第79話 夏休み明け

「このまま家で寝てたいんだけど」


「起きてないの樹くんだけっすよ、起きてください」


登校日当日、俺は布団にへばりついて学校に行くのを拒否していた。


理由は単純、めんどくさいのだ。


矢吹たちはご飯作ったりするため朝は比較的早かったので、生活リズムはあまり崩れていない。


だが、俺は起きるのは10時過ぎだし、寝るのは遅いし。


生活リズムは完全崩壊だ。


そんな奴がいきなり朝早く起こされたら起きれる訳がない。


それはそれとして、俺にはもう1つ学校に行きたくない理由がある。


今更だが、大会インタビューとかで女装姿を晒されたりしたからだ。


学校にもRITをやってる奴は沢山いる。


そしてあの大会を目にした奴も多いだろう。


普段学校で静かにしてるとはいえ、調子に乗って出先であんな暴走をすれば100%ネタにされて弄り倒される。


「そろそろ本当に間に合わないなっちゃうわよ?」


俺がいつまで経っても起きてこないのに見かねた冬樹が部屋に入ってきた。


「分かってるけど樹くん、ミノムシみたいにベッドにくっついてるんっすよ」


「ならこうすれば良いのよ」


すると、ピピッとエアコンをつける音がし2人が部屋から出ていった。


「あと5分経ったら起きよう……」


そう言って目を瞑ったが、寝れない。


それもそのはず部屋が異様なまでに暑いのだ。


エアコンを見ると暖房が稼働している時に光るボタンが光っている。


「リモコン………」


「このままこの部屋いると蒸し焼きになるから出てきたほうがいいっすよ〜」


部屋の前から優葉が俺を呼ぶ声が聞こえた。


「分かった、起きるよ」


俺はだんだん暑くなる部屋から脱出するために、ベッドから渋々起き上がった。


「汗が止まらないわね」


学校の最寄り駅で電車を降りて、学校へ歩いていると胸元をパタパタさせている冬樹がそう言った。


「そろそろ夏は終わりだつーの……」


冬樹を見つつ、そう返事をしようとして俺は口の動きを止めた。


(これが制服でしか起きないイベント、透けブラというやつか)


そう、冬樹の胸が汗で透けていたのだ。


家の中ではしょっちゅう目にしてるとはいえ、それを公共の場で見ると背徳感が半端じゃない。


「樹君の変態」


俺が冬樹の透けた胸を見ていた事に気付いたのだろう、胸を手で隠した。


無論、手で隠せる大きさではないので普通に見えているが。


「はい、これで隠しとけ」


「あ、ありがとう」


このまま放置して冬樹の胸を堪能しても良かったが、現実はそうもいかない。


俺以外にも冬樹の透けブラに気づいて、冬樹の胸を見ている先輩が数人いるのだ。


なので、冬樹の名誉のためにも俺は汗拭き用のタオルを貸した。


「よお!い、つ、き!」


後ろから誰かに肩を掴まれ振り向くと、そこにはニカっと笑った五月がいた。


「おお!五月!久々だな、夏休みどうだった?」


「ほとんど部活三昧だったな、そういう樹はどうだった?」


そういえば五月は部活やってるのか。


通りで昼間に外でこいつと会わない訳だ。


「存分に楽しめたかな」


「なら良かったじゃん、でさ、あれは結局大丈夫だったのか?」


「あれだよ、相手冬樹さんだろ?」


「あれ?」


「あれはあれだよ」


五月はあれだよ言って、チラチラ冬樹の方を見つつ俺に聞いてくるが、さっぱりなんのことだが分からない。


「はっきり言ってくれねぇと分かんねえよ!」


「このまえ薬局でピル買ってたし、童貞卒業したとかなんとか言ってただろ!」


「「あ」」


俺と冬樹の声がハモった。


そして近くにいたやつのほぼ全員が「え???」と言いたげな、目で俺を見てくる。


「そうね、私も優葉ちゃんも矢吹ちゃんも大丈夫だったわよ」


「何言ってんの!?」


「え?樹お前4Pしたの?あの人たちと?」


嘘だろ?とドン引きした目で五月が俺を見てくる。


事実なので俺は何も言うことが出来ず黙り込んでしまった。


「したわね、もう獣みたいだったわよ」


「冬樹は口閉めて!!」


「でも下の口はー」


「五月も五月で口開くな!本人の目の前でそんなこと言うな!」


後期の学校生活は最悪な暴露から始まった。


後書き


今更気づいたんですけど、今まで投稿してた日、投稿予定日と1日ずれてましたね。


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