第4話 黒い時計

「ねぇ、さっきから何なの?無視しないでよ!」


「え?……あ、ユキ!!??」


「あ!ユキ!?じゃないわよ!トモキ私の話しガン無視じゃんか!」


「え?あ、ごめん…えっと…なんだっけ?」


「だからさぁ!昨日マユミがね……」





ちょっと待て…混乱してるぞ、俺…

この状況はなんや!???


えっと……



「ユキ!今日何曜日!!!??の何時!!?」

俺はユキの話しを無視して切り出す。


「えぇっ!?…えっとー火曜日の夜8時だけど」









戻ってきた……



1日………



って事は……







「ユキごめん!俺アキラに会ってくる!」

「明日、飯奢るから!マジごめん!!」




「えーーーっ!?どしたの急に!!ちょっと!」





俺はユキとのデートをドタキャンして、走り出した。










(♪♪♪♪♪♪)



「もしもし、トモキ?どした?」








あ……アキラだ………生きてる…

アキラが生きてる………やった…やったぞ!






「アキラ!今どこ!?すぐに会いたい!」


「は?今バイト終わって…駅に向かってるとこ!ってか急にどした?キモイぞ!?」





俺は全力で走りながら、少し前の記憶を呼び戻す。












「………1日戻るのに、どれくらい取られますか?」









「……そうですね…1時間戻るのに、アナタの命を25時間消費しますので、24時間ですと…」

「600時間、25日分になります」







「…………………わかりました…」




「俺……」

「それでもう一度、アキラに会えるなら…」





「ありがとうございまーーす!」

「それではそちらの黒い機械で購入するべしぃ!」




女店員に言われ、俺は時間指定した時を戻す時計を購入した。




「ボタンを押した瞬間に支払いは完了しますので、よろしいですね?」





フードの男は信用できそうにないが、俺は藁をも掴む気持ちで、時計のスイッチを押した。









そして俺は1日前、アキラがバイト帰りに立ち寄る駅のホームに向かった。


いつも会ってるはずの友達に会うのに、こんなに緊張することはない…


俺の心臓はいつもより強く、早く動いている。






「よ!トモキ!」






俺が振り返ると

そこには華奢な体の

女みたいな顔立ちの男




アキラ………






「……ア…キラ…よかった…」

「会えた……よかった……」



「なんだよ!死人を見るみたいに!」

「っておい、どした???」



俺はアキラの袖を掴みながら

流れる涙を必死に隠した。





もう大丈夫だ、これでアキラは助かる。




も、そう思った。


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