第91話 文化祭 4
「楽しい時間って、一瞬で過ぎていくんだな、樹」
「仕方ない、時間というものはいつも理不尽に過ぎていくものだ」
俺と樹は執事服に着替え、ベランダで黄昏ていた。
あいつらとチョコバナナ以外にも色々食べて、気付いたらシフト1時間前。
楽しい時間と言うものは一瞬だった。
五月も気になってる女の子との文化祭デートだったので相当楽しかったらしく、最初集まった時はめっちゃ楽しそうにニコニコしてた。
が、着替えた後顔を見たら現実に引き戻されて、あの満面の笑みは緊張でなんとも言えない表情に変わっていた。
「お〜い2人とももっと表情明るくしろよ〜、今から接客だぞ〜?」
すると後ろから、同じ時間にシフトが入っている石田が話しかけてきた。
午後の部は執事2人、メイド2人、呼び込み1人、厨房が5人だ。
石田は呼び込みをやってくれる。
「緊張するものは緊張するんだよ、ま、それは石田も同じだと思うけど」
「俺はそこまで緊張しないよ、メイドと執事やるやつ顔良いから呼び込みしなくても人入ってくるでしょ、午前中も呼び込み殆どなんもやらなかったらしいし」
「午前中そんな人入ったのかよ」
「人が多いに越したことはないけど、接客陣営過重労働で死にそうだったらしい」
俺たちもやばい労働をさせられる事が確定した。
服や髪の毛を被服室でセットして教室に戻る際、五月の後ろに結構な人数の女子が釣られて行ってたので、もうかなりの人数の女子が来ることは確実。
女子も少し化粧したりで普段より可愛くなっている。
その証拠に現在進行形で石田が女子を見てニヤニヤしてる。
「石田、そんな事してるとモテないぞ」
「いいよな!!モテてる奴ってのはよ!あ!そういえば樹、なんでお前冬樹先輩と古賀さんと矢吹さんと一緒に文化祭回ってたんだよ!」
「いや〜、色々ありまして」
「色々ありまして、で済ませられる様な内容じゃねぇよ!周りの目がやば過ぎてマジで刺されるんじゃないかってヒヤヒヤしたよ」
「まぁそれは覚悟してた」
今まで散々怨嗟や殺意の籠った目で見られたし、実害を加えてくる奴が特にいるわけでもないのでもう慣れてしまった。
「樹、その、冬樹先輩たちここ来る?」
「来るって言ってた」
「よっしゃぁ!」
石田が何故か喜んでいる。
あ、そうか、あいつらがくればそれだけで人めっちゃ寄ってくるから自分の仕事放棄して遊べるのか、セコい野郎だ。
「呼び込みという立場を利用すれば話しかけれるかもしれん!」
全然違かった。
普通に話してみたいだけだった。
「それは良いけど、ナンパチックに声かけるのはやめろよ、危険だから」
時間になって3人と別れる時、矢吹が満面の笑みを浮かべてご満悦の様子だった。
そんな上機嫌な矢吹にナンパだと誤解されれば、足が出てくるのは確実。
精巣が見るに耐えない無惨な事になる可能性がある。
石田がそんな事になっては悲しいので忠告しておいた。
「冬樹先輩と仲良いお前が言うから気をつけるけど、なんで?」
「とにかく、危険だから、ゾウ並みに危険」
不思議そうな顔をしているが、矢吹の本性をバラすのは可哀想なので適当に流しておいた。
ちなみのゾウと揶揄したのは、怒ると急に攻撃的になるからだ。
「そういやさ、五月のあの人は来るの?」
あの人というのは五月のデート相手だ。
「来るとは言ってなかったけど多分くる、と言うか、来なかったら泣く」
「俺も来なかったら泣くわ、ほぼ確で来るけど」
あの3人がが来ると行って来ない訳がないし、五月のデート相手も、わざわざ五月をデートに誘うくらいなのだから絶対に来るだろう。
「石田〜、指名とかって出来んだっけ?」
「名前知ってる人なら指名してくると思うけど」
俺が五月のデート相手を接客してしまったら、めちゃめちゃ申し訳ないので聞いてみたが、名前知ってたら指名出来るっぽいので安心だ。
「みんな〜もうそろそろ時間だから教室開けるよ〜」
隣の教室から委員長の声が聞こえた。
厨房組も準備が整ったらしい。
「ま、文化祭だし、楽しみつつ頑張ろうな」
「おう」
そうして、教室のドアが開け放たれた。
後書き
すいません!模試と定期考査が重なって勉強三昧だったので更新できませんでした!
一旦テストラッシュが終わったのでまた定期更新します!
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