第90話 文化祭 3
「3人がこの前人気者は困るって言ってた気持ちが見ぬ沁みて分かったわ」
俺は人が行き交う廊下と、矢吹たちを呼び込む店番の姿を見て、そう呟いた。
店番的には矢吹たちが入ってくれれば、それだけでかなり集客効果があるので入って欲しいところだ。
とは言え、あの3人に直で声をかけるのはハードルが高い。
なら、3人の連れである俺に声を掛ければいいじゃないか!
と言う考えなのだろう。
俺が声を掛けられるという事態に陥っている。
「うちのクラス入っていきませんか〜?」
「少し何か食べてからにしようと思ってるので〜」
を何度も繰り返しているので、いつまで経っても飲食をやっているクラスが多い地帯に近づけない。
「カオスだ……」
飲食をやっているクラスの列に入った時には、俺はもう疲労困憊だった。
「移動したからナンパ目的で着いてくる奴は居なくなったすけどね〜私たちは美少女過ぎるから仕方ないっす」
そう言って、優葉が薄い胸を張った。
そしてその様子を見ている男子の1部が鼻の下を長くして、女子は小動物を見るかの様な目で見ている人と、物凄い怨嗟の籠った目で見ている人に分かれている。
なんでそんな目で見ているのかは分からないが。
「あとさっきからすごい気になるんだけど、矢吹はなんでそんなに周りの女子を睨んでるの?」
「泥棒猫が何匹か樹君をチラチラと見てるから」
「泥棒猫て」
目を細めて周りを見回してる矢吹の方が猫っぽい。
あと警戒心強いし。
「そんな目つきしてたらキャラ崩壊しちゃうかもしれないよ?」
矢吹がツン100%だった時、学校では猫を被ってるみたいな事を言っていた気がする。
「今は樹君がいるし、周りの男子なんてどうでもいいじゃん?」
「お、おう…」
矢吹はあんまりこういう事を言ってこないので少し気恥ずかしい。
そしてこういう人の目が沢山ある場所で言われると尚更気恥ずかしい。
「そういえば、樹君何食べるか決めた?」
矢吹も言ったあと少し恥ずかしくなったのか露骨に話題を逸らしてきた。
俺も気恥ずかしいので乗るとしよう。
「俺はチョコバナナかな」
他にも沢山メニューはあったが、手を汚したく無いのでチョコバナナにする事にした。
汚したなら手を洗えば良い話だが、トイレが混んでて手なんて洗えたものではない。
「ならあーしもチョコバナナにしようかなぁ〜」
「私も手を汚したくないからチョコバナナっす」
「私も〜」
そしてみんなチョコバナナを買い、休憩室に入った。
「や〜っと座れるっす〜」
休憩室が廊下の1番奥の教室だったので気付かれなかったのか、意外と席が空いていた。
それ故に、俺たちより前に座っていた人たちにめっちゃ見られたのだが。
「ん〜美味しいわね!」
「そう、だな」
そう言って冬樹がチョコバナナを食べ始めたのだが、食べ方がちょっといかがわしい。
やりたい事は分かる、チョコを溶かして先に食べたいのだろう。
だけど、口の中にバナナを入れて舌で舐めるのはダメだ。
椅子に座って胸が押し出されている状態の冬樹がやると尚更ダメだ。
現に今休憩室に入ってきた男子が片っ端から前屈みになっている。
もれなく俺も座ったまま前屈みに少しなった。
「樹君、興奮してるんっすか?」
「は???」
「樹君、何を見たの??」
突然横に座っていた優葉がそんな事を言ってきた。
それに反応して矢吹が周りを鋭い目つきで見回した。
「どことは言わないっすけど、大きくなってるからっす……」
優葉が俺の股間をチラ見したあと、顔を逸らした。
確かにちょっとズボンが大きくなってる気もする。
だけど、いつも見ている俺が少し大きくなってるかな?程度だ。
普通に見ても気づくほどではない。
「優葉さ、まさかだけどいつも見てた?」
「いつもではないっす……」
優葉がむっつりスケベだと言うことが発覚した瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます