第21話 CLOCK

「牛丼食わない?」

「あ、ハルって呼んでいいよ」

「ボクもアキラって呼ぶから」

「敬語も禁止で!」


急に距離を縮めてきたハルと、僕は嫌々牛丼屋に入った…


「うーん、何にしようかな…」

「…メガかなぁ…アキラは?」



僕は面倒くさそうに牛丼の並を頼んで、黙々と食べ始める



「旨っ!やっぱ牛丼最高!」



「……………あのさぁ、アキラ…」








「……なに?」


正直、この状況で能天気なコイツにイラッとしていた僕は、そのオーラを出しながら返事をした






「ぶっちゃけ、言うとさ…」


「これから、時間の、ループを、壊して、欲しいんだけど…」




ハルは牛丼を食べながら話してくる行儀の悪い奴だって事がすぐにわかる…




「まぁ…それ、やるとさ…」







『アキラとトモキくん、死んじゃうんだよね…』




僕は箸が止まる…


無言のままハルのネクタイを見つめ

ゆっくりと箸を置いた…


「どういうことだよ…それ…」


「話しが違ってくるじゃないか…」


「僕とトモキを助けるのがハルの役目だと、勝手に思ってたよ!!」







「…助けたいさ…」


「でもね…」






『君たち2人、ホントは2013年の夏に死んでいるんだ…』



桜井 友希とマユミが書き換えた…』



『この時計…』



『CLOCK【クロック】を使って…』






!!!!!!?


言葉が出ない…


絶望感というか…

黙ってここまでコイツについて来たけど…

それは、何とかなるかも!

って心のどこかで期待していたからだ…


「………って事はつまり…」


「…ループを繰り返せば僕とアキラは生きることができる…でもそれは死のループ…」


「…それを壊したら…そもそも死んでるから僕たちは消滅する…」


「って事でいいのかな?……」







「流石だね!その通り!」



その言葉に、僕は怒りを抑えることができなかった…

「ふざけんな!!!!!!!」


突然大声をあげた僕に他の客の視線が集まる


でも、そんな事はどうでもいい!




2人分の勘定を済ませて


僕は牛丼屋を出た…






早歩きで進む僕を


ハルが追いかけてくる


「ついてくるな!」と言うのも面倒くさい




…トモキを、助けられると思ったのに…






…………俺たちは…


ユキとマユミ…アイツら時間屋に利用されてるだけなんだ………


……やはり信用できない…


僕1人でも、何とかしてみせる!!




「待てってアキラ!!」

「まだ話しの途中なんだよー!」


「1人じゃ無理だからねー!ボクがいないとー!」




僕はハルを無視して歩を進める…


ユキと話す前に…トモキと会って手を組む!


1人じゃ無理なら!トモキと協力すればいい!








しばらく進むと、ハルは追ってこなくなった…


…これでいい…


僕達で何とかしてみせる…











「………はぁ…アキラくん、流石に怒っちゃうか…」


「困った坊やだ…」


「ま、ゆっくりやりますかね…」

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