第7話 朝食

「ユキ、ごめん」

「今日、急な用事ができて…」

「昼飯行く約束だったけど、行けそうにない」


俺は申し訳ない気持ちを全面に出して、ユキに連絡を入れた


「えーそうなんだー…」

「まぁ仕方ないか…トモキが私との予定キャンセルするなんて初めてだし…」

「よほど大事な用事とみた!」


ユキは空元気でかつ残念そうに答える


「ごめん、いやさ、昨日もデート途中でキャンセルしちゃったから、この埋め合わせは必ずします!」


「え?……昨日はデート…してないよね?」




………え?…あ!そっか!

それはデートか…




「へぇ!トモキ君は誰とデートしてきたのかなぁ?」



あ!やべ!………

「いや、違うんです!それは明日…あの…」

「デートしたのはユキなんだよ!それで…」



「もういいです!私はマユミとカラオケに行きますから!!!」



ブチッ…




………あ、切られた…


こりゃ…アキラの件が片付いたら鬼弁解しないと…









俺は落ち着いてアキラに連絡をし

カフェで待ち合わせをした


待ち合わせのカフェは【dolls】ってお店で

一階が本屋、二階が個室ありのカフェになっている


アキラはよくここで朝食を取るらしい




俺たちは二階に上がり、奥の個室に入った


隣の個室ではカチャカチャと音が鳴っていてうるさい

よほどマナーの悪い客がいるようだ






「お前がこんな朝早くから連絡してくるなんて、珍しいな!僕あんまり個室好きじゃないんだけど?」


アキラはまだ眠そうにしていた

俺が個室を選んだことに疑問を持ったようだが

深くは気にしていない様子



普段朝食を取らない俺は

ホットのカフェオレだけを注文した


アキラはブラックコーヒーとフレンチトースト





俺は緊張しながらも、落ち着いて話す事にした


ありのままを、アキラに伝える…




「アキラ…落ち着いて聞いてくれるか?」


アキラはフレンチトーストを食べながらうなず




俺は2日後に大学でアキラの死を目撃したこと


意識を過去に戻して再びアキラに会ったこと


そこでまたアキラの死を目撃


さらに過去に意識を戻して、今ここに居ること


時間を操る、時間屋のこと


これまでのことを淡々と説明した






「そっか…2日後か…」

アキラは驚く様子も見せずに答えた






「なんで落ち着いてんだよ…」

「お前もあの時間屋に行ってるんだろ?」

「何が起きてるんだ??知ってることは教えてくれて!」


とにかく俺は知りたかった


今何が起きているのか





トモキは面倒くさそうにコーヒーを飲みながら言った


「もうその質問には飽きたよ、トモキ…」

「何回僕に同じ質問をする?」





「は?」

何回目かの脳内フリーズ…






トモキは突然人が変わったかのように俺を見てきた


「もう面倒くせーんだよ!お前!」

「はっきり言う!僕はお前が嫌いだ!親友だなんて思ってねーし!会いたいとも思わない!」

「お前は昔から僕をコケにしてきた!」

「僕のユキに対する気持ちを知ってて、ユキからの告白に応えたんだろ!」

「就職だってな、僕はお前と同じ会社を受けて落ちてんだよ!」

「僕が欲しいものを僕から奪って、何が楽しいんだ!?」

「僕を救うために過去に戻った?」

「マジでうぜぇよ!もう僕を振り回さないでくれ!」



アキラは言いたいことを言うだけで言って



一人で店を出て行った

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