第23話 何者

「ホントはねー、今日シチューにしようと思ってたんだけど…」

「アキラにスタミナ付けてもらいたいから…」


「牛丼にしましたーーー♪♪」

「ちょっと奮発して良い肉買ったぞっ!」




………牛丼!!?


…昼も…牛丼…

…並にしといてよかった…



マユミは実家からの仕送りとバイトで生計を立てながら1人暮らしをしている…らしい…


…しかしユキは…どうなっているのか…

……間違いなく2人は同一人物のはず…




マユミの部屋はアパートのワンルーム

決して広くはないが、きちんと整理されていて…

女性らしい雰囲気もありながら、家具やカーテン等は落ち着いた色の物を使っている…


壁には僕とマユミの2ショット写真が大量に飾られ、『ユキ』の気配は微塵もない…




「はい、おまちどー♪」



チェーン店の牛丼とはまるでレベルの違う見た目と香りは、昼間の味を忘れさせてくれそうだった…





「……いただき…ます…」





「……旨っ……やばっこれ…」

何をやっているんだ僕は…

まるで本当の恋人同士みたいに…



「美味しい?よかった♪」

「アキラ私の作る料理好きだもんねー」




本当に…この子が僕を…

トモキを殺したのか?…


あの神社で見たマユミとは、まるで別人…





でも…


このままじゃ…駄目なんだ…


僕にはあと一カ月しか時間がない…




「…ねぇ…マユミ…」




「ん?なに?」




確かめないと…


僕の目の前にいるマユミは…





「……マユミ…」




僕はマユミの目を見つめながら、彼女の反応を伺う





「…………」

「…なんのこと??」




マユミの返答に応えることなく

僕はマユミの目を見つめ続けた




「…ちょっと…どうしたの?アキラ…」

「今日…なんか変だよ??」







『僕は過去から意識を飛ばして未来に来た…』


『ユキとマユミのシナリオってやつを壊すために』



!!!!



僕のその言葉で、マユミの表情は一変する






「………はぁ……なるほどね…」


「って事は…

「マジうざ…」




マユミだ…


神社で僕を突き落とした時の!


やっぱり…今までのは演技!!


もう、遠慮する必要はないな!


「時間屋からある程度聞いてる!」

「僕とトモキの人生をもて遊んで…」

「何が楽しいんだ!?」


「2人で入れ替わって…僕らと恋人ごっこか!?」


「僕には過去の記憶がある…」

「ユキとマユミ…このまま君たちの好きにはさせない!」

「覚悟するんだな!!!」





僕は立ち上がり、マユミに怒りをぶつける


彼女は無表情のまま僕を見つめていた





「……………」


「ぷっ………」


「あはははははははははははは!」


「覚悟する?何を?」


「アキラに何が出来るって言うの?」

「来月にはもう死んじゃうのに??」

「仮に私を殺したとしても変わらない」


「だって


『トモキが過去に戻って、アキラが未来に進む』

『お互いを助けようとして、何度もね!』




マユミは僕の胸ぐらを掴みながら、真実を突きつけてくる…


時間屋の…ハルの言っていた事は…

本当だったんだ…



「なんならアキラ…」


「今ここで!」


「思い通りにならないなら!」


「今ここで!!!」


「殺してあげようか!!!?」


!!!!

マユミは突然僕の首を絞め始めた


「………ぐっ…」



相手が女性とはいえ、僕は元々力の強い方ではない…


僕の首を絞める…マユミの手を…

離す事ができないまま…


意識が遠くなっていく…








ドサッ……








膝から崩れ落ちたのは…









「やめてよ…」



「もう…やめて……」






マユミの手から解放され

咳き込む僕の目の前には




泣きながら床に崩れ落ちている

ユキがいた…









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