第70話 勝者

「いっけぇぇ!」


それと同時に足元で爆発が起きた。


「これは…どっちが勝ったんだ?」


殆ど同時にやられてしまったため、どちらもやられた後のリザルト画面になっていた。


ダメージやらキル数やらのリザルトが表示されていく間に俺はヘッドホンを外して、実況がどちらが先にやられたのか聞こうとした。


「これはどちらが勝者なのでしょうか!?」


しかし、実況もよく分かってないらしい。


それを聞いて、俺が画面に向き合うと最後の回復量というリザルト項目が流れた。


「チーム順位 #1」


画面にはそう表示されている。


「1位はチームbeautiful girlだぁぁぁぁぁ〜!!」


実況がそう大声で叫だ。


「よっしゃぁァァァぁ!!」


俺はそう叫んで拳を振り上げた。


半分運任せではあったがようやく正式な場でdolphin達に勝てたという事実と、夏休みの努力の成果が実ったという事実が、言いようのない嬉しさを俺に与えた。


「樹君なら最後決めてくれると思ってたわよ!!!」


「「やったね!樹君!!」」


俺が1人で拳を振り上げて喜んでいると、後ろから3人が肩に捕まってきた。


「矢吹も優葉も冬樹もほんとありがとう!3人のお陰だよ!」


「話してる途中で申し訳無いのですが、優勝者インタビューがあるので前に来て頂いてもよろしいでしょうか」


「あ、はい!分かりました!」


俺たちが抱き合って優勝を喜んでいると、スタッフが近づいてきて、移動するように促してきたので俺たちは表彰台に移動した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「3人ともほんとにありがとう、ここまで一緒にRITやってくれて」


「それはこっちのセリフっすよ!」


「それに優勝の立役者は樹君じゃない!」


「それ以前にあーしはゲームする相手自体が居なかったから、一緒にやってくれてる時点で感謝だったけどね、初めはこうなるなんて思わなかったけど」


インタビューが終わり、誰も居ない控え室で俺たちは互いに感謝し合っていた。


3人には感謝が尽きない。


ここまでこれたのも、3人の支えと協力があったからこそだ。


「いや〜まさかあの状況から負かされるとは思ってもなかったよ」


「あ、dolphinさん」


2位のdolphinチームが控え室に入ってきた。


「あんな大きな大会の決勝で、博打みたいな戦いかたしてくると思ってなかったから油断していたよ」


「でも、今度やる時は負けないからね」


「悔しいから、今度8人で一緒にRITやるぞ!分かったな樹!」


それだけ言うと、dolphin達は控え室を出て行った。


「相変わらず、dolphinさん達はdolphinさん達って感じっすね」


「よし、じゃあ俺たちも外出るか」


「「そうね」」


会場を出て空を見ると、空がいつも以上に明るく見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る