第43話 理性崩海水浴 2 ハイクオリティ

「これでみんな塗り終わったろ……」


俺はそう言って矢吹の背中から手を離した。


体感1時間くらいだったが、防水ケースに入れたスマホを見るとまだ10分くらいしか経ってなかった。


「ありがと、樹君」


矢吹が俺にそう言ってきた。


どうも今日は、矢吹の調子がおかしい気がする。


水着選びの時もそうだったが、普段だったら絶対にしないであろう行動をしてくる。


それに続いて、日焼け止めを塗るのを頼んでくるとちょっと怖い。


風邪でも引いてるんじゃないだろうかと心配になる。


「矢吹風邪とか引いてないよね?」


「大丈夫」


不安なので一応聞いておいたが、ここまできても大丈夫と言うなら本当に大丈夫なんだろう。


「じゃあ何する?」


「ビーチバレーやらない?」


ここはビーチボールを貸し出してくれるところがあるので浅瀬でビーチバレーをしてみたい。


それに水温に身体を慣らすにはちょうど良いだろう。


「ちょっと待って」


冬樹が俺たちは3人を呼び止めた。


「海に来たら最初にやることは決まってるわよね?優葉ちゃん、雫ちゃん」


「ああ、そうっすね!忘れてました!」


「そうだった、忘れてた」


矢吹と優葉が何かを思い出したような顔をしてそう言った。


そしてそのまま、優葉と矢吹が屈んで砂を堀り始めた。


矢吹と優葉が砂堀りをやめて立ち上がったタイミングで冬樹が俺に話しかけてきた。


「樹君、そこに両手を上げて寝転がってちょうだい」


「ん!?」


ここは人気のない岩陰だ。


日陰にはなっていないが、ここに人が来ることは滅多にあるまい。


(なんかこの展開見たことあるぞ……)


俺は中学の頃興味本位で見たエロ同人誌を思い出した。


岩陰に連れてかれて男女があんな事やこんな事をやっている同人誌だ。


「流石にな?やめよう??ここでやるのは本当にまずい事になりかねないから」


俺は何をされるのか予期して、冬樹に思い止まってくれと声を上げた。


「あら?そんなに嫌かしら?」


「そういう問題じゃあなく無い?」


嫌か嬉しいかで言ってしまえば嬉しい。


こんな美少女3人とハーレムプレイ出来るんだから。


でも、そのリスクがデカ過ぎるんだよ。


バレたら人生終了案件だぞ、これ。


「良いから良いから、この溝に入って」


「溝?」


矢吹がそう言って指差したのは、大体俺の身体と同じ大きさに掘られた浅めの溝があった。


そして、その横に山のように集められた砂を見て俺は勘違いをしていた事に気がついた。


「もしかして、砂風呂みたいな事しようとしてる?」


「そうよ?何をさっきから嫌がってるの?」


「いやそれなら良いんだ、全然良いんだ」


「あれ?何を考えていたのかしら?エッチな漫画の見過ぎかな?おーい、樹く〜ん、聞こえてますか〜?」


図星だったので、俺は冬樹が揶揄おうとしてくるのを無視して、言われた通りに両手を上げ溝に沿って寝転がった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


大体30分後……


「ふーっ、これで大まかに土台が出来た」


俺は顔以外の全てを砂に埋められていた。


両手を上げて顔だけが砂からひょこっと出ているのと色合いのせいで、まるでハニワのような見た目になっている。


「樹君、1回本気で動いてみて」


「分かった」


矢吹がそう言ってきたので俺は出せる限りの力で身体を動かそうとした。


「ふんっ!んーーーっ!ダメだ、出れない」


どれだけ力を入れても、ガッチガチに固められた砂の拘束から逃げることは出来ない。


「じゃあここからトッピングしていきますかっ!」


するとさっきから姿の見えなかった冬樹が、小さいバケツやスコップを持って戻ってきた。


「案外心地いいな、砂風呂って」


砂が身体を包む感覚が実に心地いい。


普通に寝そうだ。


そんな事を考えていると、俺の胸の真上あたりに砂の詰まったバケツが逆さまにして置かれた。


「おっぱい作ろうとしてる?」


「そうっす!」


優葉が元気に答えた。


砂を固める時、手の力が異常にこもっているのは巨乳への恨みなのだろうか?


「じゃあ私はチン◯ンを作るわね!」


「ストレートだな、おい」


冬樹がそう言って俺の視界から消えていった。


「樹君は、巨乳か貧乳どっちがいい?」


「返しずらい質問をするな、あと柄にも無い質問するな」


矢吹がそう聞いてきたのだが、すんごく返しずらい。


個人的にはどっちもありなのだが、優葉の何かを期待するような視線が辛い。


「俺は貧乳派かな」


ここでも優葉喧嘩を売るのは嫌なので、安全な方の選択肢を俺は取った。


「けっ、ロリコンじゃん」


「巨乳派って言ったら変態って言うんだろ?」


「うん」


「どっちでも一緒じゃねえか!」


どっちを取っても罵られるのは変わらないのかよ。


酷いな。


「そんな事を言ってる間にもう出来たっぽい、よっ!?」


「何その反応!?怖いんだけど!?」


矢吹が明らかに驚いた表情をした後、みるみると顔が赤くなった。


何か恥ずかしいものを見たかのように目を隠ししてチラチラと指の隙間から俺の身体を見ている。


「私的には上出来ね、樹君の物を見たことがないから正解が分からないけど」


「私も出来たっすよ!!」


下から、不穏な言葉が聞こえてきた。


「ちょっと写真撮ってくれる?」


「いいよ」


矢吹に頼んで俺の全体像の写真を撮ってもらい俺はそれを見た。


「クオリティー高過ぎるだろ」


乳首まで完璧に再現されためちゃくちゃ生々しい巨乳に、細部まで作り込まれた立派な局部が砂で作られていた。


チ◯コが着いているのに、巨乳であべこべになっている。


「私がどれだけのチ◯コを見てきたかーー」


「やめろやめろ、語るな」


冬樹がチ◯コの事を語り出そうとしたので俺は焦って制止した。


「樹君的にはどうかしらこの身体」


「俺と冬樹を足して2で割ったみたいな身体だな」


上半身は冬樹、下半身は俺と言ったところだろう。


「ふんっ」


そんな事を言っていると急に優葉がスコップを持ち、それを振り上げた。


「あ、顔に砂かかるからやめー、口の中に砂がぁ!」


巨乳ネタで自暴自棄になった優葉がめちゃくちゃクオリティーの高い巨乳の上部をスコップで吹き飛ばした。


その拍子に俺の顔に砂が飛んできた。


「口をすすがせて」


「分かったわよ、目瞑って水飲まないようにしてね」


「あ、違う、普通の飲料sーー」


そう言葉を発しても時すでに遅し。


顔の上で大量の海水が宙を舞っている。


「鼻に海水がぁぁ」


「あらあら、可哀想に」


矢吹は俺の扱いが酷いと言う事を再認識した瞬間だった。

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