第32話 胸の育て方

「やっと書き終わったぁ〜!」


俺たちは帰ってすぐ、反省文に取り掛かり4人で知恵を合わせて2時間ほどで書き終えた。


なのでもう時間は8時過ぎだ。


人生で1番辛い2時間だったかもしれない。


俺は空を見て、頭を休めていた。


「あ、そういえば樹君」


俺が空を見て、ボーッとしていると優葉がふと思い出したかのように話しかけてきた。


「なに?」


「胸を育てることについてっすけど………」


冬樹と公衆トイレでやらかした事を許して貰う代わりに、そんな約束をしたのを俺は思い出した。


しかし生憎、さっきまで完全に忘れていたので胸を大きくするのにどんなサプリメントや食べ物がいいか調べていない。


それに買ってもいない。


「あーごめん、まだ何も買ってない。明日には買ってくる」


今日はもう遅いので調べて買いに行くのは無理だろう。


俺も疲れたので出来れば動きたくない。


「買いにいくものなんてないっすよ?」


何も買わなくていいのか………


じゃあどうやって大きくするのだろうか?


「ん?サプリメントとか食べ物を買ってこいって話しじゃないの?」


「胸って揉まれると大きくなるらしいので揉んでもらうんっすよ!」


「揉む!?」


胸を揉めば大きくなる、という話しは少し聞いた事がある。


だがそれを実践したことある人などいるのだろうか?


あくまでも迷信だろう。


そう信じたい。


「こうやれば、良いらしいっすよ」


優葉がスマホ画面を見せてきた。


そこには胸を大きくする揉み方などと記載されている。


「これも元々ある程度ないとでき………痛った!?」


「ノーデリカシーやめろ」


矢吹の脛蹴りが飛んできた。


毎度毎度、適当に蹴ってるとは思えない程正確に脛の1番痛い部分に飛んでくるんだけど。


「ちょっと見せて」


俺は優葉からスマホを受け取り画面をよーく見た。


何々、ただ揉むだけでは大きくならない。


リンパ管をほぐす?


実際に大きくする揉み方があるようだ。


「これ俺が本当にやるよう?男の俺が?」


「最後までよく読んでくださいっす」


俺は途中の説明を一旦飛ばして、最後の方へスクロールした。


するとそこには「好きな人に揉まれないと大きくならない」と書かれている。


流石に俺も優葉に好意を向けられているのは分かっている。


つまり、適任は俺しか居ないわけだ。


「はい、俺しかやる人いないですね」


「ということなので寝室へ行くっすよ!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「じゃあ脱ぐのであっち向いててくださいっす」


「結局見るんだから一緒じゃね?」


「一緒じゃないっす!良いからあっち向いててください」


「はいはい」


俺は優葉が指差してる方へと目を向けて瞑想した。


約束した以上、男に二言はないので大人しく着いてきたが同年代の彼女でもない女子の生乳を触る男子高校生。


しかも先週の出来事を合わせると2人目。


俺は変態の部類に片足を踏み入れているのかもしれない。


「こっち向いて良いっすよ」


後ろから優葉の声が聞こえたので俺は振り返って固まった。


その理由は、優葉が胸に何もつけていなかったからだ。


あのサイトの説明を見る限り、別にブラジャーを外さなくてもできるマッサージだったはずだ。


見るのが2度目だとはいえど、恥ずかしいものは恥ずかしい。


「なんで何もつけてないの?」


「普段から何もつけてないからっす」


「なんでふだ………」


なんで普段から何もつけてないんだよと聞こうとしたところで俺は言葉を止めた。


優葉の胸は、筋トレをガチガチにやっている柔道部の胸筋くらいなのでブラジャーのサイズがないのとつけなくてなんら問題がないだろう。


「ある程度大きくなったら、樹君揉んでくれる時に下着を着けられるようになるっすよ」


つまりは、この男にとって天国であり地獄でもある時間を終わらすためには俺の頑張りが関

わってくるというわけか………


「この久城樹、全力で優葉殿の胸を揉ませて頂きます!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そしてスマホ画面と優葉の胸を交互に見ながら、優葉の胸の横あたりを揉み続けて5分。


俺は色々限界が来ていた。


おい、あんな大口叩いておいてもう限界か?と自分を鼓舞したのだが、揉むたびに優葉が「あっ、あっ」と聞いたこともない声で喘ぐのだ。


俺は心の中で「これはマッサージ、これはマッサージ」と念を唱えて、不埒な考えを消し去るようにした。


だが優葉が喘ぐせいで俺の頭の中では「これはエロマッサージ、これはエロマッサージ」という念仏に変換されていった。


「樹君っ、はげしっ、っすよ」


優葉が俺の顔を見ながら言ってくる。


これは明らかにわざとだと分かったので普段ならどうも思わないはずだが、状況が状況なので俺の理性は削られていった。


20分後………


「あんたら〜、夕飯どうする〜」


矢吹の声が聞こえたと同時に、ドアがガチャリと音を立てて開いた。


俺の理性は20分の間に限界へと達していた。


なので普段だったら暴君の矢吹が、今の俺の目には救世主に見えた。


「…………チッ、これだから変態は」


「いくらなんでも反応酷過ぎない!?」


なんでか分からないが、矢吹はキレているようだ。


「変なことして退学になる前に早く戻って来て」


「「はい」」


矢吹が若干キレているのが伝わったのだろう、優葉も服を着始めた。


その返事に満足したのか、矢吹は「ふんっ」と鼻を鳴らして部屋から出ていった。


「なんで雫ちゃん怒ってるんっすかね………?」


「分からん、でもこれ以上ここにいるのは危険な気がする」


身の危険を感じたので俺と優葉は急いでリビングへと戻った。

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