第66話 矢吹の過去
「あーしこれ食べたい!」
幼い矢吹は母と手を繋ぎながら誕生日ケーキを選んでいた。
「はいはい、私も選びたいからちょっと待ってね」
そう、今日は矢吹の12歳の誕生日なのだ。
小学校生活も今年が最後。
刻々と小学校での生活が終わりに向かって行くのを感じ嬉しく思っていた。
と言うのも、小学生の矢吹はいじめられ気味だったのだ。
殴られたり、叩かれたり、無視されたりのような激しいイジメは無かったものの、軽いイジメを受けていた。
その頃の矢吹は気が強いというよりかは、気が弱い、加えて一際可愛い。
なので格好の的となってしまったのだ。
「おい〜雫ちゃ〜ん」
「傘返してよ…帰れない……」
雨の日に傘を隠されて困らされたり。
「あれ?消しゴム……もしかして………あった……」
筆箱の中にあった消しゴムが、何故かゴミ箱に入ってたり。
散々な思いをしてきた。
これは母も承知していたので、中学は今通ってる小学校の人たちと違う中学校に行く予定だった。
「早くケーキ食べたいなぁ〜〜」
「ケーキは夜ご飯の後よ〜」
「はぁい〜〜」
唯一のびのび出来る場所は家の中だけだった。
今日は誕生日という事なので、叔父も叔母も家に来ている。
「おや、雫ちゃん、帰ってきたのかい」
「ただいま!おじちゃんおばちゃん!」
「オー雫!ミーは雫が帰ってくるのを待っていたよ!」
矢吹は叔父たちの身体にダイブした。
「じゃあ私はご飯作ってくるから〜」
そう言って、母がリビングからキッチンに入っていった。
「雫も今日で12歳か、時の流れってのは早いもんだな〜」
向かいのソファーに座っている父親がビールを飲みながらそう言った。
まだ夕飯も食べてないのに顔が真っ赤で、かなり酔っている。
「大丈夫かい?こんな時間からそんなにお酒を飲んで?」
「大丈夫、大丈夫〜」
叔父がアメリカ人なので当然父もアメリカ人。
だが、言葉もお酒の弱さもしっかり日本人だった。
そんな感じでのんびりと雑談をしていると
「出来たわよ〜」
そんな声が聞こえた。
「あ〜、手伝うよ〜」
「パパだめだよ、酔っぱらってると危ない」
「お、おお、そうだな、雫からそんな言葉を聞く時が来るとは……」
「ちょっとあなた、むすめに注意されてどうするの」
「あはは、すまんなぁ」
皆んなで仲睦まじく笑いあっていた。
この日までは。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ん〜〜寒い〜……わぁ!」
ケーキを食べ終わり大人たちは酒に酔って床で寝たり、ソファーで寝たりしている頃、ミーはベッドの上で寒さに身体を包まれ、目を覚ました。
それもそのはず、何も着ていなかったかったのだ。
寝る前はパジャマを着込んでいたのにどこへ行ったのだろうか?
電気が付いていないのでよく分からない。
「おじちゃん?」
「ミーは……………」
足元を向くとおじちゃんが座っているのがうっすらと見えた。
「えっ?えっ??」
すると急におじちゃんが覆い被さってきた。
顔はお酒に酔っているのか真っ赤だ。
そして自分の局部が触られる感覚があり、その後そこに何かが押し付けられる感覚があった。
矢吹は男子からちょっかいを出されるついでに、無駄に性の知識も植え込まれていた。
そのおかげですぐに自分が何をされようとしているのか分かった。
矢吹は逃げるために暴れて叫んだ。
「雫どうした!?………これは…………」
結構な声量を出したためか、すぐに矢吹の声に気付き両親が寝室に入ってきて、固まった。
電気をつけた事で映し出されたのは、裸の矢吹とそれに覆い被さる裸の叔父。
両親も何をしようとしているか理解したのだろう。
叔父を引き剥がした後、警察を呼んでいた。
警察が去った後、叔母が物凄く申し訳しわけなさそうな声色で両親に頭を下げ続けていた。
そこからはもう何も覚えていない。
ただ、叔父が最後に言っていた「ミーは……」が頭の中をこだましていた。
どういう気持ちであの言葉を発したのか。
なんで叔父はあんな行動に出てしまったのか?
ずっと頭の中の回っていた。
心の整理がつくと、レイプされそうになったという恐怖襲われ男嫌いにもなった。
自衛目的で暴力的でつっけんどんな性格になった。
ついでに最後の叔父の言葉で一人称がミーにもなった。
こうして今の矢吹になったのだ。
後書き
体調死んでて、起きれる時間を勉強に当ててたので書けませんでした。
すいません。
今はもう体調治りました。
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