第58話 新手の妨害
「おー!!」
「会場広っ!写真と実物はやっぱ違うな」
会場前で俺たちはそう声を上げた。
それもそのはず、RIYは1試合80人20パーティーのゲームだから80人分のPC、ゲーミングチェアが必要になる。
それを横から見えない程度に距離を取って、1つの会場に全て入れるとなれば必然的に会場もデカくなるだろう。
「おー!また会ったね!」
「あ、Dolphinさん!」
会場に入ろうとすると、後ろからDolphinが声をかけてきた。
「君たちは何ブロックだったかな?」
「まだ見てーー」
「ミーたちHブロックよ」
「おー、私とは違うブロックだな、決勝で戦えるのを楽しみにしてるよ」
そう言って、Dolphinは仲間を連れて会場内へ入って行ってしまった。
Dolphinの仲間を見て思ったのだが、彼らは元々筋トレ仲間じゃなかったのだろうか?
他3人も身体が尋常じゃないくらいゴツいのだが。
「セリフといい、見た目といい、強者感半端ないっすね」
「あの人たちプロだから、なんかオーラが違うよ」
それぞれDolphinチームに対する感想を言って、俺たちも会場内に足を踏み入れたのだった。
「……次が俺たちの番か、めちゃめちゃ緊張するんだけど」
「それはミーも一緒っすよ」
俺たちは選手入場口の裏でコソコソと話していた。
公式大会だというのと、プロチームも沢山集結しているため、1チームずつちゃんとチーム名紹介があるのだ。
「なんて紹介されるのかしらね?」
「絶対、紹介しずらいじゃん、めちゃめちゃナルシストみたいな名前なのに、男混ざってるんだから」
「次のチームはbeautiful girl〜〜!!」
「行くか」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「俺の紹介酷すぎだろ……」
指定されたゲーミングチェアに座ったあと、俺はそう呟いた。
「あれは傑作だったわよ!実況、よくやったわ!」
「実況ナイスっす!」
「ドンマイ」
3人は励ますつもりゼロで口を開けて笑っている。
「俺、一生消えないデジタルタトゥー刻み込まれたんだけど」
なんで俺がこんな風になっているかって?
それは入場した直後に起きた出来事が原因だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「次のチームはbeautiful girl〜!!」
「このチームは名に恥じないくらいの美少女しかいな、おーっと!男性の選手が混じっております!美少女3人の中に男性が混じっております!実況の横山さん、これは他の男性選手から要らぬヘイトを買ってしまいそうな状況ですね!」
「そうですね、この方が男の”娘”という可能性はないでしょうか?」
「名前が名前ですので、その可能性もありますね!色々な方面でも期待出来そうなチームです!」
「では次のチームはーーー」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
と言う訳だ。
つまり俺は今、会場にいる多くの人から
「男?男の娘?どっちなんだ?」
という疑念の眼差しを向けられている。
俺にはちゃんとした息子が付いているので紛れもない男だ。
なので、すごい恥ずかしい。
「試合中解説の声聞こえないから、どんな解説されるか分かん無くて怖いんだけど、実況暴走しそう」
「大丈夫!色んな意味で有名になれるわ!」
「余計に怖いんだけど!?」
試合開始前に酷い目に遭わされたのだった。
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「暇ね」
「そうっすね」
「茂みの中で周り見てれば良いだけだもんね」
俺たちは大会専用のゲームチェアに座りながらそう話していた。
1試合に80人20パーティーが入り上位10パーティーが準決勝進出だ。
なので、俺たちは最初隠れて順位を伸ばし準々決勝に進もうとしているのだが、はっきり言って暇だ。
絶対人が来ない様な場所にある小さな茂みに4人で隠れているので、近くを敵が通り過ぎても一切気づく気配がない。
「早く残り10パーティーにならないかしらね、そしたら暴れられるのに」
「ね〜」
他のチームが集中してPCと向き合ってる中、俺たちだけが呑気な会話をしていた。
ヘッドホンでボイスチャットをしているため、俺の耳にはゲーム音と3人の声しか聞こえない。
外ででどんな解説をしているのかが気になってすごくムズムズする。
暇なので、俺は周りの様子を見るために少し首を回した。
(うん、やっぱりゲームに集中しよう、絶対駄目な所で駄目な所に血液が集まりそうになる)
俺は冬樹の机に乗っている胸を見てそう思い、PCに向き直った。
(あの人絶対見てるよな〜)
横のチームの選手の1人がしきりに冬樹の方へと向いていた。
そんな事を考えてる内に残り11チームになっていた。
「後1チーム減ったら茂み出よう」
「そうね」
そう言って、冬樹が少し前屈みになった。
そのせいで、冬樹の胸がかなりまずい状態になっている。
下着が半分透けてて、谷間の形がくっきりと見える状態だ。
そしてその状態になったせいで、余計に隣の選手の目線が冬樹の方を向いてしまっている。
マウスを持つ手は止まったままだ。
すると、キルログに隣の選手が危険区域で死んだいうログが流れた。
おそらく、体力がギリギリだったにも関わらず危険区域スレスレにいて、冬樹の胸に注意を取られた事で危険区域に入ってしまったのだろう。
隣の選手は青ざめている。
「あ、10パーティーになった!」
その、相手チームを無自覚の内に倒した本人である冬樹はキャッキャと喜んでいる。
(冬樹の胸、やっぱ色々エグいな………)
その後は順調に敵を倒したものの、卑猥な事を考えながら操作していた俺のミスで2位という結果になってしまった。
性というものの恐ろしさを実感した。
後書き
すいません!予約投稿押し忘れてました!
次の投稿はちゃんと明日します!
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