第45話 リンゴ病 前編
「すごい悪寒がするの私だけっすか?」
家に帰り、疲れ切った身体を休めている時に優葉がそう言った。
俺と優葉がプロレスしたあと、みんな疲れ切ってしまい少し日光浴したあと帰ったのだがその時からどうにも背筋がゾクゾクする。
帰り道矢吹が、「やってやったぜ」みたいな顔をしていたのは何故だったんだろうか?
「俺も寒気がしないでもないけど……」
「私もちょっと寒い気がする」
「ミーも寒気するけど、単に海で身体が冷えただけじゃない?」
「原因それだな」
「そろそろRITやろうかしら」
「そうっすね」
この時は対して気にも留めず、俺たちは4人でゲーム部屋へと入って行った。
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「なんか、今日弾が当たらんな」
3連発初動死をしたタイミングで俺はそう言った。
「そうね……なんか遠近感覚が変なのよね」
そう、何故か今日はエイムが悪い。
距離感が掴めないというか、頭が少しだけボーッとするのだ。
あと判断が鈍くなってる気がする。
天狗の面を付けたお爺さんがここに居たら、4人とも竹刀で頭を引っ叩かれているだろう。
「ミーもなんか変」
「私もちょっと変な感じするっす……」
3人とも俺と同じく違和感を感じてるらしい。
一体何が原因なんだろうか?
「今日早く寝とく?疲れてるっぽいし」
「次の日に疲れ残すのも良くないっすからね」
身体が重だるいので相当疲労が溜まっているのだろう。
ここで無理にゲームをやり、体調を崩して3日ぐらい寝たきりになりたくないので俺はそう言ってRITを切り上げた。
「ミーはちょっとだけソロでやる」
どうやら矢吹はまだやるらしい。
矢吹も疲れている雰囲気があるのでそこまで長くはやらないだろう。
「じゃあ俺たちは先寝るよ、おやすみ」
俺はそう言ってゲーム部屋を出て、寝室へ向かいベットにダイブした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「痛っ………」
俺は次の日の朝、身体の至る所か感じる謎の痛みで目を覚ました。
身体を起こそうと腕を曲げたのだが、その時にまた痛みが走った。
あと頭痛するし、とにかく身体がだるい。
ついでに日焼けも痛い。
「風邪引いた……」
俺はそう確信した。
「ゴホッゴホッ」
隣で寝ている優葉が咳をした。
「なんか、顔赤くない??」
ベットに寝転がる優葉の顔は真っ赤かだった。
ほっぺの辺りがピンクを超えて赤くなっている。
まるでりんごのようだ。
「んっ、ぁ〜」
「ん〜〜〜」
俺の声に気付いて矢吹と冬樹が起きてきたのだが、これまた顔が赤い。
すると矢吹が俺の顔を見て、目を少し見開いた。
「顔赤くない?」
「え?俺も?」
矢吹にそう指摘されたのでスマホの内カメラを使い見てみた。
すると、俺も3人と同じように顔が赤くなっている。
ほっぺがりんごの様に真っ赤だ。
「日焼け……?」
「そうだと信じたいすけどね……体調があんまり良くないのでリンゴ病かもしれないっすね………うう、関節が痛い」
どうやら優葉も体調が悪いらしい。
しかも俺と同じ関節痛があるようだ。
「私も頭痛いし……多分この感じだとみんな罹ってるわね」
「ミーも身体だるい」
3人とも体調不良だ。
「熱、測ろう」
「テッテレ〜、非接触型体温計ぃ〜」
「矢吹は計らなくても熱があるのが分かるな」
某四次元ポケット付き猫型ロボットの声真似をして、棚からおでこに当てて測る体温計を取り出した。
「38度だわ」
「37.6度っすね」
「38.2度〜ッ」
「俺も38.2度」
つまり………
「クラスター起きてんじゃねぇか!!」
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「顔がかなり赤いのでリンゴ病だと思いますけど、一応検査しときますね」
俺たちは矢吹の入れていたタクシーを呼び出せるアプリを使って、タクシーを家の前まで呼び病院へ向かった。
今日初めて分かった事なのだが、矢吹は熱に弱いのかもしれない。
さっきから某猫型ロボットの声真似をしたり、胸元若干はだけてるしで色々変だ
「ええ!?やだ!」
すると突然冬樹が悲鳴を上げた。
俺もどんな検査するのか分かっていないが、インフルエンザの時みたいに鼻綿棒を突っ込むやつだろう。
「検査って何やるんですか?」
「採血です」
「へぇ………」
どうりで冬樹が嫌がるわけだ。
正直、俺も採血は嫌いだ。
だってさ、痛いし、時間かかるし、血がめっちゃ見えるし。
「どなたが最初にやられます?」
「私最初が良いっす」
「じゃあ次ミー」
「私絶対やらないからね!!」
「じゃあ冬樹最後で、俺3番目で」
採血を断固拒否している冬樹が置いておき、先に冬樹を除いた3人が採血を済ませた。
「次、冬樹」
「いやぁぁぁぁぁ!」
「あんまり大きな声出さないで!?」
本当は医療行為なはずなのに、ここまで叫ばれるとまるでいじめをしているかのようだ。
「じゃあミーが右腕、優葉ちゃんが左腕、樹くんが胴体抑えて」
「え、ああ、分かった」
このままだと冬樹が拒否し続けて終わるので、矢吹は強制的に採血させることにしたらしい。
「やめてぇぇぇ!」
3人に身体を抑えつけられて、腕に針を刺される少女という絵面。
側から見れば拷問だ。
でも今は別な感性症が大流行していて、お医者さんも忙しいのであまり時間をかける事が出来ないから仕方ない。
「終わりましたよ〜」
「ぅ、ぅ〜」
採血を終えた頃にはもう、冬樹は力尽きていた。
魂が抜けたかのような顔をしている。
「どうするっすか?これ?」
糸の切れた操り人形のような格好で椅子に座っている冬樹を指差してそう言った。
「3人で運ぶ?」
「それしかないな」
俺たちは関節痛に耐えながら3人で冬樹を診察室から運び出したのだった。
後書き
定期テストからも解放されて、完全に自由の身になりました。
久々に執筆したんですけど、表現力とかが下がりまくっててヤバかったです。
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