第97話 夜中にファッションショーしようとすな
「そういえば優葉、あの隣のストーカーとはどうなった?」
2日後、図書館で数学のプリントを前に頭を抱えている優葉に聞いた。
近所に通報されて俺がやばい奴になるリスクを犯して追い返したんだから、もう変な言動してなかったら良いけど。
「相変わらず、それどころか悪化してるっすね」
「なんで!?」
「多分、彼氏の本性がこんなやばい奴ならまだ可能性はあるって思われたんじゃないっすかね?」
「俺の印象最悪になった挙句逆効果ってどういうことだよ」
恐怖を植え付けれたかと思いきや、やばい奴認定された挙句舐められているらしい。
成果が俺の犯したリスクに見合ってなさすぎる。
「いやー、今日も頑張ったっすね」
「俺も復習になって意外と良いわ」
そしてあーだこーだ教えてるうちに閉館時間が来てしまった。
「今日はこのあとどうするっすか?」
荷物をまとめていると優葉がそう聞いてきた。
「普通に帰宅」
この前、ケーキを買って帰った日は、矢吹と冬樹、特に矢吹の荒れようが凄かったのですぐ帰りたい。
深夜に俺のベッドに侵入してきた上に、結構殺意高めのヘッドロックをかけて来てくるという奇行をしてきて本能的な恐怖を感じさせられた。
糖分にはリラックス効果があるらしいのだが、矢吹の前にはなんの意味もなさなかったらしい。
「えー、少し買い物付き合って欲しいっす」
「何買うの?」
「来月の体育祭で塗る日焼け止めとかっす」
「あれ?道楽高校って文化祭やったんだっけ?」
「3年に1回体育祭があるんっすけど、たまたま今年がその年なんっす」
「ほ〜、じゃあ行くか」
体育祭で使うやつならそこまで時間は食わないだろう。
それならそんなに帰りは遅くならないだろうし、矢吹と冬樹から顔を見た瞬間睨まれるなんて事態にはなるまい。
最悪明日は週末なので、寝てるところを叩き起こされてもそこまで問題ない。
「じゃあ私に着いてきて欲しいっす」
「ここら辺よく知らないからよろしく頼んだ」
そして優葉の背を追った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「女子の買い物がすぐに終わると思っていた俺が馬鹿だった」
俺は雑貨屋の棚を物色している優葉の背中を見ながらそう呟いた。
かれこれ1時間近く優葉は棚を物色している。
結構な頻度で「それ絶対体育祭で使わないだろ」っていう感じの物が並んだ棚、要はアクセサリーを見てるのだが、
「それ使うの?」
と聞くと
「使うっす!使うから見てるんっす!」
の一点張り。
「あと20分で俺ら補導対象になってしまうんですが」
この店に来るのに20分前後掛かっているので、そろそろ出ないとまずい。
「なんでドレスを見てるの!?」
とうとう全く関係の無いものを見始めてしまった。
「直前まで言いたくなかったっすけど、体育祭でミスコンあるんっす、だから見てるんっす、アクセサリーとかドレスとか」
「優葉ってそういうの出たがるタイプだったっけ?」
隣の席のストーカー野郎の件があるのであまり人前で目を引く格好をしたがりそうでは無いのに何故出る事になったんだろうか?
「クラスで1人強制参加なんっすよね、しかもミスコンの順位もクラス順位に関係してくるから出なかったら私が戦犯扱いされるんっす」
どこかムスッとした表情で優葉がそう言った。
(前、冬樹が美人の宿命なんとか言ってたけど、こういう事を言ってたのか……)
美人の宿命の本質を理解した気がした。
「今日来たのも矢吹ちゃんと冬樹ちゃんはなんでも可愛いって言っちゃうので、色々感覚が鈍そうな樹君に評価してもらいたかったからっす」
「え?今から試着するの?」
「当たり前っす」
「やめよう?明日一緒に行くから、今日はやめよう?」
「明日の帰りチーズケーキ買ってくれるなら帰るっす」
「…………分かった、買うから帰ろう」
ここで首を縦に振ったら、優葉の意に反する事を言うたびケーキを奢らされそうだが、補導されるのは嫌なので大人しく優葉に手綱を取られたのだった。
後書き
肘の骨折も指の捻挫もほとんど完治したので今日から更新再開します
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