れられながら、闇の中にあっても異質に輝ける漆喰塗しっくいぬりのヒジャブ姿をみて、

 何故かひどい焦燥に駆られたのを憶えている。

 そして、今、目の前にその男が、『カレ』がいる。

 くたくたに腫れた瞼を重く動かしながら、

 何故かこちらをいぶかしげに見てくる青年。間違いない、彼だ。あの『男』だ。

 ラティーノな地中海産の皮膚を陽光に晒しながら、いちど深呼吸をしたかと思えば

突然こちらに向かってズカズカとズカズカズカズカズカスズカズカ私の足元に座り込んだ。

「え?...」と、思わず私が通夜を終えたしかばねのようにその場で硬直していると、彼が私のを見つめながら「赤名あかな ユウカさん」何故なぜか知ってる私の名前を呼び、

「僕と一緒に"星盗り"をしてみない?」

 その言葉で私は、司法解剖しほうかいぼうをされる死体のごとく瞳孔をカッぴらいてしまった。いてェェェ...

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