第44話 理性崩海水浴 3 漫画と現実を混同すな
「やっぱ海は気持ちぃ〜!」
俺は海に肩まで浸かりながら叫んだ。
さっきまで、砂風呂に入っていてかなり暑かった身体が急速に冷やされる感覚がすごい気持ちいい。
「いや〜、気持ちいいっすね〜!!」
「夏は海に限る」
優葉と矢吹も俺と同感らしく、2人も気の抜けたようなユルユルとした顔をしている。
他と比べて人が少ない場所を選んだので比較的自由に泳げるし最高だ。
「そういえば、冬樹ちゃんどこ行ってんすか?」
「え?あ、ほんとだ、どこ行った」
言われて見れば、冬樹の姿が無い。
砂浜に目を向けても、人だかりで冬樹の姿は隠されてしまっている。
「樹く〜ん、手〜貸して〜」
どこからか俺に助けを求める、すごい小さな冬樹の声が聞こえた。
他の人の騒ぎ声もあって、かろうじで聞こえた程度だから方向までは分からない。
砂浜でナンパでもされてるのかもと思い砂浜を見たが、砂浜のどこにも冬樹の姿は見えない。
「まさか………」
俺はそう思い、斜め後ろの方を向いた。
するとかなり離れたところで、波と波の間にチラチラと銀色の髪の人物が目に入った。
「助けて〜〜」
今度は結構はっきりと冬樹の情けない声が聞こえた。
「今行くからちょっと待ってて〜!!」
俺も冬樹に聞こえるように大声でそう言った。
冬樹は泳げないと言っていたので、浮き輪に乗ったまま流されてしまったのだろう。
あまりゆっくりしすぎると沖合に流されて海の藻屑と化してしまいそうなので、俺たちは少し速く泳いで冬樹の方向へ泳いだ。
「ふ〜、危なかったわ」
「なんであんな流されてんだよ」
「波に乗ってゆらゆらしてたら、気付けばあんなところに」
「雪花ちゃん気をつけてよ〜、波に揉みくちゃにされた後窒息死して魚の餌だよ」
「事実だけど怖がらせるような事を言うな」
そんな会話をしながら俺たちは砂浜へと泳いでいた。
「大きな波くるっすよ!」
「え? あーっ!?」
そう言われて後ろを向くと大きな波が顔に直撃した。
「危ない危ない、俺が溺れるところだった」
俺は体制を立て直し、海から顔を出してそう言った。
2人も顔をブルブルと振って髪についた海水を軽く落としている。
「あれ?冬樹は?」
また冬樹が行方不明になった。
さっきの大波飲まれて砂浜まで一気に流されたのだろうか?
「「「あ」」」
前を向くと、すぐ近くに誰も乗っていな冬樹の浮き輪が浮いていた。
そしてその奥に犬神家状態の誰かがいる。
「「「冬樹〜〜〜っ!!」」」
俺たちはは急いで冬樹を助けに行った。
「死んだ!?」
矢吹が冬樹の肩を掴んで海から顔を引っ張り上げた。
「死にかけたわ、ゴホッ」
「「「冬樹〜〜っ!!」」」
冬樹が鼻から海水を、目から涙を出すのと同時にそう言った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「これなら生還出来そうね」
冬樹を背負って泳ぐのは無理なので、冬樹を浮き輪に乗せて休憩していた。
「ところで樹くん」
俺が背浮きしながら空を見ていると冬樹が話しかけてきた。
「どうした?」
「私の上のビキニはどこに行ったのかしら?」
「んん!?」
急いで冬樹の方を見ると、冬樹の胸には何も着いておらず海水に晒されていた。
「矢吹と優葉!冬樹のおっぱい隠して!」
「「え?あ!?」」
2人その事実に気付き、急いで冬樹の浮き輪に手を着いて周りから見えないように身体で冬樹を隠した。
そしてその後、俺は近くに浮いている冬樹の水着を発見した。
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「ミーは疲れたから雪花ちゃんと一緒に1回上がるわ」
「おお、分かった」
「ナンパは玉蹴り潰すから安心して」
「おう」
間違えれば傷害事件になりそうな事を言って矢吹と冬樹が砂浜に戻っていた。
俺も戻りたいがそうはいかない。
さっき冬樹のおっぱいを思いっ切り見てしまったので、普通に立って歩くと股間にテントができてしまう。
「樹くんっ!」
俺が波に打たれながら煩悩を収めていると、横から優葉が話しかけてきた。
「あれやらないっすか?」
「あれって何?」
「恋愛漫画とかで水をかけ合うやつっす」
「ほぅ、良いだろう」
俺も恋愛漫画とかラノベを読んだことが多々あるので、何を言いたいのか分かる。
恋人同士が浅瀬でイチャイチャしながら水をかけ合って、キャッキャするやつだろう。
1回やってみた気持ちもあったので俺はその提案に乗った。
そして5分後……
「きゃっ!仕返しっすよ♡」
「やったな!えい!」
とはならなかった。
「ぐあぁぁっ!」
「はっはっはっ、樹くんじゃぁ私に勝てるわけない、っすよ!?」
最早、海中プロレスだ。
優葉が足をかけて、俺を背中から倒そうとしてくる。
そして、それに全力で抵抗してあわよくば反撃を狙う俺。
恋愛漫画のような甘い雰囲気など欠片も無かった。
浅瀬とはいえど、足が水に取られるので動きずらいから泥試合になっていた。
「あ!ヤバい!」
優葉に正面から押されて俺は背中から海に倒れた。
「これで私の勝ちっすね!!」
優葉が俺に馬乗りになり、勝ち誇った顔でそう言った。
「降参です」
俺は体力に限界が近づいていたので、白旗を上げた。
「樹くんが前に言ってた、場所をわきまえてくれ、の意味が分かったっす」
突然、馬乗り状態の優葉がそう言った。
どういうことだ?と言おうと思ったが俺は口に出す前に失態に気付いた。
俺は冬樹のおっぱいを見て勃っていたにも関わらず、今その勃っている股間を優葉に押し付けてしまっている。
「うん、ごめん」
俺は急いで身体を回転させて、馬乗り状態から抜け出した。
「樹くんかヤりたいって言うなら良いっすよ?」
優葉が恥ずかしそうに身体を捩りながらそう言った。
その瞬間に、周りにいた人たちが少し騒ついた。
そして俺は静かに、水でイチャイチャするテンプレを作った誰かを呪った。
後書き
1週間近く投稿出来てなくてすいません。
学校始まって生活リズムとかが変わってしまったのも今週あたりから慣れてきたので、ちゃんと2023年の時みたいに投稿したいと思います!
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