第80話 内容決め
「えー、今日の総合は文化祭の内容について話し合います、自由に動いて良いんで話し合ってくださ〜い」
5時間目の授業を終えて、俺が机に突っ伏して半分寝ている状態の時に学級委員長がそう言った。
「そういや、もう来月文化祭か」
同波高校は、親睦が深まったあとに行事やった方が団結力が出来て進みが良いからという理由で夏休み明けに行事が詰まっている。
その分、前期が全く行事なくて色々と終わっているのだが、夏休みから冬休みまでは楽だ。
「樹は夏休み明けでも寝不足か、それもそうか、夜遅くまで冬ーー」
「ちげぇよ、ただお腹いっぱいになって眠くなっただけだ」
俺が眠そうにしていると、後ろから五月が刺してきた。
少し眠そうにしていただけなのに、憶測し過ぎだろう。
「先輩曰く、この文化祭で色んなカップル爆誕するらしいよ」
俺がまだ眠そうにしていると、五月がそんな事を言ってきた。
「去年カオスだったらしいよ、好きな人が出来たのに他校生に取られて発狂してる人とか、全くモテてなかったのに逆ナンされた事を機に急に覚醒してヤリチン化した人とか居たんだって」
「うわぁ……それはカオスだわ」
確かに学校の思惑通り親睦が深まり、好きな人とかが出来たタイミングで他校から刺客が来るんだもんな。
好きな人がいる人にとっては大ピンチなのかもしれない。
「この話を聞いてもまだ落ち着いてるって事は冬樹さんを取られない自信があると?」
「取られるも何も付き合ってないからどうも思わん」
口ではこう言っているが、正直少し怖い気持ちもある。
ないと信じているが、冬樹がナンパされてそれに靡いてしまった場合、俺と冬樹は今後関わる事が出来なくなる。
当然、ゲームも実質同棲のルームシェアもだ。
そうなったら、普通に悲しくて泣く。
「ま、冬樹さんなら何処の馬の骨かも分からない人に靡く事ないだろうし安心か」
「俺もあいつが靡く事はほぼないと思ってる」
「はーい、メイド喫茶やりたーい」
俺たちが文化祭の内容ではなくそこで起きる恋愛沙汰について話し合っていると、クラスの女子の1人がそう言った。
「男子は全員裏方?」
その話を聞いた、五月が案を出した女子にそう聞いた。
「いや、男子も何人か執事の服着て出てよ」
「メイドなんだし、俺は女子だけで良いと思うんですよね?俺は」
「じゃあ、執事・メイド喫茶にする?」
「まじかぁ」
五月がささやかに抵抗するも、それは虚しく抑えられた。
「じゃあ多数決とりまーす、手上げてねー」
射的:5人 唐揚げ:6人 ポテト:4人 メイド喫茶:25人!
メイド服を着てみたい女子と、好きな人のメイド姿を見たい男子が挙手した結果だった。
ちなみに俺と五月は唐揚げにした。
1番店番が少なくて済むと思ったからだ。
「じゃあメイド喫茶で決定で〜」
数人の男子の鼻の下が伸びた。
いくらなんでもあからさま過ぎる。
女子が少し引いてるぞ。
「じゃあ、誰がメイドと執事やるのかだけ決めたいのでやりたい人挙手して〜」
「私メイドやりた〜い!」
「私も〜」
「俺たち誰が執事やるの?」
「樹やったら?」
「五月こそやった方が女子に喜ばれるぞ」
「いや、それはないね、それなら樹がーーー」
「じゃあ女子これで決まりね〜、男子早く6、7人決めて」
俺たちが擦り付けあってる間に、女子のメイドが全て決まってしまったらしい。
男子の間で緊迫した空気が張り詰める。
当然だ。
女子のメイド姿を見たいとはいえ、自分がやるのは話が違う。
執事になってしまったら、シフトにえげつない時間を取られるので遊ぶ時間がかなり減ってしまう。
それだけは、避けたい。
「ジャンケンで決めよう」
ずーっと睨み合ってて埒が開かないと思ったのか、女子の1人がそう声を上げた。
「仕方ない、ジャンケンで決めるか」
ジャンケンが1番平等だし、このままいても時間が過ぎ去っていくだけだ。
ならここはスパッとジャンケンで決めてしまいたい。
渋々男子が立ち上がって、円になり手を出した。
「最初はグー、ジャンケンぽい!」
綺麗にグーとパーで分かれた。
「うわぁ!負けたぁぁ!」
「大丈夫五月、俺もだ」
そして見事に俺と五月はグーを出して負けて、第二ラウンドに突入した。
選ばれるのは7人まで、そしてさっき負けたのは10人。
つまり、3人だけがこの第二ラウンドから生還出来るという事だ。
「五月、死ぬなら一緒に死のうな、グーを出してくれ」
「分かったぜ、樹」
「最初はグージャンケンーー」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ブッ、マジすか!?樹くん文化祭メイド喫茶で執事!?」
「100%面白い、シフト決まったら教えて」
「絶対面白いわね」
見事にジャンケンに負け、夕飯を食べながら3人に虐められていた。
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