第98話 思いついた

「樹君的に、私がミスコン参加するのどう思うっすか?」


「どうと言われましても……」


土曜日の昼頃、俺は優葉とこの前来たドレスのレンタルをしてる雑貨屋に来ていた。


「頑張ってくれとしか言いようがない」


「私がミスコン見に来た他校のイケメン君に寝取られるとか……」


「待て待て、体育祭って言ってたから校内だけかと思ったら他校も来れるのかよ」


「他校も来るっすよ、だから寝取られるかもしんないっすよ?」


「じゃあ頑張らないとな」


「意地でも寝取られる事には触れようとしないっすね」


優葉が「はやく寝取られに触れろ」とでも言いたげな顔で俺を見てきた。


「フッ、優葉、俺には優葉が俺以外の男子に興味を持つとは思えないぜ⭐︎」


痛い、痛すぎる。


今までの発言の中でトップクラスで痛いし、恥ずかしい。


こんな事言えたものではない。


「まぁ、な」


「樹君の癖に生意気っすね」


「なんだ、癖にって」


「触れろアピールしてるのに触れないって事は、私が樹君以外の男に色目使わないっていう確証があるって事っすもんね」


俺が触れなかった意図をきっちり汲み取ってくれていた。


「前までだったら反応に困った顔するのに今は、取られないから大丈夫だろうみたいな自信ある顔してるっす」


確かに前までだったら、困った顔をしただろう。


前だったら、今ほど4人の関係が深かった訳では無いので、折角出来たこの関係が崩れたらどうしよう、みたいな心配をしただろう。


だが、夏休みが終わってから誰かがこの4人のグループから離れて行く事はないだろうなと思い始めている所があった。


なのであまりそういう心配をしなくなったのだ。


もっとも、この安心がある故に俺はいつまで経っても自分の気持ちに結論が出ないのかもしれないが。


「ま、実際私が樹君以外の男子に色目使う事なんて天地がひっくり返っても有り得ないっすけどね!」


そう言って少し周りを見たあと、優葉が俺の腕を抱きしめてきた。


その瞬間、俺はある事に気付き優葉の目を見た。


「優葉…………」


「樹君…………」


何故かちょっと良い感じの雰囲気なった。


が、俺はそれよりも看過できない事実に気付いてしまった。


「多分ちょっと胸大きくなってるぞ」


「…………」


「今まで優葉が抱きついてくると肋骨が当たる感触があったけど、さっきは肋骨の感触が無かった」


「それ最近ケーキ食べ過ぎてるせいでちょっと太っただけっす」


「ごめん、悪意は何一つ無かったんだ」


優葉の地雷を一気に2つ踏み抜いてしまった。


「まぁ、別に私ももう気にしてるわけじゃないので良いっすよ。でも、このままだとまた昨日みたいな道辿っちゃうから早くドレス選ばないとっす」


そうだった、本来の目的を完全に忘れていた。


俺と優葉はドレスを選びにここまで来たんだった。


「似合う、か………………小学生の服装は?」


「樹君、真面目にそれが最初に出てくるのはやばいっす」


「なんで!?頑張って考えたのに!?」


「もっとまともな意見欲しいっす」


「ならあそこの茶色のドレスは?」


優葉は髪が茶色味がかっているので、ドレスも茶色ぽい色の方が統一感か出て綺麗になる気がする。


「じゅあ試着してみるっすね!」


そう言って、優葉は茶色のドレスを持って試着室に入っていった。


「どうっすかね?」


すると秒で優葉が着替えて出てきた。


「おお、似合ってる……似合ってる……似合ってる……」


予想通り、優葉の髪色とドレスの色がマッチしている。


が、1つ予想打にしない事態が発生した。


近くで見れば結構はっきりと分かるほど下着が透けてるのである。


ドレスの生地の一部がレースなので光にあたる事で下着が綺麗に透けてしまっているのだ。


「このポーズどうっすかね?」


そして当の本人は気付かずに、実に悩ましいポーズを決めていく。


モロよりもこう言う透けたりチラリと見える方がなんだかんだ言ってエロいのだ。


「整いました」


「何言ってるんっすか?」


「下着とかけまして、くじ引きと解きます、その心はどちらも服(福)が重要でしょう」


下着の事を言及され、優葉が自分のドレス姿を見た。


「は!!なんでそんな遠回しな分かりずらい伝え方するんっすか!?」


「ふと、思いついてしまったから」


「言い訳いいから、違うの持ってきてください!」


「は〜い」


優葉が更衣室のカーテンをシャッ!!と勢いよく閉めた。


「透けなそうなドレスねぇ……」


そしてドレスコーナーを歩き回っていると、比較的薄手だが透けなそうな赤いドレスがあった。


ちなみに俺が薄手に拘ってる理由は、単純に長く着る時暑そうだからだ。


「よし、これにするか!」


ドレスを持って行こうとハンガーを掴むと、横から別な手が伸びてきて俺の手を上から握った。


「「…………」」


その手のつながってる先を見ると、ドレスと完全一致の赤い髪と黄と青のオッドアイ。


大体170cmくらいの高身長で、すんごいすらっとした手足の女子がいた。


どこかの異世界転生系の美少女メイドとかで出てきそうなタイプの人間だった。


「キッショいな、手、離せよ」


「君初対面だよね!?酷くない!?」


めちゃめちゃ暴言吐かれた。

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