第42話 理性崩海水浴 1

「あっついわね」


「な、水着を買ってる間にこんなに気温が上がってたとは」


俺たちは水着を買って海まで歩いていた。


水着買う前もかなり暑かったのだが、水着を買っている1時間弱の間に気温が更に上がって肌が焼けそうだ。


拭っても拭っても汗が垂れてくる。


「早く海入りたい……」


「そうっすね」


優葉もかなり暑さにやられているようだ。


俺たち2人が暑さに苦しめられてるのに対して、矢吹と冬樹はどこからか取り出した日傘を持って優雅に歩いている。


「優葉ちゃん大丈夫?」


「大丈夫じゃないっす、日傘入れて欲しいっす」


「あら、樹君も熱中症になって死にそうだけど大丈夫かしら?」


「熱中症にはなってないけど死にそうだから日傘入れて」


「え〜、ヤダ〜」


「頼む、熱中症になりそう」


「傘持ってくれるなら良いよ」


傘持つのが面倒だからって俺に押し付けようとしてやがる。


「持つから入れて」


だが俺はこれ以上直射日光に当たりたないのでに急いで冬樹の日傘に入り日傘を持った。


「人生初相合傘ね」


「小学生の頃にいくらでもあるだろ」


小学生は徒歩で登校するところが多いので、急に雨が降ったりしたら相合傘は結構するだろう。


「私、小学生の頃から学校でのキャラ貫いてきたからないわよ、告白も全部振ってたし」


「小学生からそのキャラ貫いてたの!?」


小学生ずっとあのキャラ変えずに貫くって凄いな。


しかも小学生の頃から告白降りまくってたのか……


まあ、今の冬樹の容姿を考えれると天使のような子だったのは間違いからモテるのも当然だろう。


「だから樹君が始めてよ?」


「……………」


………そうか!!


その頃から男と関わりを絶ってきたから、冬樹は処女を拗らせてあんな痴女になってしまったのか!!


「そういう事だったのか……全てが繋がった……」


「何か酷い事を考えてる気がするわね」


「え?ああ、なんでもない」


よく分からないところで納得する樹だった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「「「「海だぁ〜〜〜〜!!!」」」」


あの苦行のような移動を終えて、俺たちはようやく海に辿り着いた。


海の近くなので、日差しは変わらないが少し涼しくなった。


「じゃあ俺着替えてくるからあの売店の横で待ってる」


「「「りょうか〜い」」」


女子3人にそう告げて、俺は備え付けの更衣室に入った。


「なんかお腹の肉が増えてーー」


「なぁ、あの子達誘ってみね?」


俺が服を脱いでお腹の脂肪を気にしていると、横を通り過ぎた大学生くらい男性がそう言っているのが耳に入った。


(ここに着いてまだ5分も経って無いのにナンパ企む奴が出てくるとは……)


とはいえ今日は俺が居るのでナンパされる事ない、そう信じたい。


俺はそんなことを頭で考えながら、水着に着替えた。


「あいつらいくらなんでも遅すぎやしないか……?」


俺は上裸で売店の横に突っ立って居る。


のだが、いつまで経っても冬樹たちが来ない。


女子は着替えに時間が掛かるのは知っているが、あいつらは楽しい事が待っているとなると全てを爆速で終えるのでここまでゆっくりしてるのは不思議だ。


「1回見に行くか」


もしかしたら、更衣室ですれ違ったナンパ師にナンパされている可能性もあるので一応見に行って見ることにした。


「居ないn、わっ!?」


女子更衣室の入り口を見に行くと何者かに後頭部を何か柔らかい物で強打された。


「樹君、出てくるのおそい」


「俺結構前から待ってたんだが」


「それより先に外出てたわよ」


俺かなり早く着替えたのにそれよりも早く着替えて出てきてたとは……


多分さっきまで俺の後頭部を殴った浮き輪と、矢吹が手に持っている風船バットに空気を入れていたのだろう。


「じゃあ海に行くか!!」


「待ってちょうだい、まだ日焼け止め身体に塗って無いわよ」


「そうだったな、じゃあこれ貸すから塗ってくれ」


冬樹に日焼け止めを投げて渡した。


俺は部屋で肌が真っ白になっていて海で焼けたいから、今日は日焼け止めは塗らない。


「いやいや、樹君が私たちに塗るのよ?」


冬樹が俺に日焼け止めを投げ返してきた。


「え?」


「樹君が私たちに塗るの」


なんでこんなに人がいっぱい居るところで小っ恥ずかしいことをしなければならないのだろうか。


生乳揉んだことあるんだから対して変わらないだろ、と言われると否定は出来ないがそれを人前でやるとなると話は変わってきてしまう。


「恥ずかしいから嫌なんだけど」


「じゃあこっち来て」


冬樹が俺の腕を掴んでずんずんと奥に進んでいく。


そして俺は誰もいない岩壁の裏へと連れて来られた。


「よし、ここなら誰も居ないわよね」


「うん誰も居ないな」


「じゃあ塗って欲しいっす」


「嫌だ、女子同士で塗れ」


「樹君は女の子がイチャイチャしてるのを見るのが好きなんだね、この変態が」


「分かったよ!!塗るよ!!」


何故日焼け止めを塗るのを拒否しただけで3人から集中砲火を喰らわないといけないのだろうか?


「よろしく〜」


最初に冬樹が砂の上に寝転がった。


俺は手に日焼け止めを出して冬樹の背中にくっつけた。


「ひゃんっ!」


俺が手をつけた瞬間に冬樹が声を上げた。


さっきまで日差しに当てられて暑かったところに、急に冷たい日焼け止めをつけたからだろう。


「なんかアレだな……


「エッチなマッサージしてるみたいっすねー」


「野次を飛ばすな」


言おうと思ったが、俺が言うとキモいと思ったので言わなかった事を優葉がさらりと言ってのけた。


「背中ペタペタしてないで早く塗っちゃいなさいよ」


「今塗ってるじゃん」


「いつまで背中の感触を堪能してないでさぁーーー」


俺は横から飛んでくる誇大妄想を含んだ野次を耳にしながら冬樹の背中を撫で回した。

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