第41話 水着選び 後編

「ミーのも……選んでよ」


「………はい?」


耳を疑う発言が聞こえた。


「今なんて?」


「何度も言わせないでよ、わ た し の も選んでって言ったの」


うん、聞き間違えでもなんでも無かったらしい。


まさか矢吹からそんな言葉を聞く日が来るとは思わなかった。


流れ的に俺が矢吹の水着を選ぶのも変ではないが、それをガン無視で我を通すのが矢吹だと思っていたのだが………


どうやら俺の思い違いだったらしい。


「何ボサっとしてるの」


「あ、ああ、すまん」


矢吹は俺に選んで貰う気満々だ。


「じゃあ選んで」


「う〜ん………………」


さて、どうしようか。


残念なことに俺は矢吹の胸の大きさを知らない。


優葉は毎日マッサージしていて、冬樹は公衆トイレで思いっきり揉んだので大体のサイズが分かるのだが、矢吹は別だ。


下着を見る機会は1度だけあったものの、掌底を食らって意識を失っているので覚えていない。


それに普段の生活でも、矢吹の胸に視線が行ってしまったりすると


「何みてるのよ、変態男が」


とキレられるので、見ることも殆どない。


なので俺は矢吹の胸を見る機会もなければ、触る機会も無いし、サイズを聞く機会もない。


それに俺は矢吹がダボダボの服を着ているのしか見たことがなく、矢吹がどんなスタイルなのかも分からない。


つまりどんな水着を選べば良いのかという、判断材料がないのだ。


「何固まってるの?」


「いや………」


これが冬樹とは優葉なら適当に露出度が高すぎず低すぎずの水着選べば済む話のだが、矢吹となるとそうも行かない。


ふざけて露出度の高いやつを選んだら「へ〜こういうのが趣味なんだね……」と軽蔑の籠った目を向けられるのは間違いなしだ。


あいにく俺はそういうのに快感を覚える人間では無いので向けれらると悲しくなる。


「はい、これが良いと思うよ」


「ワンピースタイプのね」


変なのを選んで嫌われたく無いので俺はワンピースタイプの水着をチョイスしてみた。


「じゃあ着てくるわね」


矢吹が冬樹たちが入っているところにある、試着室に入って行った。


「やらかさなくて良かったぁぁ」


海行ったら足に青あざとか悲し過ぎるからね。


「樹く〜ん!」


「お、冬樹着替え終わったの?」


試着室のどこからか冬樹の声が聞こえた。


「出るね〜」


冬樹が試着室のカーテンをシャッと勢いよく開けた。


「どうかしら?」


「似合ってる、すごい似合ってると思うよ、うん、色々すごいと思う」


そう、凄く似合っているのだ。


だが、なんでだろう?俺はあまり色気が出なそうな水着を選んだのに返って凄く色気が出てしまっている。


それもそのはず冬樹の乳首が若干透けている、というか浮き出ているのだ。


普通に、大きすぎだろ。


通り過ぎる男たちの目が冬樹の胸に釘付けだ。


「似合ってるなら良かったわ!」


「でも冬樹はやっぱりビキニの方が似合うと思うから取ってくる」


「分かったわ」


このままだとビキニより淫乱な冬樹の水着姿を海で拝むことになるため、俺は冬樹にビキニを着て貰うことにした。


「樹くん、着替え終わったっすよ」


俺が冬樹のビキニを持って来てちょっとした後、優葉が声をかけて来た。


「どうっすか!」


「なんか、ロリ?」


そんな感想しか出てこなかった。


胸が小さいのと小柄、童顔が原因で完全にちょっと背の大きい小学生だった。


これはこれで性癖に刺さる人居そうだな……


「あ゛?」


「あ、いやいや!小柄で可愛いって意味だよ!?」


ヤンキーさながらのガラの悪い声で優葉が返答して来たので、俺は焦って補足を入れておいた。


「そういう意味なら良かったっす、じゃあ私これにするっす!」


さっきまでの半ギレの顔から一転、笑顔になった優葉がカーテンの奥へと引っ込んで行った。


切り替えの早さが凄いな……


「あとは矢吹か」


「あ、ミーもう出る」


俺が呟くのと同時に矢吹の声が聞こえた。


どんな体型なのだろうか………


「どう?」


「もしかしたら3人の中で1番エロいかもしれない」


「は?」


「いや、なんでもない」


普通にキレられたが、矢吹の水着はめっちゃエロかった。


いつも薄手でダボダボの服を着ているから分からなかったが、ムチムチしている。


冬樹はすらっとしていて胸だけ規格外って感じなのだが、矢吹は全身がムチムチしてる。


あと、冬樹ほどじゃ無いが胸も普通に大きい。


水着の紐が食い込んでるのと、ムチムチしてるからまるでグラビアアイドルのようだ。


「で、どう?私の水着」


「普通とど変態淫乱を足して2で割ったみたいな」


「どういう感想よ」


グラビアアイドルみたいと言おうかとも迷ったが言ったら蹴られそうななので、エロいという事を遠回しに言う事にした。


直で言ったまたキレられるからね。


「要するに似合ってるってこと」


「なら良かった、じゃあこれにするわね」


「分かった」


矢吹がカーテンを閉めた。


上手く矢吹の怒りに触れずに乗り切れたみたいだ。


「…………3人に囲まれて……俺、理性崩壊しないかな………」


俺は更衣室の前でそう呟いた。



後書き


みなさん良いお年を!

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