第38話 打ち上げ5 所持金を考慮してくれよ?

「あれだな、俺たちはダーツ行かない方がいい良いな」


俺たちはラウンドワンから出てすぐの歩道でそんな事を言いながら歩いていた。


「そうっすね、私たちセンスが無さすぎて危険っすね」


矢吹が後ろに、冬樹が上に大暴投をしたあと俺たちもダーツに挑戦した。


だが俺も優葉も、矢吹と冬樹同様あまりダーツが得意ではなかったのだろう。


俺は床に突き刺し、優葉が他のコースの的に飛ばすという大暴投をした。


どうやったらあんな向きに飛んでいくんだよ!?とか言っていたが俺も大概だった。


俺は確実に正面に投げたはずなんだ、なのに刺さってるのは床。


もし今後、ラウンドワンに来ることがあったらダーツはやめた方が良いだろう。


周りの人に危害を加えそうだ。


「で、当てもなく歩いてるけどどこ行く予定なの?」


俺たちはがダーツについて話していると、矢吹がそう聞いてきた。


矢吹の言う通り俺たちは当てもなく歩いている。


ただ、見たことのない光景が広がり続けているので家から遠ざかっているのは確かだろう。


「行ったことのない飲食店行きたい」


「そういうことね」


俺は夕飯どこで食べようかと歩きながら考えている時に思ったのだ。


冬樹と出会ってから外食焼肉しか行ってなくない?と。


せっかく遠出したならどこか行ったことのない所に行ってみたい。


4人とも普段外出をほとんどしないゲームオタクなのでお金は結構貯まっているから、高級料理店などに行かない限りはお金が尽きることはないだろう。


「あ、なんか良さげなお店あるけどどうする?」


交差点を曲がると、うっすらと優しい光を灯した看板が顔を見せた。


看板に書かれている店の名前的に、お寿司屋さんだろう。


「お寿司、食べたいわ」


冬樹が目を光らせている。


運動したので、極限状態までお腹が減っているのだろう。


「2人も寿司でも大丈夫?」


「「いいよ(っすよ)」」


「じゃあ俺入って席空いてるか見てみるわ」


3人ともお寿司でいいとのことなので俺は、店の中に入り席が空いているか確認しようとした。


車が結構止まっているので少し待たないと行けない気がするが、10分くらいなら全然待てる。


冬樹が待てるかは知らないが。


「あ、これ無理だな」


俺は入り口に立っている、看板メニューを見て察した。


多分、回らないやつだろう。


青森産天然本鮪がなんとかかんとかと書いてある。


値段も1皿ではなくコースだ。


青森産本鮪盛り合わせ5000円とか、到底学生が打ち上げで食べるのものではない。


「どうでした〜?」


「高すぎる、俺たちじゃ払えん」


「え〜、じゃあ違うお寿司屋さん探してましょうか」


流石にお金の問題が出てくると、冬樹もすぐに身を引くらしい。


失礼な話だが、食べたと駄々をこねるのではないかと思っていた。


「ミーたち歩き回ってるけど、スマホで検索すれば良くない?」


「あ、確かに」


現代にはスマホという便利な電子機器があるのに、どうして俺たちは当てもなく道を彷徨っていたのだろうか。


早速俺はスマホを取り出して、「寿司屋、食べ放題」と検索する。


なんで食べ放題かって?


焼肉の時の冬樹の様子を考慮した結果さ。


「食べ放題はないな」


お寿司屋ならいっぱいあるのだが、残念なことに食べ放題のお寿司屋は無かった。


「じゃあ普通のお寿司屋さんがいいわ」


「それでも良いんだけどさ………」


君自分の食べる量の異常さ理解してないでしょ?


多分食べてる量、大食い選手と大差ないよ?


その食べた分の脂肪が全て胸に行ってるから太ってないんだろうけど。


「流石に焼肉の時みたいには食べないわよ?」


「なら大丈夫か」


自分が他の人と比べて食べる量が異常に多い事は自覚していたらしい。


自覚した上で、あの時みたいに食べないと行っているなら大丈夫だろう。


俺たちは近くにある、回る方の寿司屋に足を向けた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ふ〜っ、ようやく座れたっす」


寿司屋に着いて席に座った途端、優葉がそう言った。


言われてみれば、学校の終業式以降ほとんど座っていないかもしれない。


「仕切りが柵になってるからめっちゃ他の人と目が合うな」


ここ寿司屋の席は大体4人テーブルになっていて仕切りが柵なのだが、視線がすごい。


でも俺みたいなザ-モブという雰囲気を漂わせた男が、アイドルレベルの美少女3人を引き連れて行ったのだから見られても仕方ないだろう。


「そうね、でも別に見られるのは普段の事だし別に……」


「圧倒的強者感すごいな」


矢吹は学校で頻繁に男に絡まれている(それが原因で男嫌いになった)と言っていたし、見られるのは慣れているのだろう。


俺も冬樹との1件で全校生徒の注目の的になりかけていたので多少は慣れてきている。


だが、それが見知らぬおじさんや小さい子供となると話は別だ。


横の席の小学生くらいの女の子が冬樹たち3人のことを憧れのような目で見ているのは凄い可愛いが、見覚えもないおじさんに嫉妬の視線を向けられるとか恐怖でしかない。


「ん〜!美味しい!」


急に冬樹がそう言った。


横を見るとそこには3皿のマグロのお寿司がある。


その奥、回っているお寿司のマグロの札が立っているレーンが空になっているので冬樹が全部掻っ攫ったのだろう。


「大丈夫なんだよな?」


「大丈夫!なはず!」


食べるペースが不安しかない。


俺たちは4人まとめて財政を管理しているため、冬樹が食べすぎた場合俺たちの財布にも被害が及ぶのだ。


「まぁ、お金のことなんて気にせずに食べましょうよ!」


「冬樹が食べ過ぎなきゃ問題ないから頼むよ」


「じゃあ私注文するからタブレット貸して欲しいっす!」


「俺も頼みたい」


「ミーも頼みたいんだけど」


注文用タブレットの奪い合いが始まった。


「レーンから取ればいいのにね〜」


その一方で冬樹は、レーンから皿を取りまくり寿司を口に運ぶのだった。

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