第67話 矢吹の涙
「それで、気持ち変えるためにここから離れよう!ってなって東京に来たわけ」
「そんな事が…………」
矢吹が会った当初、かなりの男嫌いだったのも、珍しい一人称だったのも全部叔父が原因だったのか……
「ま、結局気持切り替えらんなかったんだけどね」
矢吹は悲痛な表情を浮かべながら笑った。
「信頼してた叔父に裏切られたんだもんな……そう簡単に切り替えられる事じゃないと思うよ」
いじめられて、裏切られて。
よくここまで耐える事が出来たな。
「頑張ったんだな、矢吹は」
「そうだよ、あーし頑張った………んだよ」
俯き加減になって、水面にポタポタと雫が落ちていた。
全く知らない土地の学校に通わされてまた虐められないかという恐怖と戦い、両親はギクシャクした状態になり構って貰うことも褒めて貰う事もなかった。
俺は静かに矢吹の頭を撫でた。
「よく頑張ったね、矢吹はえらいよ」
「うっうっううっ」
こうして俺は矢吹が泣き止むまで頭を撫でたのだった。
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「矢吹が求めてたのは癒しだったのかね〜」
「そうっすね」
「起きてたのか」
矢吹が寝静まった頃、俺が独り言を言っていると、まさかの返答があった。
「話どこまで聞いてたんだ」
「人が隠したがってる事盗み聞きするような趣味なんてないっす、ただ雫ちゃんが1人で黄昏てる時凄い苦しそうな目してたな〜っていうのを思い出しただけっす」
「やっぱ、ずっと隠したんだな」
「ま、今はそれだけ樹君の事信頼したって証じゃないっすか?ほら、雫ちゃんの目スッキリしてる」
「やめろやめろ、寝てる人の瞼を無理矢理開けるな、起きるぞ」
「はぇ……………?」
「ほれみろ、言わんこっちゃない」
矢吹が寝ぼけ眼で俺と優葉の顔を交互に見た。
「樹君……しゅき……」
身体を1回転させて俺の腕にピトッと矢吹がくっついてきた。
「ふんっ、今夜だけは樹君独り占めさせて上げるっすよ」
俺にピッタリくっついた矢吹を見て、優葉が不貞腐れた様にそう言いまたベッドに横になってしまった。
そして、俺は矢吹に腕を掴まれながらボーッとしている内に夢の世界へと引きずり込まれていったのだった。
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「よし!今日は樹君が女装する日っすね!」
「そうね、あーしたちの知名度を上げるために犠牲になってもらおう」
「樹君クマが凄いから目元の化粧はしっかりとしないとダメね」
俺が眠さに耐えて身体を起こすと、3人が俺をどう女装して酷い会話をしていた。
「え、俺マジで女装して行くの?」
「そうね」
「寝ぼけてるから聞き間違えたみたいだ、もう1回良い?」
「何回聞いても答えは同じよ」
「嫌だァァァァァァァ!」
俺は敢え無く3人に連行され、女装させられたのだった。
「Oh!樹君!昨日の格好で来たんですね!」
「不本意だ」
「良いと思いますよ、樹君、ところで昨日のアナー」
「使わなかった、使わなかったから公共の場でその発言はやめてくれ」
ただでさえ、ゴツい外人と美少女美女が集まっていて注目を浴びているのに、アナル講座などと発言されたらたまった物ではない。
「では、樹君はそろそろ公開処刑の時間だから、また明日会おう」
「公開処刑って言っちゃってんじゃん!!」
「あと、樹君にアドバイスだ、話さない方がいいと思うよ、なんでかって?見た目と声のミスマッチ感がすごいからさ、ハハハハハハ!」
dolphinが高らかに笑いながらその場を去って行った。
後書き
テストが有り勉強せざるを得ない状況だったので投稿してませんでした、すいません。
今日からは前のペースで投稿します。
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