第36話 打ち上げ3 冬樹の胸
「なんで樹がここにいるの?」
俺はテニスラケットを貸し出すところの近くで五月と話していた。
「それはこっちのセリフなんだが?」
何故五月がここにいるのか?
居ると困る、邪魔だ、とかそういうわけではないが、優葉とかと一緒に来ているとバレれば揶揄われること間違いなしだ。
「学校で行ってたクラスの打ち上げだよ」
「マジで?」
「マジマジ」
確かに五月は学校で俺を打ち上げに誘ってきている。
そして俺を誘ったあと、他のクラスメイトに打ち上げ行かないか?と言わんばかりに話しかけまくっていた記憶がある。
つまりだ、クラスの奴らも居るということだ。
テニスコートには五月ともう1人しか居なかったので他のクラスメイトは、他のところで遊んでいるのだろう。
「樹は誰と来てるの?」
「矢吹、優葉、冬樹の3人と」
そろそろ戻ってこない俺の様子を見に冬樹たちが来るので、揶揄われるのは不可避だから俺は隠さずに答えた。
「樹く〜ん、大丈夫っすか〜?」
そんなことを考えた刹那、優葉が俺の様子を見に来た。
「ああ、ちょっとクラスの奴と話してただけ〜。今借りて戻るよ〜」
ずっとここで五月と立ち話を続けるのもアレだし、これ以上優葉たちを待たせるのも申し訳ないので俺はそう答えた。
「じゃ、俺はラケット借りて戻るわ」
「樹……お前は俺が思っていた以上に大物になっていたようだな……」
「おお、よく分からないけどまたな」
俺は五月に手を振りながらその場から離れてラケットを借り、優葉たちの元へと戻った。
「あの人誰っすか?」
戻って早々、優葉がさっき話していた五月のことを聞いてきた。
「中学からの付き合いの親友だよ」
「そうなんっすね〜、じゃあテニスやりますか!」
優葉が俺の手からラケットを奪い取って、ブンブン振り始めた。
ラケットはヒュンヒュンと音を鳴らしている。
「で、どうする?チーム分け。それとも別コートで個人戦にする?」
「どうしましょうかね………」
優葉と矢吹が県上位の実力を持ってテニス選手の事を考えると、優葉と矢吹、俺と冬樹で個人戦の方が良い気もするが、チーム戦もやってみたい。
どうしようか………
「じゃあ私と樹君、雫ちゃんと冬樹ちゃんでチーム組んでダブルスやりたいっす!」
「そうするか、実力的にも同じくらいになりそうだし」
多分俺と冬樹は、テニスの腕前は大して変わらないのでこれがベストな組み合わせだ。
そして、俺と優葉、矢吹と冬樹で分かれて空いているテニスコートへと入った。
「樹君!夫婦の絆見せつけてやるっすよ!お〜!」
「お〜〜!」
優葉が反応に困ることをいって、ラケットを上に上げた。
それに合わせるようにして俺もラケットを上に上げた。
「イチャイチャは家だけにしてね」
矢吹が茶々を入れてきた。
「イチャついてない!!」
「はいはい、最初はラリーしよう」
矢吹から聞いてきたくせに雑に流された………
俺が少し悲しくなっているのを余所に、矢吹がボールを上に上げてラケットを横に振った。
「樹君打って〜」
優葉が気の抜けた声でそう言った。
俺の方に緩やかな放物線を描いてテニスボールが飛んでくる。
「ふんっ!」
俺はボールの軌道をよく見てラケットを振った。
「パコ〜ン」
ボールが小気味の良い音を立ててラケットから跳ね返った。
「えい!」
俺のボールは冬樹の方向へと飛んでいき、冬樹がラケットを振った。
「惜しいね〜」
しかし、冬樹の振ったラケットはボールの少し横を通り過ぎて行き、テニスボールがコートにコロコロと転がった。
「もう少しラリーやってからダブルスやろうか」
「だな」
また矢吹がボールを上に上げて、ラケットを振りかぶった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「じゃあそろそろ試合やるっすか?」
10分ほどラリーを楽しんだあと、試合をすることにした。
「ミーたちは少し手加減するね。本気でやると怪我させちゃうかもしれないから」
「よろしく頼むぞ」
そして矢吹がさっきのラリーのスタートとは明らかに違う構え方をした。
冬樹も少し腰を落として、準備を整えた。
「最初は優葉ちゃん、ねっ!」
矢吹がどう考えても手加減なしのスピードで、優葉にサーブを打った。
「流石にそれは返せるっすよ」
優葉もそれを軽々と返した。
そしてそのボールは冬樹の方向へと飛んでいく。
「えいっ!」
さっきと同じ声を出して、冬樹が力一杯ラケットを振った。
今回は空ぶらずに、ラケットに命中して俺の方にボールが飛んでくる。
しかし、そのボールを俺は見事にスカした。
なんでスカしたかって?
それが冬樹の胸が原因だ。
俺は空振らないようにボールを目で追っていたのだが、優葉の打ったボールは冬樹の胸に近いところへ飛んで行った。
それが原因で、俺の目に冬樹のまるでプリンの様にブルンブルンと揺れる胸が目に入ってしまったのだ。
男というのは悲しい生き物で、さっきまでボールを追っていた俺の目は冬樹の揺れる2つのバレーボールにシフトした。
「あ、樹君何やってるんっすか!」
「あ、ああ、ごめんミスった」
冬樹の胸を見てしまったことを悟られないように、俺は優葉に平然を装って答えた。
優葉は冬樹の胸に嫉妬している部分があるのでバレたら、あの死んだ魚の目を俺に向けいぇくるに違いない。
「はぁはぁ、流石に私も疲れてきたっす」
矢吹がもう1度サーブと打った後、しばらくラリーが続いていた。
流石の優葉も少し疲れてきたようで、息が乱れている。
「はぁはぁ、俺も結構疲れてきた」
俺も優葉と同様、体力が底を尽きようとしている。
(あれ?冬樹のブラジャー透けてね?)
そのタイミングで俺は、その事実に気がついてしまった。
おそらく汗で服が張り付いてしまったのだろう。
水色のブラジャーがシャツに浮かび上がっている。
「はぁっ、はぁ、は、はぁ」
息が乱れた。
俺は普通の下着姿よりも、偶々浮き出してしまった下着姿の方がエロいと感じるタチなので別な原因で心臓が早鐘を打った。
結果、息が乱れてしまったのだ。
「樹君!?大丈夫っすか!?」
俺が死にそうなっているのに優葉が気付き心配してきた。
「だい、じょう、ぶ?」
「なんで疑問形なんっすか!?」
俺が死にかけてるのを余所に冬樹の胸は相わらずブルンブルンと揺れている。
意識してしまったのが運の尽き、性欲と疲労が、俺の身体をだんだんと蝕んできたのだった。
後書き
風呂で爆睡してしまって、書くのが遅くなってしまった。
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