第31話 呼び出しと盗聴、からの暴露となすりつけ
「学校に行くのが憂鬱だ」
夜遊びをした日から2日が経った。
今日は鬼頭先生からお呼び出しをくらっている日だ。
優葉も矢吹も目で「頑張れ」と言って学校に言ってしまった。
なのに身も心も学校へ行くのを拒否していて、足が動かない。
「そうね………」
冬樹も俺と同様、鬼頭先生に呼び出しをくらっているので学校に行きたくなさそうだ。
多分、一緒に生徒指導室で怒られることになるだろう。
「時間もそろそろ危ないし………どうしましょう…」
電車の時間も刻々と近づいて来ている。
「覚悟決めて行くしかない…か……」
重い足を動かして俺と冬樹は学校に向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「「失礼します」」
俺は昼休みの時間、冬樹と一緒に生徒指導室を訪れていた。
生徒指導室に近い教室の先輩がこぞって俺たちを見てくる。
滅多に生徒指導室に入る人は居ないので、気になるのだろう。
それが冬樹となれば尚更だ。
「おお、来たか」
生徒指導室の中央に椅子が3つ置いてある。
その1つに鬼頭先生が座り、それに向き合うように2つの椅子があるような形だ。
他は何も置いていない。
「そこに座りなさい」
「「はい」」
俺たちは言われた通りに置かれた椅子に座った。
威圧感が半端じゃない。
いつもヘラヘラしている冬樹も縮み上がっている。
勿論のこと、俺も手足ブルブルだ。
「ガタッ」
「「っ!!」」
ただ鬼頭先生が窓を閉めに立ち上がっただけでびっくりしてしまうほどに、俺も冬樹も敏感になっている。
この状態で怒鳴られたらどうなるだろうか?
俺も冬樹も普通に泣く気がする。
「では、どうしてあの時、校則違反のあの時間に外出していたか答えてもらおうじゃないか」
「「他校生と花火をしに、公園に行きました」」
「その他校生は、10時以降に外出して大丈夫な学校なんだな?」
矢吹も優葉もそんな校則ないと言っていたので多分大丈夫だろう。
「「大丈夫です」」
「校則に違反しているとは思わなかったのかな?」
なんて答えるか……
正直に「破ってもバレないだろうと思いました」と言うのが良いのだろうが、それを言ったらブチギレられる未来しか見えない。
言いたくないな………
1回鬼頭先生を視界から外したかったので、俺は少し開いているドアの方を見た。
するとだ、そのドアの隙間から少し手が見えた。
続いて耳がニョキッと出てきて、一緒に違う人の顔も出てきた。
「…………」
ドアの隙間から顔を出している見知らぬ先輩と目が合った。
少し目が合い続けて、先に先輩が顔を引っ込め視線を切った。
しかし、耳は引っ込まないままだ。
鬼頭先生の後ろにあるドアなので、鬼頭先生が気づく様子もない。
これでは盗聴し放題だ。
「他校生2人に唆されました」
俺が黙っていると冬樹がそう言った。
矢吹と優葉に罪の一部をなすりつけやがった!!
と思ったが会話を思い出すと確かに、完全嘘というわけではない。
対策を講じれば大丈夫など言ったのは優葉と矢吹だ。
だけどさ、それを今、鬼頭先生に言ったら………
「その2人の学校と名前を教えてもらえるかな?」
ですよね!そうなりますよね!!
真夜中に生徒探しに躍起になってるくらい校則違反に厳しい先生なんだから、原因の1部分が他校生にあると分かればその生徒も一緒にお叱りを受けることになる。
それにだ、今先輩たちは盗聴しているのでこの話を聞かれると俺たちが遊んでいたのがバレてしまう!!
先輩が盗聴を止めるまで時間稼ぎを………
「道楽高校の矢吹雫さんと、開明高校の古賀優葉さんです」
間に合わなかった……
しかも冬樹がそう言った瞬間、廊下が一瞬で騒がしくなった。
2人とも名前の知れた美少女なのだからだから当然だろう。
「本当かな?久城くん」
「ほん……とうです」
違うと言ったら、2人の意見が噛み合わなくなって先生にいらぬ疑いを向けられるのは明白だ。
なので俺は、2人には申し訳ないが本当だと答えた。
「では、放課後話を聞こうか。今はもう戻っていいぞ」
意外と早く終わったな。
いや、また放課後に怒られるのも合わせたらそうでもないか。
「「失礼しました」」
「ああ、ちょっと待ってくれ、1つ生徒指導担当の先生として言っておきたい事がある」
生徒指導室を出ようとすると、鬼頭先生に呼び止められた。
俺たちはもうドアを開けていて、声が筒抜け状態だ。
お願いだから変な事を言わないでくれよ………
「なんでしょうか?」
「これを返しておくよ。学校の名誉は傷つけないようにしてくれ」
「…………はい」
そう言って手渡ししてきたのはあの時のコンドームだった。
学校の名誉を傷つけないでくれって、絶対に俺が冬樹を妊娠させることを言ってるだろ。
先生にも誤解されてしまっている………
冬樹が色仕掛けするために買っただけなのに………
「これ、冬樹に上げるよ……」
「うん………コトッ」
俺が冬樹にコンドームの箱を返却しようとすると、冬樹がとんでもないミスを犯した。
冬樹の手から箱が滑り落ちて、先輩たちの目の前に落っこったのだ。
なんでこういう重要な時に限って冬樹はやらかすのだろう?
「雪花さん、落とし…………」
箱を拾おうとした先輩が箱の表面を見て固まった。
悲しいことにその表面には0.02mmと書かれている。
もうおしまいだ。
「ご、ごめんなさいね〜………」
冬樹が箱を拾って何事もなかったかのように振る舞うが時すでに遅し。
そこは地獄のような空気となっていた。
先輩からすれば今までは軽くネタにして話していた内容が真実になってしまったようなものだ。
見てはいけないものを見てしまった……みたいな雰囲気が漂っている。
そして俺にも注目が集まった。
先輩の頭の中はこう考えているだろう。
今まで冗談半分で言っていた事が事実だった。
しかもそれに矢吹と優葉も関係している…………と。
俺と冬樹はこの空気に耐えられなくなり、先輩たちの間を縫って教室へ戻った。
そしてこのあと、矢吹と優葉の学校に電話が飛び2人も呼び出され4人まとめて説教と反省文を書くという罰則をくらったのだった。
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