第52話 予定詰まりすぎだろ……

「何だこの英文……意味分からん……」


パンケーキを食べた後冷静になって考えてみたら、俺の今までの成績的に夏休みの課題をすっぽかすと留年する可能性が出てきてしまう事に気付いたので必死に英語のワークを解いていた。


しかし、高校に入ってロクに勉強してなかったお陰で、英文が何を示しているのかさっぱり分からない。


「冬樹様、ここの英文訳教えてください」


なので、俺は同波高校の先輩である冬樹に教えを乞う事にした。


冬樹の学力は知らないが、頭が良さそうなので分かりやすく教えてくれそうだ。


「どこかしら?」


「ここ」


そう言って俺は、We wrestled at the hotel.という英文のwrestledという部分を指差した。


「ホテルで何かするってのは分かるんだけど」


「う〜ん、何かしらね………あ、そういえばホテルの予約もしなくちゃいけないわね」


「予約は違う単語じゃない?」


「違う違う、そういう事じゃ無いわよ、樹君がホテルって言って思い出したのよ」


「何を?」


「あと数週間でRITの大会でしょう?大会会場が少し離れたところ、だから早めにホテルを予約しておかないと泊まれなくなっちゃうと思って」


「確かに……」


言われてみればそうだ。


RITの大会まであと1ヶ月を切っている。


前に言ったが、この大会は世界中から人が集まってくる。


なので、早めに周辺のホテルを予約しておかないと部屋が埋まってしまい大会のある3日間、家から電車で会場に向かわなければならなくなる。


そうなったら、電車代が大変な事になってしまう。


「じゃあ、4人揃ってる今のうちに部屋決めて予約しちゃうか」


「「そうね(っすね)」」


そして、俺たちはまた勉強から脱線した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「遅すぎたか……?」


「海外の人達の力を舐めてたっすね……」


俺たちは会場付近のホテルの予約出来る部屋を探しているのだが、空いていない。


普通の部屋はぜんっっぶ、先に予約されている。


よく考えればそれも当然だ。


海外の人たちは、ホテルを予約し損ねたら行く宛がなくなってしまうので1ヶ月前くらいに予約していても不思議ではない。


「スイートルーム………景色も綺麗ね……」


「そんな高い所泊まったら俺たちの財布の中が綺麗になっちゃうよ」


冬樹がスイートルームに泊まりたそうにしてる。


だが、そこは1泊2日で笑えないお値段をしてるので3泊4日もしたら破産間違い無しだ。


俺が今から死ぬ気でバイトして、そのバイト代と旅行代を合わせれば泊まれない事も無いが、それでRITを疎かにして初戦敗退とかになってしまったら本末転倒だ。


「安くて空いてる所無いかしら………」


冬樹がそうぼやいていると、矢吹スマホを手に取って何か調べ始めた。


「ここめっちゃ空いてるし、安いよ」


そう言って、矢吹が見せてきたスマホ画面には「残り部屋数10」の文字があった。


「これなら3泊4日してもそこまで高くはならなそう」


「うん?何で3泊4日?」


大会は3日間なので2泊3日すれば良いはずだ。


「1日観光するから」


「見るって言ったて、何を見……いっぱいあったわ」


俺は見せられたホテルの位置を見てそう呟いた。


そう、大会会場は熱海だ。


RITの事しか頭に無くて、大会会場がどこなのかをすっかり忘れていた。


熱海といえば、観光の名所じゃないか!!


「熱海観光良いわね」


「大会優勝あと、そのまま熱海で遊び回るとか最高っすね!」


「観光は置いといて、金額設定とは部屋の設備とかこれで大丈夫そう?」


画面をスクロールすると、値段はホテルでの滞在時間で決まることが分かった。


大会と観光で日中はほとんど外にいる俺らに取っては好都合な料金設定だ。


しかもwi-if完備の文字まである。


とんでもない優良物件だ。


「ここで大丈夫?」


「ここが良いな」


「じゃあ予約しちゃうね」


こんな最高のホテルが他に知られたりでもしたら、直ぐに部屋が埋まってしまいそうなので、俺たちは直ぐにその部屋を予約するために電話した。


「4人1部屋3泊4日で5万3000円だって」


「やっっす」


思ったよりかなり安かった。


「凄い雰囲気も良さげ、さっきも電話してた時クラシックっぽい音楽が奥で流れてたし」


「それは期待出来そうだな」


写真を見た限りだと、部屋の見た目も普通に綺麗だ。


寝室にはキングサイズのベッドが1つ置いてあり、そばの棚にはミラーボール的な光を出す何かが置いてある。


何で4人泊まれる部屋なのにベッドが1つしか無いのかは疑問だが、キングサイズなら4人とも入る事が出来そうなので大丈夫だろう。


ホテルの周りにもコンビニやレストランなど、食べる所が沢山ある様なのでとても楽しみだ。


「さ、勉強戻ろ」


「え〜………」


そしてそのワクワクから一転、辛い現実に引き戻されたのであった。


後書き


We wrestled at the hotel.=私たちはホテルでプロレスをします。


これ、実際に筆者の通ってる高校の定期テストで出た珍問題です。


話繋げるのに丁度良かったので使ってみました。

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