第78話 強迫からのデレ
「楽しかったな〜」
「大会は優勝できたし、遊び回れたし、最高だったわね」
「あーし眠いから寝る……」
「私もっす………」
俺たちは帰りの新幹線でそんな事を話していた。
昨日はあの後ずーっと海上アスレで遊んで午後まで過ごした。
その後は中々お高いお店でご飯を食べホテルに帰って爆睡。
そして今に至る。
「2人が寝るなら俺も寝ようかな〜」
今はまだ午前8時、休みの日に起きる時間としては十分早いだろう。
それに加えて昨日の疲れもあってか、矢吹と優葉が寝てしまった。
冬樹も目を擦っている。
まぁ、冬樹に関しては1度だけ12時くらいに起きてスマホで何やら作業をやっていたから、寝不足もあるだろうけど。
俺もなんだかんだで言って疲れているので半分寝そうだ。
「スースー……」
正面から可愛い寝息が聞こえてきた。
「もう寝たのかよ」
寝息の正体はさっきまで起きていたはずの冬樹だ。
相当疲れてたらしい、ものの数分で深い眠りについてしまっている。
「なんかかけるか」
新幹線の音が気になって眠れなかったので安眠用の音楽でも聴いて寝ようかと、スマホを開いた。
画面を見るとオンスタに通知のマークがついていた。
そして何気なくオンスタを開き、投稿を見ていた。
俺たちの食べたご飯の写真や、海の写真。
ちなみに俺がフォローしているのは矢吹たち3人だけなのでそれ以外の投稿は一切流れてこない。
俺が一緒に写っているもので無ければ何投稿しても大丈夫だと言っておいたのでかなりの量の写真や動画が投稿されている。
ヤバい投稿がある可能性もあったが、水着姿などは投稿されてなかったので少し安心した。
よくよく考えれば、3人とも学校の男子があまり好きではない様子だったので上げる心配なかったが。
「………あ」
俺は優葉の1枚の投稿を見て、手の動きを止めた。
誰かの背中に抱きついて顔を押し付けている俺。
潰れて中々酷い顔をしている。
顔は画面外にあるので見えないが、着ている服的に矢吹だろう。
そしてその投稿には謎にいいねが3000近く付いている。
やられた、そう分かった時には時すでに遅し。
「優葉ぁ………」
俺はよだれを垂らしながら幸せそうな顔をしている優葉を見る。
確かに俺と誰かが一緒に写っているわけではない。
言った事はちゃんと守っていた。
「だけどさぁ……優葉……」
モザ無しで俺の寝顔はダメだろ……
こうして俺の寝顔(潰れてて酷い顔のやつ)全世界に公開された。
(このままやられたままなのも癪じゃないか?仕返ししてやりたいと思わないかい?)
俺の心の悪魔が囁いた。
悪「3人ともぐっすりと寝ている、起きているのはお前だけ、つまり、俺が今優葉に何をしてもバレることはない」
すると今度は心の天使が囁いた。
天「ダメよ樹くん!女の子の寝顔を勝手に撮って投稿してしまうなんて!優葉ちゃんが可哀想よ!」
悪「樹、やられたんだからやり返しても何も問題はないぞ?」
天「でも、優葉ちゃんが!」
悪「ええい!正論は求めてなぁい!!」
天「あれぇ〜〜」
Winner 悪魔
「やり返してやろうじゃぁないか」
俺はニヤニヤしながら優葉の顔にカメラを向けた。
「カシャッ」
そして俺はそれを投稿しようと完了ボタンに指伸ばしたところで誰かに手を掴まれた。
「樹君」
「ヒッ、優葉!」
そう、掴んだのはさっきまで爆睡していたはずの優葉だった。
口は笑っているが目の奥が笑っていない。
「樹君がそれを投稿したら、私もこれを投稿するっすよ」
そして優葉が俺に見せてきたのは1枚の写真。
俺が優葉の身体を抱き枕の様にホールドして、優葉の後頭部に口を押し付けている姿だ。
「私の寝顔と、樹君の社会的立場、どっちが大事っすか?」
「はい、すみません、今の写真今すぐ削除させてもらいます」
「分かったならよろしいっす」
俺は真顔でそう答え、すぐにさっきの写真を消した。
削除して、そのまま真顔で優葉を見ると優葉が顔を近づけてきて囁いてきた。
「私の寝顔見ていいのは樹くんだけっすよ、それ以外の人に見せたらダメっす」
「っ!………」
それだけ言うと優葉はまた目をつぶって寝始めた。
そしてまた静寂が訪れる。
(もう俺も寝るか)
そう思い目を閉じたが、さっきの優葉の顔と言葉が目と耳に焼き付いてしまった寝れなかった。
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