第93話 文化祭 6

「あ゛あ゛〜疲れたぁ」


俺は客が居なくなった教室で、机に突っ伏しながそう叫んだ。


「予定より早く終わったとはいえ、疲れるもんは疲れるな」


五月も疲れてげっそりしている。


本来、営業を終了するのは5時だった筈なのだが、思ったより繁盛したので食品が無くなってしまい、俺たちのクラスは4時に営業をやめた。


なので食品が早く無くなった分、俺ら接客組が繁忙を極めていた。


俺は最初の方だけナンパされたが、五月は接客した客の3分の1に声をかけられるという異常なモテっぷりでナンパされては料理を運び、ナンパされては料理を運びを繰り返していたので尚更疲れているだろう。


「2人ともお疲れ〜」


「おおぉ、石田」


声のした方向を向くと、そこには石田がいた。


石田は途中から呼び込みを放棄して遊んでたっぽいので元気そうだ。


「そういえば、石田あいつらと話せたの?」


営業前に、あの3人に呼び込みという立場を利用して話しかけてみるみたいな事を言っていたが結局話しかけられたのだろうか。


「無理無理、あんなオーラ放ってる3人に話しかけるとか無理」


あの3人、俺と一緒にいる時はポワワ〜ンとした感じを出してるから一見話しかけやすそうだが、3人だけになるとポワワ〜ンという感じは一才無いので仕方ないか。


「そういえば樹、お前今外で歩かない方がいいよ」


「疲れてるからもうどっか行くつもり無いけど、なんで?」


「俺が説明するよりオンスタ見た方が早い」


石田にそう言われ、俺はポケットからスマホを取り出しオンスタを開いた。


いつもの初期アイコンが画面に映っている。


ホームを開くと、冬樹と優葉と矢吹のアイコンの周りが虹色に縁取られている。


投稿内容を見てみるが、文化祭で食べた物の写真くらいで何も問題のあるやつはない。


いつもの光景だ。


「なんも変わらんが」


「そうか、樹オンスタほとんどやってないから見てないのか、じゃあちょっとこれ見て」


すると石田が俺にとある人の投稿を見せてきた。


その投稿には、俺と矢吹たちが4人で笑いながら歩いてる所が写されている。


「ふっ、なんだこの程度か、俺は今日、盗撮されることくらいとっくの昔に覚悟……」


「これだけじゃない」


「は!?」


そして石田はさらに画面をスクロールした。


そのスクロールされた画面には、俺と矢吹と優葉、冬樹が買い出し先のショッピングセンターで遊んでいる光景が映っている。


五月は上手く柱の影に隠れて写っていない。


「は?なんで?こんな所が盗撮されてんの?」


流石に昨日のショッピングセンターで盗撮されてるとは思いもしなかった。


「俺さ、こいつ冬樹さんと古賀さんと矢吹さんのストーカーだと思うんだよね」


「なんで?」


「フォローしてるのもあの3人だけだし、あの3人の投稿にめっちゃコメントしてるし、お前エグいくらい恨まれてるから」


「ほぼ確でストーカーやんけ」


「話戻るけど、お前が文化祭3人と一緒に回ったのと、こいつが色んな写真急に投稿しまくったおかげで、お前は誰の彼氏なんだと大荒れ」


「こいつ大大大戦犯やん」


まさかの間接的に実害及ぼしてくるタイプのストーカーだった。


勘弁して欲しいものだ。


今から外出る気力ないから今日荒れてる分には良いけど。


学校が始まる明後日までにほとぼりが冷めてれば別にそこまで問題ではない。


「なんかあったらあの3人守ってやれよ、あとお前も気を付けとけよ、人数多くはないけどあの3人にガチ恋してた奴らから恨み買ってるから」


「石田……お前そんなに俺の事を思って……」


「お前キッショ!!急にゲイポルノみたいな雰囲気出してくんなや!」


「この雰囲気でゲイポルノとかいう発言が出てくるお前の方がキショいわ!!」


「ねえ、なんで石田はゲイポルノの雰囲気が分かるの?」


「それは……想像に任せるわ」


「「え……??」」


マジで?石田そういう癖あったの?


いや、まぁね?性癖は人それぞれだから良いとは思うよ。


「3人ともお疲れ〜」


「「「お疲れ様でーす」」」


五月の鋭い指摘に石田が口籠るというめちゃくちゃ気まずい場面になった所で委員長が教室に入ってきた。


「もう一般客だいたい帰ったらしいから着替えて良いって」


「了解〜委員長ありがと〜」


時間を見ると4時40分、一般公開終了が5時なのでもう人が殆ど居なくなる頃合いか。


少し汗もかいていたので、早く着替えたいなと思い、俺は教室のドアを開けた。


「あ、樹く〜ん、お疲れっす〜」


「お疲れ〜、じゃねぇんだわ!なんでここ居るんだよ!」


ドアを開けた瞬間、目の前に優葉たちが居た。

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