第74話 知らない方が幸せだった
「………今から何する?」
俺が花火の余韻に浸っていると、矢吹がそう話しかけてきた。
まだ9時になったくらいなので、祭りから帰るには少し早い気もする。
屋台とかも普通にやっているのでここでのんびりとするのもありだ。
そんな事を考えながら、俺達は先ほど来た道を戻っていた。
「そうっすね〜もう少し遊びたいっす」
「かと言って、もうお腹いっぱいだし……」
さて、何をしようか。
「あ、肝試し」
矢吹がボソッとそう言った。
「ここ地蔵まみれの裏参道と結構大きな廃墟あるらしいし、ちょうど良いかもしれないわね」
「え、じゃあ俺たちは通ってるこの道何?これが旧裏参道じゃないの?」
「確かに、この道なんっすかね?裏参道の場所変えたんっすかね?」
「でもGoogleマップには道ちゃんと乗ってたよね?」
「ちょっと調べてみるっす」
俺たちは道の途中で立ち止まり、3人で優葉のスマホを覗き込んだ。
「………旧墓地」
「「「…………」」」
「ここ最近まで墓地だったぽいっすね、ここ。管理人の目があまり行き届かないのと山奥過ぎて動物とかに荒らされる様になったから2ヶ月前に別の場所に移転してるっす」
「じゃああの空間、元々墓地があったけどそれを取り壊して出来た空間って事?それでここは墓地に続く道だったって事?」
「なぁ、俺逃げていい?」
俺はその話を聞いて震え上がっていた。
ホラゲーを射的で当てた時も言ったが、ホラーは無理だ、本当に無理だ。
霊を化け物扱いするつもりはないよ?でも怖いもんは怖い。
「ダメ、逃さない」
矢吹に肩がっちり掴まれた。
「え、結構本気で俺お化け無理」
「人が怖がってる姿を見るのが面白いんじゃない」
そうだった、今までのしおらしさで完全に忘れいていた。
矢吹の根は超ドSの暴君だった。
そんな人の前でお化けが無理だとか言ったら、怖い所に連れて行かれるに決まっている。
「樹君、安心して、お化けは非科学的よ、地球にあるものは全て原子から出来ているから〜〜〜」
「それで安心できてたらこんな怖がってない!!」
冬樹の言ってる事はごもっともだ。
でも、それ安心出来たら今こんなに恐怖を感じてないんだよ。
「ポッ」
「ん?」
後ろで何かの火がついたかの様な音がした。
「えっ………」
矢吹が後ろを向いて固まった。
「え?なに?」
「大丈夫よ、人魂っていうのは人骨から出たリンが湿度の高い空気に触れて一瞬引火した〜〜」
「は!?人魂!?」
「驚いてる暇があったら、もう!いいから前走って!樹君!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「………本当に出るとは思ってなかったっす………」
「あーしもそう思ってたけど……」
俺たちは神社の裏まで走って戻ってきた。
矢吹と優葉は恐怖にげっそりしていて、俺は何も言葉を発さず静かにカタカタと震えている。
「なんで3人ともそんなに怖がってるの?」
「「「普通怖いでしょ!!あれは!!」」」
「そうかしら〜?」
肝が据わっている。
走っている時も人魂じゃなくて金魚が大丈夫か気にしてるレベルだ。
冬樹に金魚を持たせておいて本当に良かった。
「よし!じゃあこのままの勢いで裏参道はレッツ〜」
「「「ゴーしねぇよ!!!」」」
そして少し早くホテルに戻ったのだった。
後書き
こういうの書いてると寄ってくるのかもしれない。
なんかこれ書いてる時家がめっちゃパキパキなってて怖かった。
ちなみに筆者も樹と同じくお化け信じてるので、パキパキ音にビクビクしながら書いてます^_^
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます