第34話 打ち上げ1 負けられないボーリング
「打ち上げって言ったけど、どこ行くの?」
言われてみれば、どこに行こうか?
というか、俺は中学の頃打ち上げなどやったことがないので何をするのか分からない。
だから行き先はいかにも陽キャそうな3人に任せる。
「ボーリングとかっすか?」
「お寿司とか?」
「ラ◯ホ?」
また3人バラバラの意見が出た。
しかもさっきと同様、やばい事を言っているのが1人いる。
「ならもう色々遊べる、ラウンドワンにでも行くっすか!」
「それ良いわね」
反対意見も出なかったので、そのまま行き先がラウンドワンに決定した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「意外と近くにあるんだな、ラウンドワンって」
「そうっすね、私も意外でした」
着替えずに制服のまま、最寄りのラウンドワンをスマホで検索して移動してきた。
案外近くにあって、徒歩30分足らずで行けた。
これくらいの距離なら今後も時々遊びに行けるだろう。
「なんかワクワクするわね」
制服で出掛ける事などこれが初めてなので、どことなくワクワクする。
そして目の前には、デカい建物が佇んでいる。
中から賑やかな声が聞こえてくるので、みんな打ち上げとかでここに来ているんだろう。
一瞬、関係がバレる……と思ったがもう手遅れなのを思い出したので、俺は頭からその事を追い出した。
「な、ワクワクする」
「そうっすよね!みんなで出掛けるなんて久しぶりっすし!!」
優葉が目を輝かせている。
子犬のみたいとはこの事を言うのだろう。
「久々ね」
矢吹も優葉程ではないが、目が輝いている。
普段死んだ目をしていることが多い矢吹がここまで目を輝かせているということは相当楽しみなのだろう。
「じゃあ遊びましょうか!!」
冬樹が音頭を取って俺たちはら人生初ラウンドワンに足を踏み入れた。
「色々ありすぎて迷うわね〜」
ラウンドワンに入って、入り口のすぐ近くにある館内地図を見て冬樹がそう呟いた。
ボーリング、ダーツ、テニス、調べたときに多少内容は知っていたがそれ以上に種類がある。
冬樹が迷うのも納得だ。
「最初は無難にボーリング行って腕慣らしでもしない?」
俺たちがボードの前で、頭を悩ませていると矢吹がそう提案した。
こういう時にすぐに結論を出せるのが矢吹の凄いところだ。
絶対俺なら地図の前で20分くらい悩んでるね。
「いいね、じゃあボーリング行くか」
「「行こ〜!」」
いつまでもここで悩んでいては時間がもったいない。
俺たちは少し早歩きで、ボーリング場へと足を進めた。
地図通りに建物を進み、ボーリング場と思われる場所についた。
受付に投げる順番の書いた紙を届け、ボーリング専用靴をカウンターに借りに行き、そばにある自動販売機で瓶コーラを買ってきて準備は完了だ。
「ボーリングやるのなんて本当に半年ぶりくらいっすよ」
「私なんて1回しかやったことないわよ?」
2人が話しながらボールを持ってきたのだが………
「優葉、それ投げられる?」
優葉が持ってきたのは、薄黄色の15ポンドボール。
男女差別をするわけではないが、男子高校生の俺でも重いし投げられたものではない重さのボールだ。
「重い方がピン倒しやすいっすから!」
「それはそうなんだけどさ………」
重い方がピン倒しやすいのは確かだ。
だが、それ以前にボールを投げられなければどうしようもない。
「怪我しないように気をつけてな?」
さっきの話を聞く限り、別にボーリングをするのが初めてというわけではない様なので、変なところで怪我をすることはないだろう。
とはいえ、ボールを落として足を怪我する可能性は大いにあるので気を付けてもらう必要があるが。
「これくらいがちょうどいい」
矢吹もボールを持って帰ってきたのだが……
「そっちは軽すぎん?」
矢吹が持ってきたのは6ポンドボール。
あの威力のパンチを出せるほどの筋肉があるはずなのになんでこんなに軽いのを持ってくるのだろうか?
「大丈夫、スピード出ればどうにかなる」
矢吹はスピードでゴリ押し戦法にするらしい。
「最初ミーね」
順番は矢吹→冬樹→優葉→俺、という順番になっている。
なので矢吹がさっき取ってきた6ポンドボールを手に取ってレーンに向かった。
「まずは腕慣らし、ねっ!」
矢吹がボールを勢いよく前に投げた。
ボールのスピードは凄い早いが結構力んで投げている感じがあったので、ガーターに行きそうだ。
「バコン!!」
ピンが凄まじ音を立てて、弾けた。
ストライクだ。
「やったぁ!」
「矢吹、さてはボーリング出来るな?」
力んで投げている感じがあったのに真っ直ぐにボールが進んでいき、見事ストライクを出している。
俺もボーリングは素人なのではっきりと分かるわけではないが、腕の振り抜く速度が一般人じゃない。
「じゃあ次、私ね」
矢吹がストライクそ取ってしまったので、すぐに冬樹に順番が回ってきた。
「ふんっ」
冬樹の投げたボールはレーンの端まで行ったあと、曲がってそのままど真ん中のピンに激突した。
「やった!ストライク!」
そして見事に冬樹もストライクをとった。
「2人ともすごいな………」
「次は私っすよ!」
優葉が15ポンドのボールを持って危ない足取りでレーンに向かった。
「大丈夫かな?」
投げる前からレーンの途中で止まってしまう気がしてならない。
そして優葉が片手で15ポンドボールを持った。
手がプルプルしている。
(落とさないだろうか……?)
「えいっ!」
そう思った直後、可愛い声と共に優葉がボールを投げた。
やっぱりあまりスピードは出ていない。
のだが、コントロールが良い。
コロコロと真ん中に転がっていく。
「これストライク取れるんじゃないかしら?」
そう矢吹が呟いた直後、「カラン、カラン」とピンが音を立てて転がった。
「カラン、カラン…………」
ゆっくりだがボールがピンを倒していく。
「私もストライクっす!!」
そしてついに全てのピンを倒し切った。
「じゃあ次は樹君の番ね!」
3人連続でストライクを取っているので、どこかプレッシャーがかかる。
この流れに乗って4人連続でストライクを取りたいのと、女子3人がストライクを取って俺1人だけがストライク取らないのはヤバい、という2つの気持ちが出てきた。
そして雑念を持ったまま、俺はよく狙ってボールを投げた。
「あ、やらかした」
が、俺は思いっきり力んだのと、狙いと少しズレた方向にボールが飛んでいってしまった。
「カタンッ」
そしてボールはガーターへ。
「「「「……………」」」」
「まあ、最初っすから!」
俺が少し落ち込んでいるのを察して、優葉がフォローしてくれる。
ここから俺の負けられない勝負が始まった。
後書き
作者の家の近くにはラウンドワンがなくて1度も行ったことがないので、樹君たちに行ってもらいました。シクシク行ってみたい。
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