第81話 買い出し1

「やっぱ昼間はあちーな、五月」


「俺は部活で慣れてっけど、樹はインドアだからね」


俺と五月はガラガラのショッピングセンターの屋上駐車場から下を見下ろしながら、そう話していた。


今は金曜日の午後1時。


ゴリゴリ学校の時間だ。


なのに何故俺たちがここにいるのか、それは学校をバックたから………


と言うわけではない。


文化祭の買い出しに来ているのだ。


「神様ありがとう」


実は今日クラス買い出しを決めていて、みんな買い出しに行きたがっていたのでいつまで経っても決まらなかった。


なので、ジャン勝ちが買い出しに行くという事になったのだが、神様は俺たちが執事に選ばれ嘆いていたのを見て慈悲をかけてくれたのだろう。


奇跡的に俺と五月がジャンケン勝ち買い出しに来れたので、今、空を見て神様にお礼を言っているのだ。


「よし五月、遊んでから、買うもの買って帰るか」


そう、買い出しの醍醐味と言ったらこれだ。


平日の真っ昼間に先生の目から逃れて遊ぶ。


みんなが買い出しに行きたがっていたのも、これのせいだ。


いつも学校がある時間帯に遊べるので楽しさ倍増だし、誰かに会う心配もないので最高だ。


「じゃあ早速ゲーセンに………」


「やっと追いついたっすよ、樹くん」


「なんで屋上になんか行くのよ」


「なんで2人がここに居んの!?!?」


俺と五月ウッキウキでゲーセンに向かおうとすると、何処からともなく現れた優葉と矢吹に呼び止められた。


「なんで矢吹さんと古賀さんがここに……?」


「え?優葉と矢吹、まさか学校サボったの……???」


俺たちの頭は大混乱だ。


俺の記憶に間違いがなければ今朝、優葉と矢吹は制服を着て学校に行った筈だった。


今は本来、学校で授業を受けてるはずの時間だ。


なのに何故、2人がここに居るのか。


恐怖でしかない。


「話すと長くなるんすけど、私の所も、雫ちゃんの所も、本当は4、5、6時間目に講演会があったんっすよ。でも高速道路で大渋滞に巻き込まれたらしくて講演する人が今日講演会するのが難しい!ってなったんすよね。それで自宅学習って事で3時間目終わったら下校になったので樹君に会いにきたんっす!」


あれか、矢吹の高校も優葉の高校も講演やる人が同じ方面から来てて、どっちも渋滞で来れなくなったのか。


運が良すぎるだろ。


「樹、愛されてる証拠じゃん」


俺がマジかよ…と絶句していると、五月がほのぼのとした事を言っている。


ただ、俺にはもう1つ疑問があった。


「なんで俺がここのショッピングセンターの屋上にいるって分かったの?」


俺は今日、2人に文化史の今日買い出し行くなんて一言も言っていない。


それなのに何故、俺の居場所を特定出来たのか。


「樹君、これを見て欲しいっす」


すると、優葉が俺にスマホ画面を向けてきた。


画面には地図が表記されており、俺たちのいるショッピングセンターに2つ矢印があった。


そして俺がスマホの向きを変えると、その矢印も少し遅れて向きをかえた。


「GPSじゃないの!?これ!?」


「そうっす!」


元気よく優葉がそう答えた。


俺は急いでスマホのアプリをチェックすると、1つだけ入れた記憶のないGPSアプリが入っていた。


それを恐る恐る開くと、優葉と同じ画面が開かれ、矢印の上に「自分」「可愛い可愛い優葉ちゃん」と言う文字が表示されている。


「こんなアプリいつ入れたの!?」


「樹君が寝てる間っすね!」


「どうやってスマホ開いたの!?」


「パスワード覚えてる!というか、将来妻になる予定なんっすし管理してても問題ないっすよね!」


「予定決まってないし、問題しかねぇよ!」


「…………」


そう突っ込んだのに返事がない。


不思議に思い2人を見ると、めちゃめちゃ睨みあっていた。


多分さっきの、将来妻になる予定と言う発言が気に入らなかったのだろう。


矢吹の目がマジになっている。


「まだ予定よね?」


「そうっすよ?予定っす」


「「ハハハハハ」」


「樹、女子って、怖いな」


「同感」


その2人を見て、小言を漏らす男2人だった。

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