第82話 買い出し2 いや、気まずっ

「五月〜最初ゲーセンでも行く?」


「メダルゲームでもしようか」


俺たちは今あまりお金を持ってないので、そこまでお金をかけずに長時間遊べるメダルゲームをする事にした。


「「メダルゲーム…」」


矢吹と優葉の2人は無言で火花を散らしていたが、俺たちがメダゲーをやると言い始めた途端キラキラした目をして俺たちの後を追ってきた。


「「「「……………」」」」


俺、五月、優葉、矢吹という異色のメンツ。


だーれも言葉を発さない。


聞こえるのはショッピングセンターに流れる音楽だけ。


とんでもなく気まずい。


「2人と話すのは、半年ぶりくらいかな?」


すると誰1人として言葉を発さない凍った空気の中、五月が矢吹と優葉にそう聞いた。


多分、五月はRITをたまたま一緒にやった時の事を言っているのだろう。


「え、私、五月さんと話した事あったんっすか?」


「あーしたち殆ど初対面じゃないの?」


悲報、優葉と矢吹、何も覚えてなかった。


半年近く前の事なので覚えていなくても仕方ない気もするが、覚えていて欲しかったな。


「あれだよ、冬樹が来れなかった時に俺が別な人呼んだ事あったじゃん?その時呼んだあの人」


「う〜ん…………あー!!あの時の人っすか!!」


「あ、あの人の事か」


2人とも思い出したみたいだ。


ハッとした顔をして五月の方を向いた。


「あの時はまだボイチェン使ってたから、こうやって話すのは初めてっすね!よろしくっす!」


「あーしも初めまして」


「ああ、こちらこそよろしく」


(コミュ力高いってすげぇ……)


お互いの事が多少分かったところで、俺たちはエスカレーターに乗りゲーセンのある階へと降りていた。


最上階からの下りエスカレーターという事もある見晴らしがとても良かったのだが、見晴らしが良い故に、俺は気になる物を発見してしまった。


「あれ、冬樹?しかも男と居ない?」


「本当だ、あれ冬樹さんだね」


俺が見つけたのは、1階のキラキラ光る綺麗な銀髪を持った少女。


紛れもなく冬樹だ。


そしてその隣には先輩と思わしき男子がいてなにか話している。


「冬樹ちゃんも買い出しなんすかね?」


「あーそういう事か」


文化祭は学校の行事なので、冬樹が買い出しに駆り出されていても何もおかしくはない。


「………でも、なんか様子変じゃね?」


見るものが無かったので、ぼーっと冬樹と先輩を見ていたのだが、明らかに先輩が冬樹にボディータッチしようとしている。


そして冬樹がさりげなくそれを避けている。


そんな状況だ。


「ちょっと不安だから、少し近く行っても良い?」


「あーしは全然いいよ」


「私も〜」


「俺も良いよ」


冬樹は矢吹、優葉みたいな怪力を持ってないので、少し不安になってしまった。


ショッピングセンターの中でなにかやらかす事はないと思っているが、2人がいるのは全く人がいない服屋。


向こうが犯罪覚悟で更衣室に連れ込まれたら終わる。


これを3人に言ったら心配し過ぎだと言われるかもしれない。


だが俺は学校で冬樹が告白を片っ端から振って、男子を明らかに嫌ってる態度を取っているのを知っている。


そんな事をやっていれば、1部のやつから逆恨みされていてもおかしくはない。


(頼むから何も起きないでくれよ〜)


俺はそう心で願いながら階に降りて行った。

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