第40話 水着選び 前編

「ひえ〜今日は朝から暑いっすね〜」


「猛暑日になるってテレビが言ってたもんな」


俺たちは朝7時から駅までの道を歩いていた。


朝なのでそこまで暑くはならないかと思っていたのだが、朝から普通に30℃くらいありそうだ。


最高気温が37℃らしいのでプールにはうってつけだが日焼け止めを塗り忘れたら、次の日全身が真っ赤になるだろう。


「高校生になって学校以外でこんな朝早く出たの初めてよね〜」


「そうっすよね、友達と遊ぶわけ予定があるわけでもないっすもんね」


「めっちゃ眠いんだけど」


矢吹が虚な目でそう言った。


何故かは知らないが、最近矢吹が寝不足気味な気がする。


前まで無かったはずの目の下の隈が、今日もうっすらと出来てしまっているのだ。


「矢吹体調大丈夫?」


「え、ああ、大丈夫」


体調不良で海に行って溺れてられてしまうとまずいので、一応聞いてみたのだが大丈夫らしい。


矢吹は自分が弱っていたりするのを隠したりする節があり不安なので海では注視するようにしよう。


「水着どんなのにしようかしら〜、樹君はどんなのが良いと思う?」


「変に露出するやつじゃなければなんでも良いと思うけど」


正直、ラッシュガードを着ても胸がデカすぎるので男から不埒な視線を向けられるのは間違いないだろう。


それがビキニなどきたらどうなるのだろうか?


「樹君も頑張ってね〜」


「なにが?」


「男の子って海行くと性欲との戦いが始めるじゃ無いの?」


「始めるけど、俺は大丈夫だ」


俺は海で股間が起立しないことには自信がある。


理由は簡単さ、俺が毎日優葉の胸を揉んでいるからだよ!


水着で隠されたどころか生乳を揉んでいる&見ているのだから俺の理性は相当強靭になっているだろう。


俺が優葉に命じられてやっていたが、ここで役に立つとは思ってもいなかった。


「あと優葉ちゃんの胸がどれくらい大きくなっているのかも楽しみね〜」


「まだ始めて1ヶ月も経ってないから目に見えて大きくはなって無いと思うけど」


「少しは大きくなってると思うっすよ!」


俺もよく分からない。


揉んだ直後は若干大きくなっている気がするのだが、次の日になると萎んでいるのだ。


風船式なのだろうか?


「俺もあそこまでやって効果0は悲しいんだが」


「大丈夫っす、大きくなってるっすよ!」


「大きくなってるのかな……」


「少し大きくなったら私のおっぱいで樹君をメロメロにさせるっす!」


よく分からないところで意気込んでいる優葉だった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「結構色んな種類ありそうね」


「そうだな、じゃあ俺は自分のえらー」


「待って」


流れにのって、水着を選びに行こうとしたところ冬樹にガシッと肩を掴まれ止められた。


「樹君は私たちの選んでくれるわよね?」


「え〜」


何故、女経験0の童貞が女子の水着を選ばなければならないのだろうか?


まず高校生になって海に行ったことがないので、普通どんな水着を着るのか分からない。


間違えた選択をすれば、矢吹の暴力と他のお客さんからの冷たい視線の刑に処されるだろう。


「あ〜樹君童貞だし、女の子の水着とか知らないか」


「は?」


冬樹が露骨に俺を煽ってきた。


しかも自分で意識していて、触れられたくない部分を。


なので俺の心に深々と刺さった。


「分かったよ、選ぶよ」


そして俺は見事に冬樹の挑発に乗ってしまった。


そして俺は人生で1度も立ち入ることの無かっただろう、女性用の水着売り場に足を踏み入れた。


「こんなんどうだ?」


俺は黒いスクール水着を手に取った。


授業でしか女子の水着をないからかもしれないが、俺は女子がスクール水着を着ているという印象しかない。


「溢れ出る童貞感」


「童貞で悪かったな」


暗にこれはダメでしょと告げられた。


流石に海でスクール水着はアレだったか………


「この白い上下繋がってるやつは?」


ラッシュガードとまではいかないが、少し露出控えめのやつを選んでみた。


「これ良いわね!試着してくるわ!」


どうやら、冬樹のお気に召したらしい。


俺の手から水着を奪い去って、試着に入ってしまった。


でもこれで俺は解放だ。


「さて、俺も自分の水着をえらーー」


「待って欲しいっす」


今度は優葉に肩を掴まれ止められた。


「私のも、選んでくれるっすよね?」


「はい、選びます」


優葉が無言の圧をかけてきたので俺はそう即答した。


「どれなら大丈夫だろうか?」


のだが、俺はずっと悩んでいた。


なんでかって?優葉の胸のサイズに合う水着があんまりないからだ。


真ん中で交差して吊り上げるタイプのやつと普通のビキニが大多数を占めているのだが、悲しい事に全部ある程度胸がないと着けるのが難しいやつ。


優葉の胸だと泳いでいたらポロッということがあり得そうなのでビキニにするか、冬樹みたいなタイプのやつにするかの2択でずっと悩んでいたのだ。


「私の胸も少しは大きくなっている事を考慮して欲しいっすよ」


ビキニと上半身の大部分が隠れるけどセクシーさを損なわないやつを交互に見ているから、俺が何を考えているか分かったのだろう。


「よしじゃあ、こっちにしよう」


まだ試着段階なので俺は、ビキニの方を手に取った。


「じゃあ試着してくるっすね!!」


優葉が嬉しそうに冬樹の隣の試着室に駆け込んで行った。


ようやくこれで終わりそうだ。


矢吹は下着見られて掌底を入れてくるくらい、なので俺に頼んでくることはないだろう。


「じゃあ矢吹、2人が出てきた呼んでくれ。俺も自分の選んでくるから」


「…………」


なにも言ってこないので、矢吹も自分の水着を選びに行くのだろう。


「待っ………て」


「ん?」


「ミーのも……選んでよ」


振り向くと、矢吹が顔を真っ赤にしながらそう言った。

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