第57話 部屋が空いてた理由

「……なあ、この通り大丈夫か?何かを感じるんだけど」


俺たちはDolphinと別れたあと真っ先にホテルへと向かい、ホテルがあるらしい通りに入った。


のだが、嫌な予感というか、通りのお店の並びが少し怪しい。


何処の場所でも、治安が悪かったり、18禁のお店が少し固まっている所というのはある。


そしてこの場所、どうもその「18禁の店が沢山並んでいる」に該当してそうな雰囲気がある。


少しえっちぃお姉さんのポスターが店の壁に貼ってあったりする。


「お姉さん、ここで働かない?」


案の定、キャッチが来た。


「あ、すいません、そういうの無理なんで」


だが、矢吹が一蹴した。


それを2、3度繰り返してるといつの間にか、治安の悪そうな通りを抜けて、いかにも観光地という感じのお店や、ホテルが増えてきた。


「そういえば、矢吹キャッチの対応慣れてなかった?」


「ミーが中学生の頃、近くにこういうの少しあってキャッチに声かけられたこと何回あるから慣れた」


中学生をキャッチしようと

「俺は矢吹が間違った道に進まなかったようで嬉しいよ……」


「父親ぶんな、(彼氏ぶってくれるなら良いけど)」


「なんて?」


「何でもないっ、そろそろ着くよ」


そう言って、矢吹は正面を向いた。


目を逸らされたので、仕方なく俺は正面に向き直って周りを見渡した。


めちゃめちゃ観光地だ。


見て分かるレベルの高級ホテルが結構ある。


値段はかなり安かったので無かったので、もしかしたら超優良ホテルかもしれない。


あまりにも安かったから、最悪4人で寝れるベッドさえあれば良いやと思っていたがかなり期待出来そうだ。


「着いたっす!」


「おお、マジか、めっちゃ良さげじゃん」


普通に綺麗なホテルだ。


階数は4階程で、「なんでここが数万円で止まれるの」ってレベル。


「矢吹ファインプレー過ぎる」


「ミーに感謝しなさいよ」


そんな会話をしていたが、荷物が重くて手が痺れてきたので早く部屋に入ろうとホテル内へと入り、受付近くの椅子に荷物を置いた。


「このホテルの社長、値段設定間違えてない?」


「私もこんな綺麗な所泊まれるとは思ってなかったわよ」


「早く部屋行きましょ」


「レッツゴーっす!」


そう言って受付をし、俺たちはエレベーターに乗って部屋へと向かった。


〜部屋〜


「ほ〜!これが私たちの部屋っすか!良いっすね!!」


「めっちゃ綺麗!!」


そんな事を言って、女子3人は真っ先に風呂場を見に行った。


(やっぱり女子って風呂場とかトイレとか気にするんだな)


そんな事を考えながら、俺は1人ベッドのある大部屋へと入った。


「………うむ、けしからんな」


大部屋に入って真っ先に出た言葉がこれだ。


それもそのはず、入ってすぐにある棚に明らかにここに有るべきではない、薄っすいゴムがあったからだ。


そして俺は、夜に変な思いを起こさない様にその物体をそそくさとバッグの中に入れた。


「最高っすね!樹君!」


「ああ、そうだな!」


4日程生活するには充分過ぎるだろう。


さっきのゴムで察したが、ここはラブホだ。


だから防音もしっかりしてるだろう。


「ふ〜っ!ようやく一息つけるわね」


「あと1時間くらいしてからここ出れば全然間に合うわね」


「喉乾いたっす!」


言われてみればずっと水分取ってない。


「そういえば樹君のバッグに大っきいコーラ入ってたわよね?」


「入ってた、飲みたいならと好きに飲んでいいよ」


俺はさっき入れたゴムの存在を完全に忘れてそう言った。


そして冬樹がルンルンで俺のバッグを開けジュースを取り出そうとし、固まった。


「………樹君、私は準備万端よ」


「誤解だ!!」


「こんな物を用意して、誤解ですって?私たちとまた4Pしたいんでしょ!」


「「うわぁ……」」


「違うって!!本当に誤解だって!!!」


ラブホの部屋で痴女が1人ヤル気満々で、残り2人はドン引きして、男が顔を真っ赤にして喚いている。


阿鼻叫喚の光景だ。


このあと小1時間、部屋を出るまで俺は誤解を解くために必死で弁明した。

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