第83話 買い出し3
「ちょっ、押すなよ!」
「それは樹君が押すからでしょ」
俺たちは商品棚の陰から冬樹を見守っていた。
4人一気に首を出そうとしてるのでわちゃわちゃしてしまっている。
優葉と矢吹が五月から少し距離を置いている分、俺の方に詰めてきて苦しい。
そんな事をやってわーわー騒いでると、冬樹と先輩が段々俺たちの方に近づいてきた。
そして俺たちは急いで首を引っ込めた。
「じゃあ次は折り畳み式の椅子かしら」
スマホを見て、隣の先輩に話している。
そして相変わらず、何かにつけて冬樹にボディータッチしようとしている。
それを冬樹が自然に避けている。
「あれ大丈夫かぁ?」
「ダメそうだったら、あーしが股間殴り潰しに行くよ」
「それはダメ、矢吹本当に殴り潰しちゃいそうだから」
俺が矢吹の下着を見てしまった時に、飛び出してきたあのアッパーカットの威力は忘れていない。
あれが股間に飛んできたら、間違いなく袋から中身が出てきてしまう。
「そういや、冬樹のクラスは何をするか聞いてる?」
「冬樹ちゃんのクラスお化け屋敷やるらしいっすよ、冬樹ちゃんは受付やるらしいっす」
冬樹のクラス、人間関係に色々壁があるらしいので休憩室とかにするのかなと思っていたが、お化け屋敷にしたのか。
少し意外だ。
そんな事を考えていると、冬樹と先輩はカゴになにか物を大量に入れてお会計を始めた。
結構な量買っている。
そして会計を終えたあと、2人はゴニョゴニョと話している。
すると何を話したのか、冬樹が荷物を全部持ち、先輩は走ってどこかに言ってしまった。
「はぁ…」
俺は冬樹に何もなくて安心したが、冬樹はめちゃめちゃストレスを感じていたらしい。
先輩が完全に視界から消えると、冬樹は疲れた顔で盛大なため息を吐いた。
そして、両手に大量の荷物を抱えてヨタヨタと俺たちのいるお店の出口付近に向かってきた。
「女の子に荷物全部持たせてどっか行くなんて許せないっす!」
すると突然優葉がそう言って、商品棚の裏から飛び出していってしまった。
「あれ?優葉ちゃん?なんでここに居るの?」
「矢吹ちゃんも樹君も五月さんも居るっす」
「え!?なんでみんないるの!?」
優葉が俺たちが隠れているのを言ってしまった。
見守り終わったから、言ってもらっても構わないんだけど。
「お久しぶりです、冬樹さん」
「五月君ね、お久しぶり」
冬樹と五月が会うのは、夏休み明け初日の登校日ぶりだ。
そう、五月があのとんでもノーンデリ発言をかましたあの日以来だ。
「もしかして、樹君も買い出しだった?」
「うん、俺も買い出し、五月と一緒に、優葉と矢吹は早く学校が終わったから来たんだって」
「でさ、あの先輩、冬樹が買い出しのペアになった人?」
「そうよ、でも、正直私は買い物どころじゃなかったわよ、あの人すごい身体触ってこようとするし、他にも色々問題あるのよね……」
「他にも?」
「今、2年の間で結構モテてるのよ、それで調子着いて私に粘着してきてるの」
正面から先輩の顔を見る機会はなかったが、どうやらイケメンらしい。
遠目から見てもスタイルは良いので、モテるのは納得だ。
「へぇ〜、じゃあさっきの先輩どこ行ったの?」
「なんか友達と遊んでくるって言ってどっか行っちゃった」
いくら冬樹と仲良くなりたいと言ったって、友人との遊びという誘惑には負けたらしい。
「それで冬樹に荷物全部任せて行っちゃったの?」
「うん」
「あーしやっぱりあいつの股間殴り潰してくる」
「私足折ってくるっす」
「あ、ちょ!やめて!物騒な事言って走ろうとしないで!!」
暴走し始めようとする優葉と矢吹を俺が捕まえ、暴走を一時止めた。
「やっぱ4人は仲良いな、ハハハハハ」
「五月は笑ってねぇで助けろよ!こいつら怪力なんだって!」
「ハハハハハ」
「助けろよ!!」
そうして矢吹と優葉が暴走を諦めるまで、俺は2人の腕を必死で握った。
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