第75話 ただただ怖い
「え〜、肝試しとか廃墟探索行きたい〜」
「私はごめんっすね」
「あーしもごめんよ、またあんな思いしたくないわ」
「俺も無理」
ホテルに戻って以降、冬樹がずーっと肝試しに行きたいと駄々を捏ねている。
「じゃあ私1人で行く!!」
「それはダメでしょ、危ないし」
道路には人がまだ沢山居るが、それは祭りがあったからというだけであって時間は夜遅い。
特に冬樹とかだと、真面目に痴漢とかされないか心配だ。
「じゃー誰かついてきてよ」
「「「………………」」」
優葉と矢吹は人魂を見ちゃったので拒否。
俺は見てないけど怖いから拒否。
「行かないという選択肢は無いの?」
「ない」
「なんで?」
「東京に廃墟なんてないから」
「う〜ん、確かにないな」
東京も過疎っている所は過疎っているが、廃墟があるほど過疎っている所は滅多にない。
少なくとも俺の知る限りでは廃墟などない。
「ちなみに冬樹はどこ行きたいの?」
「ホテルセリーヌっていう廃ラブホ」
「ほ〜……なんか聞いたことあるぞ、そこ」
凄いうっすらと心霊番組かなにかで見た記憶がある。
そうだ!俺は嫌がって逃げようとしたのに、母である春風に強制的に見させられられたんだ!!
はっきり思い出したぞ!
マニアの中でめちゃめちゃ怖いって有名な所じゃなねぇか!
「絶ッッッ対にやだ、何があっても行かん」
「…………一緒に来てくれたらセックスしてもいいわよ」
「俺をなんだと思ってるの!?」
「性欲の塊」
「酷くね!?」
「冗談よ、でも、どうしても行きたいの、私友達居なかったから廃墟に肝試しに行くって事が出来なくてね……」
「うっ」
確かに前、冬樹は友達が居なかったと言っていたし、俺が冬樹のクラスに行った時も女子と話している姿は一切無かった。
「だからね、樹君たちが初めてなのよ」
目をうるうるさせながら冬樹がそう言う。
「ダメ?」
「わ…………かった、ただ俺を前にするなよ」
完全に泣き落としされた。
無理だ、慣れているとはいえ冬樹はとんでもない美少女、耐えるのは無理だ。
何度も言うがこれに耐えられる男がいるのであれば、そいつは人の心を失っていると思う。
「え!?樹君行くんっすか!?」
「ウソでしょ……」
矢吹と優葉が俺が行くと決意した事に驚愕している。
「と言うわけで、私と樹君2人きりで廃墟デート行ってくるから2人は大人しく部屋で待ってね?」
冬樹が少し言葉に棘を混ぜた。
「あぁもう!ならあーしも行く!」
「なら私も行くっす!」
そして、その棘が見事2人に刺さってしまった様だ。
「マジで無理しなくていいぞ、2人とも」
俺が言えた事ではないが被害者は出来る限り減らしたい方がいい。
「でも、冬樹ちゃんと樹君が行くなら負けてらんないっす!」
「皆んなが行くならあーしも負けてらんない」
2人は謎の対抗心を燃やしていた。
「「「やってやるぞー!!!」」」
恐怖心を掻き消すために3人はテンションぶち上げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ブォォォン………」
最寄りのバス停に降り、バスが走り去って行った。
もう後戻りは出来ない。
「あーし帰っていい?」
「はっや!!」
ついた瞬間に矢吹が弱腰になった。
ちなみに俺ももう既に、足がガックガクだ。
「私も帰りたいっすよぉ」
「カァカァ!!!」
「「「ギャァァァ!!!」」」
俺は今後の成り行きが途轍もなく不安になった。
後書き
ちなみにこのホテルセリーヌっていう廃墟、実在します。
結構ガチ目に怖そうな場所です。
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